そこに市場がある限り ―9回目のマチグヮー楽会―|新城和博のコラム|fun okinawa~ほーむぷらざ~

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COLUMN

新城和博

2017年3月3日更新

そこに市場がある限り ―9回目のマチグヮー楽会―|新城和博のコラム

ごく私的な歳時記Vol.26|首里に引っ越して20年。「ボーダーインク」編集者でライターの新城和博さんが、この20年も振り返りながら、季節の出来事や県産本の話題をつづります。

年に一度、というイベントが個人的な年中行事としていくつかあって、気が付けば季節ごとに参加している。梅雨明けのライブイベント「新良幸人プレゼンツ 一合瓶ライブ」、秋の「おきえい通り一箱古本市」、そして春の「マチグヮー楽会」と、いずれも言い出しっぺである。

最初は主催者としていろいろバタバタしていたが、いつのまにか、いち参加者として楽しむようになっている。一合瓶ライブなんか、今年で27回目だ。びっくりポンである。

春のイベントである「マチグヮー楽会」は今年で9回目だった。マチグヮー、つまり那覇の公設市場界隈(かいわい)を会場にして、市場で店を出している商売人、市場を学問的に研究している学者、まちづくりのNPOの若者たち、地元の市場利用&愛好者らが集まり、毎年市場のあれこれをテーマにして、研究発表、シンポジウム、ワークショップ、そして模合などを行うのだ。真面目に市場に関する諸問題を考えつつ、かつ市場の魅力を再発見してマニアックに楽しむ、ということで「学会」ならぬ、「楽会」と名付けた。

きっかけは『沖縄の市場〈マチグヮー〉文化誌』(小松かおり著)という本を刊行した時に、那覇市第一牧志公設市場の2階で行った報告発表会である。マチグヮーをフィールドワークした研究内容を地元に還元する試みだったけど、これがなかなか楽しく達成感があって、つい年に1回は市場で集まろうということになったのだ。2月に行うようになったのは、旧正月、つまり市場が忙しい時期を越えてからということである。

継続していくには、いろいろやっかいごとがたまってくる。楽しい裏には面倒くさいがつきものだ。それでも時代に寄り添い、または流されつつ、しかし断固として戦後の那覇、沖縄の歴史を背負ってきた存在であるマチグヮーのことを考えるのは、刺激的なのだ。面倒くさいことをすればするほど発見がある。自分の身近の場所の魅力、意義、そして変化を再発見していくことは、日常生活の上でも大切なことだと思う。



農連市場入り口/写真左上。アートな廃屋シャッター/写真右上。がらんとしてきた農連市場の中/写真左下。未来予想図/写真右下。


今年は「今なぜ公設市場が必要か」というテーマで2日間行った。その中で僕が提案した企画は、まちあるき(やっぱり!)。題して「農連市場、深夜から元気に営業中~今しか見えない風景を見よう~」。市場界隈を歩くというのは普通のことなのだけど、今、与儀の農連市場が建て替え中で、工事により市場周辺の建物がスクラップされて、妙に見通しのいい光景が広がっている。

市場の建て替えというのはなかなかの難事業である。東京の築地市場移転問題を見ていてもよく分かる。しかし実は、戦後発祥の牧志の公設市場も何度かの移転、建て替えを経験している。今、観光の名所でもある第一公設市場の建物は1972年、つまり沖縄の日本復帰の年にできた。そこも老朽化して、建て替え問題の議論の真っ最中だ。1959年ごろにできた農連市場も、1980年ごろには建て替え問題ですったもんだしてきた歴史がある。



井戸と出合うのはまち歩きの醍醐味/写真左。開南を示す道/写真左。


実は、深夜から元気に営業中/写真


変わりゆく風景を惜しみつつ、でもこの界隈だって戦前は湿地帯、畑があるだけの場所だったということに思いをはせれば(与儀の農連市場と近接している小、中学校の敷地は、戦前は農業試験場だった)、新しくできる市場の建物にノスタルジーを感じる子どもたちが21世紀後半には登場してくるだろう。そこに市場がある限り……。

そんなこんなで、3時間ほど歩いて語って農連市場界隈のまち歩き。やはり再発見の連続だった。いつもは一人でぶらぶら眺めている街角を、マチグヮー楽会の面々と歩く楽しさよ……。



広々とした空間。戦前は農業試験場だった/写真


なぜ那覇に市場が必要なのか。
答えは、歩いてみなくちゃ分からない。
マチグヮー楽会、いよいよ来年は節目の第10回。
面倒な楽しみが続くだろう。



<新城和博さんのコラム>
vol.34 かつてここにはロマンがあった
vol.33 夏の終わりのウッパマ
vol.32 ちょっとシュールでファニーな神さま
vol.31 セミシャワーと太陽の烽火
vol.30 甘く香る御嶽かいわい
vol.29 松の浦断崖と田園段丘の旅
vol.28 一日だけの本屋さん
vol.27 春の呑み歩き
vol.26 そこに市場がある限り
vol.25 すいスイーツ
vol.24 妙に見晴らしのよい場所から見えること
vol.23 帯状疱疹ブルース
vol.22 隣の空き地は青かった
vol.21 戦前の首里の青春を偲ぶ
vol.20 君は与那原大綱曳をひいたか?
vol.19 蝉の一生、人の一日


過去のコラムは「コノイエプラス」へ


新城和博さんのコラム[カテゴリー:まち歩き 沖縄の現在・過去・未来]
ごく私的な歳時記 vol.26

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ライター/編集者
1963年生まれ、那覇市出身。沖縄の出版社「ボーダーインク」で編集者として数多くの出版物に携わるほか、作詞なども手掛ける。自称「シマーコラムニスト」として、沖縄にまつわるあれこれを書きつづり、著書に「うちあたいの日々」「<太陽雨>の降る街で」「ンバンパッ!おきなわ白書」「道ゆらり」「うっちん党宣言」「僕の沖縄<復帰後>史」などがある。

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