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2024年5月16日更新

自分にも「脳の特性」あると考えて|こんな時どうする?大人の発達凸凹(でこぼこ)⑭

文・金武育子
(株)沖縄発達支援研究センター代表(株)おきなわedu取締役

 
 

発達凸凹の困りごとあるある
 凸凹同士の交流が難しい 

5月になりました。ゴールデンウイークは、新入社員や部署移動をした方にとって、最初のターニングポイントになるのではないでしょうか。チームで取り組む仕事で最も大切なことは、他のメンバーとの円滑なコミュニケーションを築くことです。大きく変化した対人関係の中で、新しい立場や役割、他のメンバーの仕事や特性について理解する大切な時期ですが、慣れることで逆に軋轢(あつれき)が生まれやすくなる時期にもなるのです。


コミュニケーションの前に

発達の凸凹には、大きく分けて二つの特性があります。ADHDと呼ばれる「多動性や衝動性」が特性とされるタイプと、「ASD」と呼ばれる「変化に弱く、コミュニケーションが苦手」なタイプ=表1参照、そしてこの二つを併発するタイプです。最初の3カ月間にするべき、(1)名前を覚えること(2)場所を覚えること(3)簡単な書類作成ができること、を遂行していくとき、発達凸凹の脳の特性が遂行を邪魔することが予想されます。その結果、注意を受けることが増え、円滑なコミュニケーションが難しくなっていくのです。

 

 


上手くいかないと何が起こる?

読者のあなたも、もちろん筆者である私も、人は何かしら「脳の特性」を持っています。でもそれを自覚するのは難しく、ついつい相手のせいにしてしまいやすいのです。

自分にとって当たり前のことが、相手にとっては難しいことかもしれない。相手のことを思っての行動でも、大声で注意すると相手を怖がらせているかもしれない。相手に「質問する」という行為が「責める」になっていたり、「答え」を求めることが「謝罪」を引き出すことになっているかもしれない。自分を押し通すことがチームにとって迷惑になっているかもしれない。そんな視点で、うまくいかない事について考えてみていただきたいのです。

「カサンドラ症候群」=下囲み参照=をご存じでしょうか。一般的に、パートナーにASDをはじめとする共感性の低い特性がある場合、もう一方にさまざまな心身の症状が現れる状態を指します。これまでご相談を受けてきた方々を振り返ってみると、もう一方側にも多動性や衝動性などADHDの傾向があることが多く、お互いの「違い」が大きな原因なのではないかと考えています。破滅に至らないよう適切にコミュニケーションがとれるといいのですが、それが苦手な相手との意思疎通は大変難しいものとなるようです。
 
 
これが職場の人間関係で起こると、さらに問題が多方面に影響します。前述の関係性を職場の仲間同士、上司と部下などに置き換えてみると、パワーゲーム(勢力争い)に発展しやすく、職場が非常につらい状況になってしまうのが想像できると思います。
 
 

    自分にも「脳の特性」あると考えて    


どう対処する?

「問題」に発展する前には、「ちょっと困ったなぁ」という状態があると思います。その「ちょっと困った」「この人と付き合うのは大変そう」と思った時、「自分とは世界が違って見えているかもしれない」と考え、一息ついて、自分の思いを確認していただきたいのです。そうすればきっと、柔らかい解決や気づきが得られるのではないでしょうか。



文・金武育子
(株)沖縄発達支援研究センター代表
(株)おきなわedu取締役


きん・いくこ/1970年、那覇市首里生まれ。10代の2人の息子を通して人生と向き合う中年期クライシス体感中。臨床心理士・国際交流分析士。大学講師、office育子を経て、現職。好きな言葉は「人は必ず発達する」「人間、この未知なるもの」

記事に関する問い合わせは、odssc.okinawa@gmail.com

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『週刊ほ〜むぷらざ』 こんな時どうする?大人の発達凸凹⑭
第1919号 2024年05月16日掲載

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