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2023年10月19日更新

明確な決め事として教える|こんな時どうする?大人の発達凸凹(でこぼこ)⑦

文・金武育子
(株)沖縄発達支援研究センター代表(株)おきなわedu取締役



日常生活での困りごとあるある
  凸 対人スキルと生活スキル 凹  

「決まった時間に起きる」「歯を磨く」「髪をとかす」「清潔な服を着る」といった日常における基本的なこと、できていますか? 発達の凸凹がある方の中には、このような日常生活における基本的な行動が苦手な方がいます。


なぜ、基本的なことがうまくいかないの?

発達の凸凹がある方は、多くの人が成長する上で特に意識せずに身に着けていく成人期に必要なスキル(技術や技能)、すなわち「生活スキル」が身に付いていないことが多いようです。高学歴の人でも、上記のような日常生活に当然必要な基本的な事柄ができないことがあります。

表1に示したように、就職して社会人になると教えてもらうのができないような基本的なこと、知らない・できないと生活していく上でとても困ることが、身に付いていないのです。このような発達の凸凹がある方にとって、人との関係性を学ぶ「対人スキル」を理解するのはとても難しいことが最近、認識されるようになりました。




どうすればいいの?
近年、「対人スキル」を教えるよりも、人と接触しなくても生活できるように「生活スキル」を教えることが、より重要であると考えられるようになりました(梅永雄二著『よくわかる大人のアスペルガー』参照)。

「生活スキル」を教える時は、言葉ではなく文字で書く方が伝わりやすく、「ドアを開けっぱなしにしない」という否定形ではなく、「ドアは必ず閉める」といった肯定的な言葉で書くようにするとより効果的だそうです。さらに、「生活スキル」は、大人になってからではなく学童期から教えていくことが望ましいと言われています。


 

      凸 明確な決め事として教える 凹       


対人スキルは「マナーとルール」に置き換え

発達に凸凹のある方たちには、「対人スキル」を教えるよりも、「マナーとルール」として教える方が理解しやすいようです。

例えば対人スキルなら「誰かに手伝ってもらったら、感謝の気持ち(意味)を込めてお礼を言う」と教えますが、「マナーとルール」では「誰かに手伝ってもらったらお礼を言う」と明確な決め事として教えます。抽象的なことを含めない方が理解しやすいからです。表2に「オアシス標語」を示しました。職場でのあいさつや対人関係に関しては、「マナーとルール」として教える方が効果的なのです。




困ったへの対処法

表2で職場での「オアシスルール」を示しました。職場でのあいさつや対人関係について「マナーとルール」として分かりやすく示して教えることで、苦手な事への対処法を身に付けやすくなります。

また、当事者の自伝から学ぶことも有益です。発達の凸凹がある方、彼らの世界に関心をお持ちの皆さんにお勧めの本を表3に紹介します。中でもニキ・リンコさんの著書は一般の方にも読みやすく、発達の凸凹がある方の自己理解にも、周囲の方の理解にも大変役立つ逸品です。また、個人的には、テンプルさんの功績、幼い頃から背表紙を見ていたドナ・ウィリアムズさんの著作は、新しい扉を開いてくれるものでした。ぜひ一度お手に取っていただけると、発達凸凹がある方の世界に近づくことができると思います。







文・金武育子
(株)沖縄発達支援研究センター代表
(株)おきなわedu取締役


きん・いくこ/1970年、那覇市首里生まれ。
10代の2人の息子を通して人生と向き合う中年期クライシス体感中。
臨床心理士・国際交流分析士。大学講師、office育子を経て、現職。
好きな言葉は「人は必ず発達する」「人間、この未知なるもの」。

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『週刊ほ〜むぷらざ』 こんな時どうする?大人の発達凸凹⑦   
第1889号 2023年10月19日掲載

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