妙に見晴らしのよい場所から見えること|新城和博のコラム|fun okinawa~ほーむぷらざ~

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COLUMN

新城和博

2016年12月28日更新

妙に見晴らしのよい場所から見えること|新城和博のコラム

ごく私的な歳時記 Vol.24
首里に引っ越して20年。「ボーダーインク」編集者でライターの新城和博さんが、この20年も振り返りながら、季節の出来事や県産本の話題をつづります。

年の瀬や年始めには、忙しいはずなのに、なぜかしら街をぶらりと歩きたくなる。
年から年中「まち歩き」しているんじゃないかと思われているが、年末年始の雰囲気の中歩くというのは、またいつもと違う味わいがあるのだ。街の空気がその年の社会を凝縮しているように感じる、とでも言えばいいか。

ここ数年、那覇のまちの風景は確実に変わった。風景が変わるということは実は社会が変わってきているということ。話は少し大げさだけど、去年僕はさまざまなことを鑑みて、こういうことをメモ替わりのSNSに記してみた。

歴史が地続きであることを体感することは大事。

そしてそれは、けっこう誰でもできること。

扉を開けて外に出て、歩き始めてそっとまわりの景色をぐるりと眺める。

歴史とは私たちが目にする風景そのもの。

風景を時代の地層の断面図としてみたら、昭和の時代も平成の時代も確実に目にすることができるのだ。

那覇を今歩いて思うのは、「空き地」が増えて見通しのいい街角が増えたなぁということ。老朽化したとされる建物や交通インフラ整備のため、いままで見てきた風景の一角がなくなり、ぽっかりと穴が開いたような空間が出現している。建物に遮られていた遠くの風景が思いがけず見渡せて、親しんでいた遠近感が少し狂う感じは不思議だ。

いろいろな計画の思惑で性急に街並みが変化することに、とまどいと悲しみを感じる一方で、初めて見渡せる風景もまた、今しか見えない時代の地層の断面かもしれない。そう思いながら、街の空き地を気にして那覇の街をずんずん歩いてみた。





開南バス停一帯はずいぶんと見晴らしのよい場所になってしまった。本格的な整備が始まる前に斜面が削り取られて、地肌があらわになっている。ここは戦後那覇の発祥の地とも言っていい場所で、自然発生的に市場とテント村が形成された場所なのだけれど、それは周辺の土地と比べて高台にあったからなのだ。つまり水はけが良かったのである。もう一つ付け足すと、戦前そこには私立の開南中学校があり、校庭などが整備されていたということもあるようだ。

僕は開南育ちと言っていいくらいなので、復帰前後から昭和の終わりごろまでの開南バス停界わいのにぎわいをよく覚えている。南部からの買い物客は、平和通り、国際通り、農連市場などのアクセスポイントとして、このバス停を大いに利用したのだ。

農連市場の改築はガーブ川を挟んで半分の区画の工事が進行している。ぽっかりと開いた空間はあまりにもあっけらかんとして、既にかつての光景を思い出すのが難しくなっている。そして今のこの光景も建物が完成すると消えてしまうのだ。

周辺の建物は歯かけ的にどんどん無くなっているけれど、農連市場のイメージである木造の迷宮化した市場の建物は、ガーブ川を挟んだもう一方でまだ健在である。ぐるりと周辺を歩いてみた。





「めんそーれ農連市場 そのほか仮設店舗も深夜から元気に営業中!」の看板を見つけた。昼間のそこはシーンとしていたが<市場の取引は深夜から朝方がメインなのだ>、面白くなってそのまま市場界わいをずんずんと先に、奥に進んでいった……。


 

<新城和博さんのコラム>
vol.34 かつてここにはロマンがあった
vol.33 夏の終わりのウッパマ
vol.32 ちょっとシュールでファニーな神さま
vol.31 セミシャワーと太陽の烽火
vol.30 甘く香る御嶽かいわい
vol.29 松の浦断崖と田園段丘の旅
vol.28 一日だけの本屋さん
vol.27 春の呑み歩き
vol.26 そこに市場がある限り
vol.25 すいスイーツ
vol.24 妙に見晴らしのよい場所から見えること
vol.23 帯状疱疹ブルース
vol.22 隣の空き地は青かった
vol.21 戦前の首里の青春を偲ぶ
vol.20 君は与那原大綱曳をひいたか?
vol.19 蝉の一生、人の一日


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新城和博さんのコラム[カテゴリー:まち歩き 沖縄の現在・過去・未来]
ごく私的な歳時記 vol.24

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ライター/編集者
1963年生まれ、那覇市出身。沖縄の出版社「ボーダーインク」で編集者として数多くの出版物に携わるほか、作詞なども手掛ける。自称「シマーコラムニスト」として、沖縄にまつわるあれこれを書きつづり、著書に「うちあたいの日々」「<太陽雨>の降る街で」「ンバンパッ!おきなわ白書」「道ゆらり」「うっちん党宣言」「僕の沖縄<復帰後>史」などがある。

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