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2025年7月24日更新

こども音育ひろば「Ritmo」 代表 上間咲子さん|音育で導く自立 親子で育つ喜び[彩職賢美リターンズ]

「子どもが本当に必要としているものは、実は今も昔も変わらない」。20年以上にわたり、独自の音育プログラムを通して、親子の心に寄り添う上間咲子さん(52)。0歳から小学生までが対象のレッスンは保護者同伴。音とリズム、触れ合いを大切に、子どもの個性と成長意欲を引き出し、自立と自信を育む環境づくりに力を注ぐ。

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こども音育ひろば「Ritmo(リトモ)」
代表 上間咲子さん


子どもの可能性
信じて見守る


「子育てって大変だけど、それが幸せで楽しい!」。そう思えるお母さんが増えればという思いで、2005年に「リトモ」を立ち上げました。リトモとは、イタリア語で「リズム」という意味。0歳から小学生までを対象に、音やリズム、音楽を通して、子どもと親が一緒に育つ学びの場は今年3月、開校20年を迎えました。

前職は、大手幼児教育スクールの音楽講師。絶対音感やリズム感、創作力、歌唱力を育てる指導を通じ、聴覚を音楽に生かす取り組みを行っていました。8年勤め、お母さんたちから子育てについてさまざまな相談を受ける中で「もっと力になりたい」と資金もノウハウもない中、独立を決意。リトミックの源流である「ダルクローズ教育」との出合いが、後押しになりました。

レッスンは親同伴
生きる力を育む


 リトモの音育プログラムは、人が人として生きていくために大切にしたいことを、音楽を通して身につけるダルクローズ教育がベース。週1回、50分のレッスンでは音や声、体の使い方を調整し、心の安定を図り、聴覚や創造性、集中力、反応力などを育みます。

リズムは音楽だけでなく、生活や心にもあります。レッスンで感じたリズムを家庭にも持ち帰って生かしてもらいたいので、レッスンは親同伴。親がいてこそ見える、その子の本質を知ることもできます。レッスンでは、いい子の顔だけでなく、わがままや泣きたい気持ちもフルで出させるようにしています。いろいろな感情を出し切ることを繰り返す中で、子どもたちは少しずつ、自分で心を整える力を身に付けていきます。親御さんは、子どものわずかな変化に気づける目と心が養われます。

プライベートでは、07年に長女を出産。新米ママとして気持ちも新たにレッスンに取り組み始めた開校3年目に、彩職賢美で取材してもらいました。たくさんの親子と関わる中で実感しているのは、小学校までレッスンを続けた親子は、確実にたくましくなっていること。現代はあふれる情報に振り回され、迷いや不安を抱える親子が増えていると感じています。だからこそ、何にも惑わされない自分の柱を養うお手伝いが重要だと考えます。

現在スタッフは4人。そのうち1人は、卒業生の保護者です。スタッフ同士、自分たちの子育ての相談もしてきました。レッスンで気になる子がいたら、みんなで気に掛けて関わります。子どもは、1人の目より複数の目。たくさんの人の心の向け方一つで変わります。「大丈夫だよ」と言ってくれる第三者がいれば、子どもも親も自信がつきます。

コロナ禍のレッスンは本当に大変でした。でも、おかげで気づいたこともありました。対面レッスンが難しかった時期、クラスごとに1テーマ3分の動画を撮って、週1回配信。小学生には5分間の家庭訪問も行いました。園や学校に行けず、友達にも会えない中、「おうちにリトモが来た!」と映像に大興奮する子どもたち。対面できなくてもエネルギーをどう届けるか、スタッフで真剣に話し合いました。保護者の「リトモらしい。先生たちの考えることはすごいね」という声と、子どもたちの笑顔に、改めてやりがいを感じました。



肌感覚で寄り添う
命をつなぐ喜び


子育てに正解はない、とよく言われますが、正解を求めて迷っているお母さんは多い。だからこそ、体感としての信頼を親子で育むことが重要だと感じています。「ママのはじまり」というクラスを始めたのも、そんな思いからです。赤ちゃんへのマッサージや語りかけを通して、触れることの大切さを感じてもらう。赤ちゃんは意欲が湧いてきますし、お母さんも、子どものわずかな変化や成長に気づく力が育ちます。その肌感覚こそが、将来、思春期を迎えたときの「寄り添い方の加減」につながる。私自身がそうでした。

難しいことや苦手なことに直面したとき、コツコツ練習する子もいれば、逃げ出したいと思う子もいます。そこにどう向き合うか。私が音楽を通して取り組み続けているのは、「生きる力の土台づくり」です。子どもたちの可能性は無限。でも、その芽を伸ばせるかは、親や周りの大人の関わり方にかかっています。「子どもを信じて、見守る」。その姿勢と環境の重要性を伝えていきたい。

通っていた生徒の中には成人し、結婚する子も出てきました。生徒たちが親になり、子どもを連れてリトモに戻ってきた時に初めて、私たちは、親御さんに対して命をつなぐことができたという実感と、頑張ってよかったねというねぎらいと感謝を届けられます。そんな息の長い関係をこれからも築いていけるよう頑張ります。


 恩師の思い継ぎ、学びの会復活 
ダルクローズ・リトミック沖縄研究会


ダルクローズ・リトミックは、スイスの作曲家、音楽教育家であるエミール・ジャック=ダルクローズによって創られた音楽教育法。「リトミック」、音楽を聴く耳を育てる「ソルフェージュ」、「即興」の三つの要素で構成されている。「人が言葉を自然に覚えていくように、音楽を知識としてではなく、自分の感性や感覚で習得する方法。初めて国際セミナーに参加した時の『これだ!』という衝撃は、今でも鮮明に覚えています」と上間さん。

ダルクローズ・リトミック沖縄研究会は、上原さんを含む数人のメンバーにより2001年に設立された。遠く離れた沖縄でも充実した講習が継続して受けられるよう、長年に渡り尽力した宮良愛子さんが2020年のコロナ禍で他界。宮良さん亡き後、「沖縄にも真のダルクローズ教育を伝えたい」と上間さんと友人が引き継ぎ再発足。県外や海外から特別講師を招き講習会を開催するなど、学びの輪を広げている。8月2、3日には、幼稚園教諭や保育士、音楽指導者・演奏者を対象にした特別講座を開く。


■問い合わせ先:こども音育ひろばRitmo
 電話=098・870・2143



上間咲子さん
こども音育ひろば「Ritmo(リトモ)」代表

[プロフィル]うえま・さきこ 1973年、那覇市出身。東京の専門学校卒業後、カルチャースクール講師、大手幼児教育スクールの音楽講師を経て、2005年にこども音育ひろば「リトモ」を開校。日本ジャック=ダルクローズ協会認定エレメンタリー免許取得、ピーターウォーカーマスター講師


2008年8月14日号に掲載

 
撮影/比嘉秀明 聞き手/比嘉千賀子(ライター)
『週刊ほ〜むぷらざ』彩職賢美リターンズ<31>
第1980号 2025年7月24日掲載

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この記事のキュレーター

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比嘉千賀子

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編集者
住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。

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