夏の終わりのウッパマ|新城和博のコラム|fun okinawa~ほーむぷらざ~

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COLUMN

新城和博

2017年9月25日更新

夏の終わりのウッパマ|新城和博のコラム

ごく私的な歳時記Vol.33|首里に引っ越して20年。「ボーダーインク」編集者でライターの新城和博さんが、この20年も振り返りながら、季節の出来事や県産本の話題をつづります。

今帰仁村の穴場のビーチの、青年期と中年期の思い出

夏の終わりに、30数年ぶりの浜で遊んだ。すごく久しぶりの島内家族旅行。子どもが小さいころはあちこち行ったものだが、成人したいま、めったにないことである。
今帰仁村のウッパマビーチ。沖縄のなかでもだいぶ少なくなった、ほぼ自然のままの浜である。「ウッパマ 大きな浜」という意味だそうだ。対岸には橋が架かって、有名観光地となった古宇利島が見える。
前回来たときは建物は何もなかったが、いまは浜に面したホテルが一軒建っていた。しかし周りはほかにこれといった施設もなく、静かなものだ。シーズンオフということもあるのだろうが。




30数年前の記憶は薄れている。
KUWATA BANDの「BAN BAN BAN」が、四六時中(しろくじちゅう)流れていた夏の盛りだったことだけ覚えている。
当時通っていた喫茶店のマスターの家族とバイトの娘たちで、夏の思い出づくり…若気の至りではあるが、そんな心持ちで車を運転したような、そうでもないような。穴場のビーチがあるということでたどり着いたのが、ウッパマビーチだった。



浜以外に何もないのがよかった。少し歩いていくと、海に迫る崖から湧き水があるのが、高校のときにキャンプに行った西表島の南風見田(はえみだ)の浜に少し似ていた。
そこで僕は、波打ち際でゴロゴロしながら一冊の本を読んだ。池澤夏樹の長編処女作『夏の朝の成層圏』。取材中の漁船から海に落ちてしまった男が無人島に流れ着き、そこでさまざまな思考を深めながら物語が進んでいく。誰もいない島の夏の朝は、まるで成層圏のようなすがすがしさがある…。そんな読後感が今も残っている。
その時読んだ本は、カバージャケットがどこかへいってしまったが、まだ手元にある。あの夏の日と同じように、もう一度同じようにページをめくってみようかと思った。中年の至りとでも言おうか。
ほとんど泳げない僕は、ほんの少しだけ潜ったあと、波打ち際に座り、本がぬれない程度に海水につかって、読み始めた。主人公が海に落ちて何日かたち(救命胴衣を着ていたのだ)、ようやく島に流れ着こうとするあたり…。波のゆらゆらを感じながら読むと、それなりに臨場感があるような、ないような。



遠く水平線には伊是名島と伊平屋島も見える。白いフェリーが運天港を目指して少しずつ近付いてくる。
夏の終わりのウッパマビーチは、30年後もちょっとした穴場だった。




 

<新城和博さんのコラム>
vol.34 かつてここにはロマンがあった
vol.33 夏の終わりのウッパマ
vol.32 ちょっとシュールでファニーな神さま
vol.31 セミシャワーと太陽の烽火
vol.30 甘く香る御嶽かいわい
vol.29 松の浦断崖と田園段丘の旅
vol.28 一日だけの本屋さん
vol.27 春の呑み歩き
vol.26 そこに市場がある限り
vol.25 すいスイーツ
vol.24 妙に見晴らしのよい場所から見えること
vol.23 帯状疱疹ブルース
vol.22 隣の空き地は青かった
vol.21 戦前の首里の青春を偲ぶ
vol.20 君は与那原大綱曳をひいたか?
vol.19 蝉の一生、人の一日


過去のコラムは「コノイエプラス」へ


新城和博さんのコラム[カテゴリー:まち歩き 沖縄の現在・過去・未来]
ごく私的な歳時記 vol.33

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ライター/編集者
1963年生まれ、那覇市出身。沖縄の出版社「ボーダーインク」で編集者として数多くの出版物に携わるほか、作詞なども手掛ける。自称「シマーコラムニスト」として、沖縄にまつわるあれこれを書きつづり、著書に「うちあたいの日々」「<太陽雨>の降る街で」「ンバンパッ!おきなわ白書」「道ゆらり」「うっちん党宣言」「僕の沖縄<復帰後>史」などがある。

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