イチゴ1個ずつが「別物」に見えている|こんな時どうする?大人の発達凸凹(でこぼこ)⑪|fun okinawa~ほーむぷらざ~

沖縄で暮らす・食べる
遊ぶ・キレイになる。
fun okinawa 〜ほーむぷらざ〜

沖縄の魅力|スマイリー矯正歯科

もっと美しく

ヘルスケア

2024年2月15日更新

イチゴ1個ずつが「別物」に見えている|こんな時どうする?大人の発達凸凹(でこぼこ)⑪

文・金武育子
(株)沖縄発達支援研究センター代表(株)おきなわedu取締役

 
 

発達凸凹の困りごとあるある
 凸ASDタイプの具体的な特性凹 

今回は、発達凸凹ASD(自閉症スペクトラム)タイプの特性を、「ニキリンコ」さんの著書を基に考えてみようと思います。

「ニキリンコさん」は、『俺ルール~自閉は急に止まれない(花風社)』という著書の中で、いわゆる「自閉っ子」の当事者として、その特性についてユーモラスに解説なさっています。私自身、この本をきっかけに大人の発達凸凹について深く考えることになり、立体的理解のきっかけをいただきました。読者の皆さんにも、発達凸凹ASDタイプについて具体的なイメージ力を持っていただけましたら幸いです。


細部に見入る「私のイチゴ!」現象

「私のイチゴ!」とは、「注意の切り替えが遅いこと」で、「細部にゆっくりと見入る」ことから起こる現象を指します。細部にゆっくりと見入らない人に取っては「ささいな違い」が、見入る人にとっては、「ささいには見えない」、ということになります。これは、「全然違うものを、まわりの人は『同じだよ』、時には強く『何言ってるの、同じじゃん!』と言ってくる」という経験になるのだそうです。子どもにはウルトラマンAとBの区別が分かるのに親には分からないので、おねだりされたものと違うものを買ってしまって泣かれたり、「もう持っているじゃない」と説得しても「違うものだもん」と泣かれたりするわけです。
 


「特定の未来」を想定するが故の執着

細部に見入る人は、ウルトラ一族の個体識別どころではなく、イチゴの一つひとつが、本当に別のものに見えてしまうのです。イチゴが皿に盛ってあると、「これを最初に食べて、次がこれ、そしてそのあとがこれ…」といった将来設計が一瞬にしてできてしまうわけです。別においしそうな順番とか、大きい順番、とかではないのです。しかしながら、うっかりアタマに浮かんでしまった将来設計は重みがあり、食べようと思っていたイチゴを誰かに食べられてしまうと、戸惑ってしまうのです。

周囲の人にはいったい何が起こっているのか見当もつかないし、大人ですから相手を責めることもできません。たとえ親しい相手が事態に気づいて、より良いもの(大きいイチゴ)を差し出したとしても、解決にはならないのです。なぜなら、彼らは「イチゴ」に執着しているのではないからです。数ある未来予想図の中から特定の一つの「未来の形」を想定してしまったが故の執着なのです。本人ばかりが受け入れられず、ただ釈然としないままモヤモヤしてしまうのは、イチゴの一個ずつが「別のもの」に見えているからこそ持ってしまう執着だからです。イチゴは食べれば同じ味がするわけですが、どうしてもイチゴXとイチゴYの入れ替えは不可能なのです。
 

    凸イチゴ1個ずつが「別物」に見えている凹    


どんな工夫をしているか

ニキリンコさんは、うっかりアタマの中で将来設計がデザインされてしまわないよう、「よく見ない」「楽しみにしない」「別のことを考える」などの対策をとるよう心掛けているそうです。頭の構造が変わることはないものの、対策がとれるようになれば、実際のトラブルは避けることができるから、というのです。

でも、この過程が理解できない人にとっては、不適切な行動に見えることも事実ではないでしょうか。特に、「よく見てほしい」「楽しんでほしい」「集中してほしい」時に、当の本人は懸命な努力によって真逆の行動をとっているとしたら、「私のイチゴ!」事件にはならないとしても、良い結果といえるでしょうか。

では、真の解決の手がかりとはどんなものでしょうか。ニキさんによると、自分の思考パターンや行動パターンは、あまりにも当たり前なので、気づくのが難しく、指摘されても理解できないのですが、他の人の事例(態度・行動・思考)に触れると、「もしかして、コレのこと?」とわが身に置き換えて気づくことが出来たのだそうです。やはり、周囲の人に相談し、アドバイスを得て、ゆっくりと自覚していく中で、協力して改善していくことが大切なのではないでしょうか?

どうぞ、周りの方は簡単に決めつけてあきらめず、ASDタイプの「ゆっくりと見入る」事情をわきまえた隣人でいてください。「イチゴ現象」の特性を持っている方は、当人も周囲も大変です。だからこそ、理解しあう機会をぜひ大切になさってください。



文・金武育子
(株)沖縄発達支援研究センター代表
(株)おきなわedu取締役


きん・いくこ/1970年、那覇市首里生まれ。10代の2人の息子を通して人生と向き合う中年期クライシス体感中。臨床心理士・国際交流分析士。大学講師、office育子を経て、現職。好きな言葉は「人は必ず発達する」「人間、この未知なるもの」

記事に関する問い合わせは、odssc.okinawa@gmail.com

これまでの記事はこちらから。


『週刊ほ〜むぷらざ』 こんな時どうする?大人の発達凸凹⑪
第1906号 2024年2月15日掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
funokinawa編集部

これまでに書いた記事:4188

沖縄の大人女子を応援します。

TOPへ戻る