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COLUMN

新城和博

2017年10月27日更新

かつてここにはロマンがあった|新城和博のコラム

ごく私的な歳時記Vol.34|首里に引っ越して20年。「ボーダーインク」編集者でライターの新城和博さんが、この20年も振り返りながら、季節の出来事や県産本の話題をつづります。

今年は格別夏が長い。
一体どうなってしまったのか。秋の気配がやってきては消えていくではないか。台風明けの風の少し肌寒い風が吹いても、日差しは夏のままだ。小さな秋を見つけきれないではないか。

しかし読書の秋は譲れない。ここ数年恒例となっている『ブックパーリー OKINAWA』が9月から11月にかけて行われているのだ。「イベントを通して、本の楽しさを共有する」ということで、本にまつわるさまざまな企画が沖縄各地で行われていて、ぼくもほんの少しだけ参加している。特に那覇の沖映通りで行われる「えきまえ一箱古本市」はもう6回目を迎える。ぼくは最初、言い出しっぺとしてイベント主催者側であったが、今年からは運営全般を沖映商店街振興会が行うようになったため、一参加者として楽しむことにしている。本は読んでも売っても楽しいです。(しかし、台風22号接近のためこのエッセイを書いたあと中止が発表されました。がーん)

11月になるとそろそろイベントも残り少なくなっているが、ブックパーリー OKINAWA2017実行委員会主催の「かつてここには町の本屋さんがあった~なつかし写真展」は、11月1日から11月13日まで、沖縄県立図書館で行われる。かつて沖縄のあちこちにあった「町の本屋さん」は、ここ数年すっかりその数が減ってしまった。これは全国的な傾向であるが、この写真展では戦後から現在までの町の本屋さんの写真を展示して、あらためて本屋さんについて思いを馳せてみようというもの。金武や名護などあちこちで行われていた展示会の最後として県立図書館で行われる。那覇でずっと町の本屋さんにお世話になっている身としては、懐かしい本屋さんの面影をじっくり偲(しの)んでみたい。楽しみにしている写真展である。



しかし町の風景の中に映画館と本屋さんがなくなってしまうのは寂しいものだ。ふと気づいたら、小さい頃から立ち寄っていたなじみの本屋さん(新刊書店)は、ほとんどなくなってしまった。そのかわりというか、ここ数年は那覇のユニークな古本屋さんに頻繁に立ち寄るようになった。その中でたぶん最も古いであろう「ロマン書房牧志店」が突然閉店してしまった。店主さんが急逝したとのことだ。僕は大学生の頃から立ち寄っていたから、30年以上の付き合いだった。特に親しく言葉を交わしていたわけではないが、やはりショックである。ロマン書房牧志店で最初に買った、沖縄の芥川賞作家・東峰夫『オキナワの少年』は今でも大切に持っている。中古レコード、CDのセレクトも充実していた。




今年の6月、本もあい(以前この連載でも紹介したちょっとかわった読書会)の仲間数人を連れて「ちょっと入りづらい本屋さん巡り」をした時にも、ロマン書房牧志店は外せない店であった。店主さんが手書きしていた、過激で風刺が効いている社会時評的な張り紙が独特の店舗景観を作り出していて、知らない人にとっては入りづらかったらしい。

ぼくにとって、町の風景を異化するロマン書房牧志店は、その風貌(ふうぼう)で那覇の過去と現在をつなぎ止めていた存在だった。しかし、見慣れていた風景はこのように突然消滅する。まさに「かつてここには町の本屋さんがあった」のだ。やはりまたひとつ町角からロマンが失われた、嗚呼(ああ)!



 

インフォメーション

「かつてここには町の本屋さんがあった~なつかし写真展」
沖縄県立図書館開催記念トークが2017年11月4日(土)、3階ホールで行われます。

出演
ブックパーリー OKINAWA2017実行委員 宮城未来(古書の店言事堂店主)
喜納えりか(ボーダーインク編集者)



 

<新城和博さんのコラム>
vol.34 かつてここにはロマンがあった
vol.33 夏の終わりのウッパマ
vol.32 ちょっとシュールでファニーな神さま
vol.31 セミシャワーと太陽の烽火
vol.30 甘く香る御嶽かいわい
vol.29 松の浦断崖と田園段丘の旅
vol.28 一日だけの本屋さん
vol.27 春の呑み歩き
vol.26 そこに市場がある限り
vol.25 すいスイーツ
vol.24 妙に見晴らしのよい場所から見えること
vol.23 帯状疱疹ブルース
vol.22 隣の空き地は青かった
vol.21 戦前の首里の青春を偲ぶ
vol.20 君は与那原大綱曳をひいたか?
vol.19 蝉の一生、人の一日


過去のコラムは「コノイエプラス」へ


新城和博さんのコラム[カテゴリー:まち歩き 沖縄の現在・過去・未来]
ごく私的な歳時記 vol.34

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ライター/編集者
1963年生まれ、那覇市出身。沖縄の出版社「ボーダーインク」で編集者として数多くの出版物に携わるほか、作詞なども手掛ける。自称「シマーコラムニスト」として、沖縄にまつわるあれこれを書きつづり、著書に「うちあたいの日々」「<太陽雨>の降る街で」「ンバンパッ!おきなわ白書」「道ゆらり」「うっちん党宣言」「僕の沖縄<復帰後>史」などがある。

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