ヘルスケア
2025年4月17日更新
作業環境を整えてミスを軽減|こんな時どうする?大人の発達凸凹(でこぼこ)㉕
文・金武育子
(株)沖縄発達支援研究センター代表(株)おきなわedu取締役

発達凸凹の困りごとあるある
発達凸凹の方と事務作業
新年度になりました。この時期は書類作成などの事務作業が増える時期ですが、発達障害がある方の中には、事務作業に苦手意識を感じる方が多いようです。特に、ADHD(注意欠如・多動症)の傾向のある方は、集中力や注意力の持続が難しく、結果的にミスが多くなるため、事務作業に対して不安やストレスが高まり、苦手意識につながりやすくなります。この状況と苦手意識を克服するためには、どうすればいいのでしょうか。

注意力が散漫
タスク整理が苦手
事務作業は細かい作業が多く、正確さが求められるため、ADHDの特性が原因でミスが増えることがあります。こうしたミスが積み重なると、自己評価が低下し、さらに苦手意識が強まるという悪循環に陥りやすいといわれています。
表1に、なぜ発達凸凹の人が事務作業でミスをしやすいのか、「注意力が散漫で、集中力が続かない」、「複数のタスクを同時に処理することが苦手」、「感情のコントロールが苦手」、「タスクの順序を整理するのが苦手」といった五つの苦手の詳細を示しました。発達凸凹の特性がある人の事務作業ミスが増える原因を理解することで、適切な対策を考えることができます。
効率を上げるための
環境整備
次に、事務作業の効率を上げるために重要な、作業環境の整備について考えてみます。ADHDの人は、環境に敏感で、周囲の状況によって集中力が大きく左右されることがあります。そのため、作業環境を整えることは、集中力の保持、ミスの軽減にとって重要です。まず、デスク周りをシンプルに保ちましょう。これが環境整備の基本となります。不要な物を片付け、必要なものだけを手元に置くことで、気が散るのを防ぎます。
また、整理整頓された環境は、頭の中の整理にもつながるといわれており、書類や文房具などを決まった場所に保管し、いつでもすぐに取り出せるようにしておくと効率的です。例えば、分類された書類をファイルに整理して記名しておくと、必要な書類を簡単に見つけることができます。いつも探し物に時間を取られるADHDの特性のある方にとって、探し物がなくなることは重要なミスの回避、環境改善につながることなのです。作業開始へのつまずきがなくなり、効率的に作業を進めることができます。
作業環境を整えてミスを軽減
デジタル環境の
整理も大事
また、パソコンのデスクトップやフォルダー内を整理し、ファイルを一目で見つけられるようにする、デジタル環境の整理も欠かせません。メールの整理や、不要なファイルの削除を定期的に行うことで、デジタル環境が整い、作業中の混乱を防ぐことができます。さらに、デジタルツールを使ったタスク管理の導入は、ADHDの特性の方にとって非常に有効な手段となります。最も集中しやすい環境を見つけ、それを維持することが、事務作業の効率を上げるための鍵となります。定期的に環境を見直し、改善を続けることが重要です。
そのためには、周りの気が付いた人が当人の環境改善に協力すること、その他の方策について提案すること、事務作業が苦手な当人も、真摯(しんし)に相手の意見に耳を傾けること、チームとして協力し合えることが大切なのではないでしょうか?
新年度、事務作業の得手不得手をきっかけに、理解と率直な意見交換を心掛けて取り組んでみてはいかがでしょう?

文・金武育子
(株)沖縄発達支援研究センター代表
(株)おきなわedu取締役
きん・いくこ/1970年、那覇市首里生まれ。10代の2人の息子を通して人生と向き合う中年期クライシス体感中。臨床心理士・国際交流分析士。大学講師、office育子を経て、現職。好きな言葉は「人は必ず発達する」「人間、この未知なるもの」
記事に関する問い合わせは、odssc.okinawa@gmail.com
これまでの記事はこちらから。
『週刊ほ〜むぷらざ』こんな時どうする?大人の発達凸凹
第1966号 2025年4月17日掲載