彩職賢美リターンズ
2025年6月5日更新
日本スキンケアコンシェルジュ合同会社 CEO 兼本のり子さん|出会いに導かれ 素肌に向き合う[彩職賢美リターンズ]
「東京で働かないか」。19歳の時にかけられた一言が、人生を大きく動かした。東京のエステで学び、起業。肌荒れに悩んだことをきっかけに、炭酸ガスパックを開発した兼本のり子さん(43)。「肌は自分で育てるもの」と語り、この秋、オンラインで学べるスキンケア塾を開校する。
日本スキンケアコンシェルジュ合同会社
CEO 兼本 のり子 さん
肌が変われば
人生は変わる
全国チェーンのマッサージ店で受け付けとして働いていたころ、事務所で見知らぬ男性に「東京で働かないか」と声を掛けられたんです。東京にはエステの部署もあり、「エステで働きたいです!」と即答しました。
その男性は、実は本社の社長でした。トントン拍子に東京行きが決まり、未経験で東京のエステへ。ところが研修先では、想定外の言葉を浴びせられました。「沖縄の人はすぐ辞める。教えても意味がない」。母に電話で弱音を吐くと、「甘い」と一括されてハッとしました。このまま帰ったら「やっぱり沖縄の人は…」と言われると思うと悔しくて、奮い立ちました。
それからはひたすら先輩の施術を見て学び、寮ではキッチンペーパーに顔を描いて太ももに載せて練習。土日はマッサージの店舗で実務を積みました。半年の予定だった研修は、3カ月延長されて9カ月に。最後にもらった色紙に「雑草」と書かれたことを、今でも覚えています(笑)。帰郷後、店舗の一角でエステをスタートしました。
肌荒れが転機に
徹底的に学ぶ
その後、マッサージ店を退職。違う業種で働いていた私は、人生最大の肌荒れに見舞われます。皮膚科に通ったものの改善せず。高額なエステ、化粧品、サプリ、美容器具を試しても、効果はありませんでした。
1年以上たったころ、「もう自分で治すしかない」と覚悟を決めました。そこから、改めて肌の構造から徹底的に学び始めました。肌への負担を減らすために高校時代から続けてきた日焼け止めをやめ、肌がきれいな人の共通点は何か、本当に必要なのはどんなスキンケアか検証しました。そこで肌の水分と油分のバランスの大切さに気付きます。さまざまな商品を試した結果、肌のターンオーバーを促す「炭酸ガスパック」と汚れを吸着する「琉球粘土」に行き着きました。
肌荒れは徐々に改善。もう一度エステティシャンとして働きたい思いが募り、25歳で「理想のサービスを提供したい」と起業しました。最初は出張エステでスタートし、1年後に自宅で施術をするようになりました。並行して、スキンケア講座も開催。経営的には厳しかったのですが、施術で成果を出してお客さまに喜んでもらえるとうれしくて。大きなやりがいを感じていました。「彩職賢美」の取材を受けたのは、そのころです。紙面の発行後、電話が鳴り止まず、4カ月先まで予約でいっぱいに。29歳で、思い切って路面店をオープンしました。
3度断られた後
4度目で商品化
その後、別々に愛用していた琉球粘土と炭酸ガスパックを組み合わせたいと考えました。お店で扱うためにいくつも試した中で、コレだ!と思えるパックに出合い、商品化に向けて動き出します。
ただ、開発は難航しました。琉球粘土は仕入れを断られ、何度も足を運んで交渉を重ねて、ようやく承諾を得ました。パックの製造元にも3度断られ、4度目の直談判で「実績がない」と言われたのですが、「今から実績を作ります」とたんかを切ったんです。すると社長が「そこまで言うなら」と了承してくれて。会社を出ると一気に力が抜けて、足が震え出しました。構想から10年。オリジナルの炭酸ガスパック「ダイヤモンドスキンジェルパック」が世に出ました。
製造時には毎回、原料の配合を微調整し、自分の肌で使い心地を確かめています。配合のやり直しが続き欠品したこともありますが、納得できる物を提供したいので妥協はしません。
肌を自分で育てる
スキンケア塾を予定
商品の発売後、取扱店やお客さまが増え、スタッフを増員。休みなく働き、何のために働いているかさえ分からなくなった時期がありました。そんな中、私は事業の拡大よりも目の前の人に丁寧に向き合いたい、と気付いたのです。今年の秋、オンラインで学べる少人数制のスキンケア塾をスタートします。スキンケア迷子を卒業するために必要な「考え方・知識・実践方法」を伝えます。情報があふれる時代だからこそ、自分に合うものを見極める力が必要です。
私はスマートではありません。学校の勉強も不得意でした。けれど、一度決めたらとことんやり抜く「一点集中型」。ドラマを見たり、料理をしたり、日常のあらゆる出来事も、肌と向き合うヒントになると思っています。
20代の肌荒れから、肌と向き合って20年。ひたすら「スキンケアとは…」と考え続けた時間が、私の今につながっています。肌が整えば気持ちが変わる。肌には人生を変える力がある、と信じています。
人生を変えた一冊
兼本さんの肌荒れの改善のきっかけは、1冊の本。「水は答えを知っている」だ=写真。肌が荒れて1年以上何を試しても成果を感じられず、心もすさんでいたころ、母に勧められた。言葉がけで水の結晶の形が変わる写真を見て、ハッとした。「言葉と気持ちを入れ替えて肌の手入れをしたところ、同じ化粧品で明らかに肌が変わったんです」。それからは、前向きな気持ちでスキンケアに取り組み、「一意専心」で肌に向き合ってきた。
本を読む時間を大切にしている兼本さん。「読書は『自分軸』を育ててくれる。迷ったときや不安なとき、本の中の言葉に触れることで、『私はどう感じているのか』『どうしたいのか』に立ち返ることができました。他人の価値観に流されず、自分の中の静かな声を聴く習慣が身についてきたように感じます」と話す。
■日本スキンケアコンシェルジュ合同会社
メール:contact@dsgp-skincare.com
兼本のり子さん
日本スキンケアコンシェルジュ合同会社 CEO
[プロフィル]
かねもとのりこ 1981年、那覇市出身。2006年に起業。10年、オリジナルの炭酸ガスパック「ダイヤモンドスキンジェルパック」の販売開始。25年秋、オンラインのスキンケア塾を開校予定。
2009年6月4日号に掲載
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撮影/比嘉秀明 聞き手、構成/栄野川里奈子
『週刊ほ〜むぷらざ』彩職賢美リターンズ<30>
第1973号 2025年6月5日掲載