親泊宗秀
2016年10月11日更新
夜の帷(とばり)が降りるころ|親泊宗秀のコラム
宮古島市に住む親泊宗秀さんが沖縄・宮古島の自然や人々の暮らしをご紹介します。
沖縄を遊ぶ・楽しむ vol.03
「夜の帷(とばり)が降りるころ」
いつの間にか街灯もともりはじめ、どこからか風に乗って漂う香しい匂い。
隣の台所からは、まな板にあたる包丁の音が心地よく響く。
西の空はアカネ色に染まり、せわしなくスズメの群れがねぐらへと急いでいる。
鳥たちのねぐらは森のような気がするが、スズメなぜか街中を選択している。
宮古島の商業施設も大手企業が進出して、各社顧客獲得にしのぎを削っている。その郊外にあるショッピングエリアの交差点では、コンビニ、給油所、大手スーパーが軒を連ねる場所にもかかわらず、数百羽ものスズメが街路樹や電線に群がっている。
看板や街灯がきらきらと輝きまぶしいのではないかと思うのだが、スズメの気持ちが分からないので、それを推し量ることはできない。
夜の帷が降りるにつれて、家路に向かう人々の気持ちも心なしか急ぎ足に見える。
温かな窓明かり、レースのカーテン越しに見える人影・・・。
見慣れた夕暮れの風景だけに、多くの人は気を留めることもなく過ぎていくひと時かもしれない。けれども、夜空ではにぎやかな夜の始まり、星々が主役の天体ショーが満を持して控えている。
はくちょう座が主役だった天の川も、カシオペア座がスバルを引き連れ、後に控えるオリオン座をたぐり寄せ始めている。天空はすかり秋の装いだ。
地上では残暑が厳しい日々が続いているけれど、ススキの穂も顔を出し、野の草たちは冬支度にいそしんでいる。
こちらの天気予報はいまだに30℃越えを表示しているけれど、北の地域では、もう、ストーブの火が部屋を暖めているらしい・・・。
「日本列島は本当に長いのだなぁ」と、つくづく思う。
宮古島を訪れる観光客は、まだまだ、海水浴ができるので、「なごり雪」ならぬ「なごり夏」を満喫することができる。
対抗するわけではないが、地元の私は、山々を彩る紅葉を想像しながら秋を堪能することにする。
それから、秋と言えば食欲の秋である。
さて、今夜は七輪で炭をおこし、秋の味覚「秋刀魚(サンマ)」の塩焼きで舌鼓でも打つことにしよう。合いの手は、もちろん、三つ星マークのビールで決まりだ。
親泊宗秀のコラム
・vol.11 東松照明写真展
・vol.10 宮古島の原風景(池間島)
・vol.9 御嶽
・vol.8 麺にこだわる島人
・vol.7 孫の味方
・vol.6 珈琲の香りを喫む
・vol.5 光に満ちた世界
・vol.4 宮古島の四季を感じる
・vol.3 夜の帷(とばり)が降りるころ
・vol.2 宮古島からの便り ロマン・空想は尽きない。
・vol.1 宮古島からの便り[赤浜]