帯状疱疹ブルース|新城和博のコラム|fun okinawa~ほーむぷらざ~

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新城和博

2016年11月30日更新

帯状疱疹ブルース|新城和博のコラム

ごく私的な歳時記 Vol.23
首里に引っ越して20年。「ボーダーインク」編集者でライターの新城和博さんが、この20年も振り返りながら、季節の出来事や県産本の話題をつづります。


①世界のウチナーンチュ大会、とにかく人が多い。セレモニーが始まる数時間前。


夜のとばりがいつのまにか早く下りるようになった。毎年のことながら、「まだ6時なのにこんなに暗くなってる!」なんて思う季節である。秋から冬の入り口へと向かうこの期間、実にイベントが多いことに気が付く。これも毎年のことなのだろうが今年は特に多い! と感じた。多分「世界のウチナーンチュ大会」が開かれていたこともあるだろう。週末ごとにあちこちのイベントに出掛けた人も多いはずだ。僕も遠出はしないものの、那覇界隈(かいわい)でイベントがあると、ついソワソワしてしまうくちだ。通りに人があふれてそぞろ歩く風景を見るのが大好きなのだ。

さらに今年は「ブックパーリーおきなわ」というブックイベントが2カ月以上にわたって行われており、僕はトークイベントの司会、参加者としてあちこちに顔を出した。これは半分仕事ともいえるが、半分は趣味。沖縄の離島に出張する本屋さんのことやお菓子ばかり売っている街角の本屋さんの話を聞いたり、沖縄劇映画の戦後70年を90分で語り合ったり、ドイツの世界一美しい本をつくる出版社の映画を見て感想を述べたり、全国の一箱古本市事情を聞き出したりしているうちに……、気が付いたら帯状疱疹になっていた。人の話を聞くのは面白いが実はストレスもためていたらしい。



②首里文化祭の王朝行列、女官たちの後ろ洲姿。発症したのに気付かず痛みを我慢していた……


帯状疱疹、それは免疫力が落ちたり、精神的に疲れていたりすると、かつての水ぼうそうの菌が活性化して体の神経に沿って悪さしてしまう病気。詳しくは各自で調べてください。症状としては最初しびれるような、チクチクする痛みが体の一部で起こって、気が付いたら湿疹が出て、何かかぶれたかしら? と病院に行くと「ふっ、帯状疱疹ですね」とものの1分で診断される、割と身近な病気である(個人的な感想です)。

特徴は、とにかく痛い! ということである。ちくちく感がハンパないのである。
シャツが肌にすれるだけで痛い、なにもしなくても痛い。痛いったら、痛いのである。治療法はできるだけ早めに薬を飲み、そして安静にすること。だいたい1カ月くらいで治るが、場合によっては入院。その後も痛みが残ってしまうこともある、という油断ならない病気なのだ。体の中にひそんでいる水ぼうそう菌がなせるものなので、多くのオトナが発症の可能性があるのである。まわりの帯状疱疹関係者(自らなったことあるか、知り合いがなったことがある人)にどんな痛みだったかとリサーチ。一番なるほどと思ったのが「小さな親指くらいの兵隊が針を持って、大勢でおなかをチクチク四六時中刺している感じ」だった。



③首里文化祭の名物になりつつある旗頭のガーエー。発症したのに気付かず泡盛を飲みながら見学中


安静にしないといけない……、という時に限ってどうしても出ないといけないスケジュールがあるのである。高校生に文芸誌編集のワークショップをし、「帰ってきたウルトラマン」などを担当したレジェンドの沖縄出身脚本家と語り合い、那覇の市場の成り立ちを聞き出すというゆんたくトークに出席し、東アジアから集まった出版人会議で発言したり……。しかし、チクチク感は誰にも分からない。見た目普通かなって感じなので、会う人ごとに「実は帯状疱疹でして、いてて」と同情を誘ってイベントを乗り切る、ということにした。



発症に気付いても休まなかった「沖映通り えきまえ一箱古本市」に、店主として参加した。店の名前は「週末だけの古本屋 本モアイ堂Z」


それでもスケジュールの隙間を縫って、まる2日間、自宅から一歩も出ず寝込んでみた。しばらくは週末も外出せず、おとなしくした(それでも映画「この世界の片隅で」だけは無理して見に行った!)。僕の目の前からたくさんの飲み会、打ち上げが通り過ぎ、あれから4週間目を過ぎて、疱疹状態は脱しつつある。

心身共に弱っていることがようやく分かった。もう若くないのである。気が付いたら夜のとばりが下りていたのである。健康に感謝しつつ、しばらくはゆったりと自宅で過ごすことにしよう(できるかなぁ……)。




【おまけ】
自宅療養中に時間があったので、その時の心情を歌詞にしてみました。
 

「帯状疱疹ブルース」

いろんな約束、仕事を休ませてもらった
すると眠れた 眠れてしまった
肉体の痛みは理解の内
精神の疲れは実感の外
眠れてしまった 悩んでぃ(NIGHT & DAY)
実感を理解したら
眠れなくなりそう
だから
気が付かないふりをするぜ

※帯状疱疹 おー帯状疱疹
 世の中から退場
 世界の端っこで放心

※リプライ


 

<新城和博さんのコラム>
vol.34 かつてここにはロマンがあった
vol.33 夏の終わりのウッパマ
vol.32 ちょっとシュールでファニーな神さま
vol.31 セミシャワーと太陽の烽火
vol.30 甘く香る御嶽かいわい
vol.29 松の浦断崖と田園段丘の旅
vol.28 一日だけの本屋さん
vol.27 春の呑み歩き
vol.26 そこに市場がある限り
vol.25 すいスイーツ
vol.24 妙に見晴らしのよい場所から見えること
vol.23 帯状疱疹ブルース
vol.22 隣の空き地は青かった
vol.21 戦前の首里の青春を偲ぶ
vol.20 君は与那原大綱曳をひいたか?
vol.19 蝉の一生、人の一日


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新城和博さんのコラム[カテゴリー:まち歩き 沖縄の現在・過去・未来]
ごく私的な歳時記 vol.23

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ライター/編集者
1963年生まれ、那覇市出身。沖縄の出版社「ボーダーインク」で編集者として数多くの出版物に携わるほか、作詞なども手掛ける。自称「シマーコラムニスト」として、沖縄にまつわるあれこれを書きつづり、著書に「うちあたいの日々」「<太陽雨>の降る街で」「ンバンパッ!おきなわ白書」「道ゆらり」「うっちん党宣言」「僕の沖縄<復帰後>史」などがある。

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