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2024年5月16日更新

障がい者の避難どうする?|災害は平等、被害は不平等|つらくない介護を(7)

4月3日、台湾付近を震源とした地震があり、沖縄県内に津波警報が発令された。各地で車避難による混乱が発生。多くの課題も浮き彫りになった。障がい者、高齢者、乳幼児など避難行動で支援が必要な人やその家族の防災について、識者に話を聞いた。

障がい者の避難どうする?

災害は平等、被害は不平等



防災の基本はコミュニケーション作り

新城格(いたる)さん/日本防災士会沖縄県支部顧問。元警察官。地元自治会で自主防災会を設立。広報誌を発行するなど地域の防災に関する意識啓発に取り組む

災害時を想定し家族で話し合いを

喜納剛さん/CAREPLAN RESPO代表。主任介護支援専門員。沖縄県介護支援専門員協会理事。災害支援介護支援専門員。防災士。沖縄県災害派遣福祉チーム員


―前回の津波避難警報発令時に見えた課題とは?

新城 私が住んでいる西原町の高台では、低地帯からの避難車両で自宅前が大渋滞。近くにある結婚式場の広い駐車場も満車になり、障がい者を乗せた車が逆走する事態もありました。弱者を優先的に避難させる、東日本大震災の教訓が生かされていないことを残念に思いました。

喜納 沖縄市のデイサービス職員が低地帯に住む利用者の避難支援に行き、渋滞に巻き込まれた事例があった他、多くの施設で、夜間やエレベーターが使えなくなったときの避難に関する課題が見えてきました。

ある地域包括支援センターでは「なんで助けにこなかったのか」と苦情の電話があったそうですが、災害時は支援者も被災者になります。支援を必要とする人や家族も、自分のいる場所で、どのような災害が想定されているかを知り、どう避難するかを話し合い、考えておく必要があります。

新城 近くにある避難場所はどこか、日頃からシミュレーションしておくことはとても大事です。防災は、地域を知ることとコミュニケーション作りが基本。コロナ禍に多くの自治体が防災活動を停止したままなので、その再開が急務です。

また、多くの市町村で支援を必要とする人が避難する「指定福祉避難所」の設置が進んでいないのも大きな課題です。災害対策は「行政の知らせる努力」と「住民の知る努力」が重要。行政は、指定避難場所や指定避難所を市民に提供する義務があり、住民も地域の防災訓練に参加して、日頃から情報収集に努めることが必要です。

北谷町が避難行動要支援者名簿と個別避難計画を本人の同意なしに外部提供できる条例を制定しました。他市町村も取り組んでほしいと思います。

喜納 災害関連の研修で聞く「災害は平等に来ても、被害は不平等」という言葉。支援を必要とする人がより深刻な被害に陥りやすい。でも、コミュニティー力は防災力になることを熊本地震の支援で知りました。小さな地域こそ、声を掛け合い、早い避難ができていて感動しました。

新城 災害時だと、「要支援者の情報」もとても大事になりますね。名前などの基本情報や病歴、服用薬、かかりつけ医、アレルギーなどの情報を記載した「救急医療情報キット」を冷蔵庫に入れておいて、そのことを目立つ場所に表示しておくといいと思います。

喜納 前回の津波避難警報発令時は課題が多かったのですが、一方で前向きな発見もありました。有料老人ホームの職員が外で建物内へと避難誘導したり、病院がトイレや水の提供をしたり、自ら安全な場所へ早めに避難した要支援者もいました。改めて、平時に避難行動について計画を立てておくことが大切だと感じました。

介護や福祉の事業所は、事業の継続で救える命が増えることをしっかり意識してほしい。職業柄、人を助けたいという思いが強いと思いますが、自らの命を危険にさらすことは、その後、多くの命を救えなくなる。地域を知り、話し合うことにぜひ取り組んでほしい。

また、災害支援介護支援専門員や防災士の仲間ももっと増えてほしいと願っています。
 

新城さんが住む西原では、低地帯から高台に向け避難しようとした車で大渋滞が発生。「災害時は徒歩避難が原則。東日本大震災時、渋滞によって逃げ遅れたという教訓が生かされていなかった。避難のルール作りは緊急の課題」と警鐘を鳴らす=写真は新城さん提供


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取材/赤嶺初美(ライター)
毎週木曜日発行・週刊ほ〜むぷらざ
「第1919号 2024年05月16日紙面から掲載」

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