健康
2025年10月2日更新
知っておきたい!乳がん治療費の負担を軽減する「高額療養費制度」とは[10月は乳がん月間]
乳がんの治療では、医療費が高額になるケースがある。そんな時に知っておきたいのが、「高額療養費制度」だ。全国健康保険協会(協会けんぽ)の望月弘也さんと牧宣昭さんに、同会の加入者について、内容や利用方法、注意点を聞いた。
「高額療養費制度」とは?
乳がんの治療では、医療費が高額になるケースがある。そんな時に知っておきたいのが、「高額療養費制度」だ。全国健康保険協会(協会けんぽ)の望月弘也さんと牧宣昭さんに、同会の加入者について、内容や利用方法、注意点を聞いた。高額な医療費の負担が軽く

全国健康保険協会(協会けんぽ) 望月弘也さん(左)、牧宣昭さん

A 全国健康保険協会の加入者については、所得区分によって1カ月に払う医療費の上限が定められていて、申請すればそれを上回った分が後日返還される制度です=図1。大きく三つの特徴があります。

①月単位での計算…医療費の計算は、月(月の1日から末日まで)単位で行われます。そのため、治療や入院が月をまたいだ場合、それぞれの月で自己負担限度額まで支払う必要があります。
②自己負担限度額は所得によって違う…自己負担の上限額は、被保険者の所得区分に応じて異なります=図2。70歳以上の場合は、上限額が変わります。

③払い戻しには申請が必要…基本的に、医療機関の窓口で1度自己負担分(医療費の3割)を支払い、後日申請することで上限額を超えた分が払い戻されます。払い戻しには、診療月から早くても4カ月程度がかかります。
ただし事前に「限度額適用認定証」を申請し、医療機関の窓口に提示すると、支払いを自己負担限度額まで抑えられます。また、マイナ保険証を利用登録している場合、マイナ保険証で限度額の区分が確認できるため、限度額適用認定証がなくても窓口での支払いは限度額までになります。マイナ保険証をご活用いただけたらと思います。
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A 高額療養費は、複数の医療費を合算して計算することができますが、合算のルールが複雑で、注意が必要です。
次の場合は、計算の単位が分かれているため、合算できません。異なる病院やクリニックでの支払い。また、同じ病院内でも、医科(内科や耳鼻科など)と歯科の診療費は別々に計算されます。ほかに、同じ医療機関でも、入院と通院費は別々に計算されます。
一方で、病院から処方箋が出て、院外の薬局で薬を受け取った場合、その薬局での支払いは処方箋を出した病院の医療費と合算ができます。70歳未満の場合、自己負担額がそれぞれ2万1千円以上のものだけが合算の対象となります。
さらに、長期間にわたり高額な治療が必要な場合、自己負担限度額がさらに引き下げられる「多数回該当」※という仕組みがあります。これは、同一世帯で直近12カ月以内に3回以上高額療養費の支給を受けている場合、4回目以降は自己負担限度額が低くなるものです。

A 自分の上限額がいくらかを知っておくと、いざという時の医療費の備えにつながります。所得区分を勤務先の担当者へ、確認しておくといいでしょう。
また、「限度額適用認定証」や「マイナ保険証」を利用していても、支払いは医療機関ごと、入院・通院ごとに行われるため、いったん支払い額が自己負担限度額を超え、申請が必要になる場合があります。例えば、A病院とB病院でそれぞれ自己負担限度額(例:8万100円+α)に達する医療費がかかった場合、両方の窓口でいったんは限度額まで支払う必要があります=合計16万200円+α。その上で、合算して超えた分を後日申請し、払い戻しを受けることになります。
※全国健康保険協会の加入者以外は、健康保険を運営している保険者へ問い合わせを。
↓画像をクリックすると「協会けんぽ」のホームページに移動します

取材/栄野川里奈子
毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」10月は乳がん月間
第1990号 2025年10月02日紙面から掲載