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2025年10月2日更新

乳がんと診断 治療と仕事の両立、どうしたらいい? 経験者と医師に聞く[10月は乳がん月間]

女性の9人に1人がかかるといわれる乳がん。新しい薬で治療の幅は広がる一方、高額な治療費がかかることも。さらに、がん患者の2人に1人が働いている現在、治療と仕事を両立する人は増えています。2人の経験者の声と医師の話から、治療費と働き方のイマを見つめます。

乳がんと仕事 私の選択肢

乳がんと診断された後も、働き続ける人は増えている。2人の経験者と医師の解説から、治療費の実情や仕事の両立について考えます。

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 経験者がつづる 

タイムス住宅新聞社編集部長  徳正美(54)

マイナ保険証で助かった

乳がんの確率が高いと分かったのは昨年末の定期検診。仕事柄、早期発見なら治ることが多いと分かっていても、冷静さを保つのに必死だった。治療費は想像もつかなかったが、「保険で一定額は賄え、要件を満たしているので休職しても傷病手当が出る」と確認。職場と相談し、まずは休職し治療に専念することにした。「心が追いつかないこともあると思うので、どんなことでも遠慮なく相談してください」との主治医の言葉が心強かった。

確定診断の結果、左乳房にあるしこりは直径1.4㌢のがんでステージ1。女性ホルモンの影響も特定のタンパク質の影響も受けずに増えるトリプルネガティブで、悪性度が高く進行も早め。手術でしこりを取るだけでなく、見えないがんの芽を摘み、しこりをできるだけ小さくするため、術前に8回、抗がん剤の点滴を受けた。

点滴には2週に1度通院し、手術は部分切除で5日入院した。点滴は1回約1万円、副作用を抑える注射は約2万円、遺伝性乳がんかを調べる検査は約8万円とお金はかかるが、加入していた保険でカバー。マイナ保険証で、窓口での支払いが高額療養費の限度額内に抑えられたのも助かった。

ほかにもお金はかかる。ウイッグや術後専用の下着を準備し、口内炎予防で歯科に通った。副作用で手足がしびれ、つまずいてねんざしたため、今も整形外科に通院。診断書など文書作成費は自費だ。治療費は9カ月現在で55万円、それ以外の関連費用に32万円。関連費用や休職による収入減は家計に響くので、備えておくと安心だと思う。  

職場の理解あったからこそ

治療中は抗がん剤の副作用で、時に眠れないほどの倦怠感(けんたいかん)や下痢、かゆみに襲われたが、我慢せず主治医に相談。合う薬を出してもらうと楽になった。不安や疑問は小さなことでもそのままにしておくと眠れなくなってしまうため、納得できるまで質問。脱毛時なども一緒に笑ってくれる夫や息子の明るさに救われた。

術後の経過は順調。今は再発リスクを抑えるための抗がん剤を服用中で、放射線治療をへて治療は終わる。こんなに長引くとは思っていなかったが、保険のおかげで治療費の心配はせずに済むし、再発リスクに対しても打つ手があるのはありがたい。安心して治療できるのは、信頼できる主治医や家族・周囲の支えに加え、保険や手当でお金の不安が減ったこと、会社や同僚の理解が大きい。

7カ月休職し先月復職した。職場には休みの間も時々顔を出していたので同僚とのコミュニケーションはスムーズに。仕事は時短・内勤から始めている。病気は仕事のやりがいを改めて考える機会になった。働き続けることで見守ってくれる周囲に応え、自分の体験を発信して誰かの役に立ちたい。
 
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 経験者に聞く 
金城和久子さん(54)

働くことが心の支えに

2年前の4月、朝起きて右脇の下につっぱるような違和感を覚えた金城さん。触るとゴリッと、石ころのような硬いしこりがあった。その数日前、テレビで乳がんの特集を見たばかり。不安を抱えながらも出勤し、午後病院へ電話をした。

1週間後、受診し検査。結果が分かったのは3週間後だ。「家族にも親戚にも乳がんはいない。大丈夫だろう」と思っていたが、告げられたのは「ステージ1、悪性度の高い乳がん。ホルモン療法が中心だが悪性度が少し高く化学療法も必要なルミナールBタイプ」という診断だった。一瞬目の前が真っ暗になったものの、主治医の「大丈夫です。絶対に治ります」という言葉に救われ、気持ちを持ち直した。夫に病気を告げると、子どもを出産した時以来の涙を見せた。当時、子どもは24歳と16歳だった。

2週間後から抗がん剤治療がスタート。パートで経理として働いていた金城さん。勤め先の「休んでいい。体調が良いときに、大丈夫な範囲で働いてほしい」という言葉に励まされ、仕事を続けた。勤務は月に10日ほど、1日4時間ほどに減り、月給は以前の3分の1になった。休めば給料に響く中、会社が時給や手当を配慮してくれた。

治療中は抗がん剤の副作用で関節痛の痛みに苦しみ、眠れない夜もあった。「寝てばかりで役に立たない」「家族を悲しませている」と落ち込むこともあったが、「仕事に行く」ことが現実に戻してくれた。「社会とのつながりがあって、精神的に救われた」と振り返る。収入減で家計を心配したが成人した娘が支えてくれた。

治療費は半年で約70万円ほど。加入していた民間の医療保険で、同じくらいの金額が支給された。高額療養費制度の申請を6回行い、合計約20万円の払い戻しがあった。術前の抗がん剤治療が功を奏してがんは消え、乳房を温存する手術を受けた。術後は再発防止のために放射線治療を16回、その後抗がん剤の経口薬を1年続け、昨年12月に治療を終えた。

乳がんの経験をプラスに

乳がんになって、「この体験をマイナスで終わらせたくない」と自分を見つめ直した金城さん。価値観は大きく変わった。「以前は親の介護や子どもの不登校もあって、家族のために頑張ろうと思っていたんです。けれどがんになって、自分のために明るく生きることが家族の幸せにつながる、やりたいことをやろうと思うようになった。がんがなければ、今の私はいません」と話す。

以前から「子どもや親のサポートをしたい」と考えていた金城さん。これまでの職場と掛け持ちで、児童福祉に関する事業所の経理の仕事を始めた。また、研修を受けてがん教育外部講師になり、今年初めて高校で授業をした。授業で経験談と共に、乳がん検診の大切さを説いた。「私は早期発見だったので、こんなに元気になれた。最初はいろいろな恐怖が頭をよぎり、病院への連絡をためらったので怖い気持ちは分かる。けれど、一歩踏み出してほしい」


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 医師に聞く 

那覇西クリニック理事長 玉城研太朗さん
たまき・けんたろう/日本乳癌学会認定医・専門医
 

半数が仕事と治療両立

県医師会で産業保健担当理事として「治療と仕事の両立」の啓蒙に力を入れている玉城研太朗さん。「入院が必要だった化学療法が外来で受けられるようになり、以前と比べて手術の入院日数も減っています。がん患者の2人に1人は働きながら治療をしている今、がんになっても仕事を辞める必要はありません。ただし、以前よりも理解は広がってきていますが、会社によって差があるのが現状です。不調の時は休めるようにするなど、働きやすい職場づくりや周囲の理解が欠かせません」と話す。

新薬登場し予後改善 治療費は高額に

乳がん治療は、日進月歩だという。「乳がんは毎年のように新薬が出て、予後が良くなっています。一方で、それに伴い治療費が高額になることが増えています」

乳がんの治療は、手術、抗がん剤、放射線治療が基本となる。乳がんには大きく五つのタイプがあり、治療法や費用はタイプによって変わる。玉城さんによると、7割強を占める「女性ホルモンが原因となるタイプ(ルミナールA)」の多くは治療費が比較的安く、手術費以外は月数千円程度で済むことが多い。一方で、タイプによっては毎月数十万円~100万円の新薬を1~2年間使い続けるケースもあるという。

リスク下げる運動、肥満の予防
 
乳がんの原因は遺伝性が5%、肥満や食の欧米化が20%、半分以上は原因不明と言われているという。「乳がんのリスクを下げるには、肥満の防止・解消が効果的です。それは脂肪が女性ホルモンのような働きをして、乳がんのリスクを高めるから。沖縄は全国と比べても乳がんの患者が多く、高齢者の割合が高い=下グラフ
 

 

食の欧米化による肥満率の高さが関連していると考えられます。BMI25以下を目指しましょう」と玉城さん。ほかにリスクを下げるのが運動で、ウオーキングや水泳など適度な運動を週150分以上行うことが推奨されている。取り組みやすいラジオ体操もおすすめだという。

玉城さんは「沖縄そばも乳がん検診も『ソーキ(早期)』が大事」と、定期的な検診を呼びかける。


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取材/栄野川里奈子
毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」10月は乳がん月間
第1990号 2025年10月02日紙面から掲載

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