健康
2025年11月13日更新
放っておくと怖い糖尿病 合併症の発生、脳梗塞やがんの進行も 専門医に聞いた予防のポイント|人生100年!!ココカラ健康長寿⑧
糖尿病は症状のない時期が長く続き、放っておくとさまざまな合併症を引き起こします。専門家に予防と治療のポイントについて聞きました。

糖尿病が進行するとさまざまな合併症のリスクが高まる。てだこ浦西駅 循環器・糖尿病クリニックの院長、福地万里医師は「症状なく進行するので、健康診断などで血糖値をチェックして予防に努めましょう」と呼び掛ける。同院の医師で福島県立医科大学教授の島袋充生医師は「糖尿病を発症後、速やかに治療を始めて継続することが合併症の予防につながります。治療には血糖だけでなく、血圧、脂質のコントロールが大事」と話す。
早期に治療して合併症を予防
教えてくれたのは

てだこ浦西駅 循環器・糖尿病クリニック
院長 福地万里さん
日本糖尿病学会(専門医)、日本内科学会(総合内科専門医)。2024年7月にてだこ浦西駅循環器・糖尿病クリニックを開院

福島県立医科大学
教授 島袋充生さん
日本糖尿病学会(専門医、評議員、ガイドライン2024 評価委員)、日本内科学会・日本循環器学会(専門医)

糖 尿病は、インスリンの作用が十分でないため血糖値(血液中のブドウ糖の量)が高い状態が続く病気です。体のエネルギー源となるブドウ糖は、インスリンの働きでグリコーゲン(貯蔵糖)や中性脂肪として肝臓や筋肉、脂肪細胞に蓄えられます。飲食によって血中のブドウ糖が増えると通常はインスリンが分泌されて、前述の働きによって血糖値が正常の値に保たれるように調整されます。
しかし、肥満によって内臓脂肪が過剰に増え、肝臓や筋肉に脂肪がたまると、インスリンの働きが悪くなります(インスリン抵抗性)。これが糖尿病の主な原因で、患者の約7割を占めるといわれています。一方、肥満ではない人も遺伝的な要因などでインスリンの分泌自体が少ないために発症するケースもあります。


急 性合併症と慢性合併症を発症するリスクが高まります。急性合併症はいつでも起こりえて、緊急治療を必要とすることもあります。血糖値が極端に高い状態(400~500mg/dL以上)になった時に、血が濃くなり過ぎて熱中症のような状態になり、意識障害が起こる恐れがあります(高血糖高浸透圧昏睡)。また、高血糖により白血球の働きが低下して免疫力が弱まり、コロナや肺炎などの感染症にかかりやすくなり、重症化のリスクも高まります。
糖尿病の悪い状態が長期間続くとさまざまな慢性合併症が起こります=上図参照。三大合併症と呼ばれる神経症、網膜症、腎症は、糖尿病の発症後10年~20年かけて症状なく進行することが特徴です。動脈硬化による脳梗塞や心筋梗塞、がん、認知症は、糖尿病になると進行しやすい病気で、糖尿病予備群と言われる境界型から進行します。また、高血糖によって骨の質が悪くなって骨折しやすくなり、神経障害や視覚障害などで転倒のリスクも高まります。
慢性合併症には「糖化」が関わっていると考えられています。これは体内の糖とタンパク質が結合する現象で、血管など体の組織が劣化していきます。糖化による血管障害が慢性合併症を引き起こす主因とされ、食後2時間の血糖値が140mg/dLを超えると糖化が進行すると言われています。

肥 満にならないよう適正体重を維持すること。そのために食生活の改善や運動不足の解消を心掛けましょう。食事は「量(カロリー)」だけでなく「質(栄養バランス)」「調理方法」「食べ方」の四つのポイントに気を配ることが大切です。調理方法としては、揚げる・炒めるよりも、ゆでる・蒸すといった調理法を選んで、油の取り過ぎに注意しましょう。
食後の血糖の上昇を抑え、適切なインスリンの分泌を促すためには食べ方も大事です。まず、よくかんで時間をかけて食べること。そして、ご飯より先に野菜や肉・魚(タンパク質・脂質)などのおかずから食べることで、ご飯(糖質)を食べる頃には満腹感が得られやすくなるため、食べ過ぎを防いで糖質の量を抑えることにつながります。
運動をして体にためられた糖と脂肪を消費することで、インスリンの働きが良くなります。また、運動によって筋肉が増えるとその分エネルギー消費も増えます。まずは1日の歩数を歩数計やスマホで計り、それに1000歩増やして続けることがこつ。ユーチューブなどで体操の動画を見ながら楽しく体を動かすのもいいでしょう。時間帯としては血糖のコントロールを考えると夕食後が理想的ではありますが、生活スタイルに合った続けやすい時間に運動をして、習慣化することの方が大事です。


治 療の目標は「糖尿病を治すこと(血糖値を正常に戻す)」ではなく、「合併症を起こさない、悪化させないこと」です。慢性合併症は先述の通り、症状のない時期が長く続き、症状が出始めた時には有効な治療法は限られているので回復が難しくなります。
慢性合併症は、高血糖だけでなく高血圧や脂質異常症といった複数の危険因子が血管障害を引き起こすことで発生します。そのため食事や運動療法などで血糖、血圧、脂質をコントロールし、禁煙によって血管障害を起こすリスクを抑えることが重要です。また、合併症によって影響を受ける目(網膜症)や腎臓(腎症)に異常がないか定期的に検査して、適切な治療を受ける必要があります。
糖尿病は合併症が起こるまで自覚症状がないので、健康診断などで定期的に血糖値をチェックして予防に努め、もし糖尿病と診断されたら、速やかに治療を始めて、継続することが大切です。ちなみに糖尿病になった人の40歳の平均余命は日本人の平均よりも長いというデータもあります。これは、糖尿病と診断されて早期に治療を始めて継続することが、合併症を予防し長生きにつながることを示す一例といえます。
慢性合併症は、高血糖だけでなく高血圧や脂質異常症といった複数の危険因子が血管障害を引き起こすことで発生します。そのため食事や運動療法などで血糖、血圧、脂質をコントロールし、禁煙によって血管障害を起こすリスクを抑えることが重要です。また、合併症によって影響を受ける目(網膜症)や腎臓(腎症)に異常がないか定期的に検査して、適切な治療を受ける必要があります。
糖尿病は合併症が起こるまで自覚症状がないので、健康診断などで定期的に血糖値をチェックして予防に努め、もし糖尿病と診断されたら、速やかに治療を始めて、継続することが大切です。ちなみに糖尿病になった人の40歳の平均余命は日本人の平均よりも長いというデータもあります。これは、糖尿病と診断されて早期に治療を始めて継続することが、合併症を予防し長生きにつながることを示す一例といえます。
取材/池原拓
毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」人生100年!!ココカラ健康長寿⑧
第1996号 2025年11月13日紙面から掲載













