健康
2025年8月14日更新
その症状は年のせい? 心臓が衰える心不全|人生100年‼︎ココカラ健康長寿⑤
息切れや動悸、胸が痛むことがありませんか? 心不全や虚血性心疾患の兆候かもしれません。症状の中には胸以外の箇所が痛むこともあり、心臓の病気と気づかないケースも。専門家に詳しい症状や原因、予防について聞きました。

心不全の原因の一つとして狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患がある。狭心症が進行して心筋梗塞になると心臓の機能回復は難しくなる。友愛医療センターの循環器内科部長、嘉数真教(まさのり)医師は「肥満や生活習慣病が病気を発症する原因。健康で長生きするためにも、生活習慣の改善と心疾患の早期発見・適切な治療が大切です」と呼び掛ける。
症状に気づいて 適切なケアを
教えてくれたのは

社会医療法人 友愛会
友愛医療センター
循環器内科 部長
嘉数 真教さん
自治医科大学卒。日本循環器学会循環器専門医。専門分野は、主に心筋梗塞や狭心症、閉塞性動脈硬化症などに対する血管内治療。弁膜症に対するカテーテル治療

心 不全とはさまざまな原因で心臓の機能が低下し、体に十分な血液を送り出せなくなった状態のことです。だんだん悪化していって入退院を繰り返し健康寿命を縮める恐れがあります。虚血性心疾患や弁膜症、不整脈、心筋症などの心臓の病気が主な原因です。
原因の一つである虚血性心疾患は、心臓の筋肉(心筋)に血液を送る冠動脈の血流が悪くなる病気で、冠動脈が狭く(狭窄/きょうさく)なる「狭心症」と、冠動脈が完全に詰まる「心筋梗塞」があります。心筋梗塞になると心筋に必要な酸素や栄養を送れず、心筋が壊死(えし)して心臓の機能が損なわれ、命を落とす危険性があります。

虚血性心疾患の主な原因は動脈硬化で、血中のLDLコレステロールが血管の壁に入り込むことでプラークという塊ができて血管が狭くなっていきます=下図参照。動脈硬化の危険因子は主に高血圧、糖尿病、脂質異常、喫煙、年齢・家族歴。肥満は高血圧などの生活習慣病のリスクを高めるだけでなく、冠動脈の周辺に脂肪がつき過ぎて炎症を引き起こし冠動脈の狭窄を促すことが分かってきました。
心不全の高齢者は年々増え続けています。健康で長生きするためにも、生活習慣の改善と心不全や虚血性心疾患の早期発見・適切な治療が大切です。


息 切れ、動悸、顔や手足のむくみ、体重増加などが心不全の症状です。虚血性心疾患は息切れや動悸のほか、胸の痛みなどがあります。狭心症の場合は必ずしも胸が痛むとは限りません。圧迫される、押される感じがするなど人によってさまざまです。また、放散痛といって、みぞおちや肩、背中、顎、歯茎など心臓から離れた箇所が痛むこともあり、狭心症の悪化と気づかないこともあります。
狭心症の段階だと健康診断では異常が見つかりにくく、症状に早めに気づいて適切なケアすることが心筋梗塞や心不全の予防につながります。症状が繰り返し起こるほか、普段はなんともないのにジョギングや坂道を上がった時など特定の状況で症状が出る場合、狭心症の可能性があります。また、症状が出るのが早くなったり、治まるのが遅くなったりすれば悪化のサインです。


予 防には適正体重の維持と生活習慣病に気をつけること、特にLDLコレステロールと血圧の管理が大事です。具体的な数値としては、LDLコレステロールは140mg/dl未満を目標に。血圧は高血圧ガイドライン(2019年版)の降圧目標を基準に、医療機関で測定される診察室血圧が130/80mmHg未満、自宅で測定する家庭血圧が125/75mmHg未満を目標にするといいでしょう=下図参照。

減量や生活習慣病の予防には、運動習慣も欠かせません。ウオーキングなどの有酸素運動が効果的です。ポイントはゆっくり歩くのではなく、時速5㌔ほどの早歩きで20分以上続けること。週に20㌔歩くことを目標にするといいでしょう。運動をすると血管内にある内皮細胞からNO(一酸化窒素)が分泌され、血管を広げる効果もあります。
足の筋肉、特にふくらはぎを鍛えることも重要です。心臓から体中に送られた血液は、体の筋肉の働きでまた心臓に送り返されます。座ったままでもかかとを上げ下げするだけで筋肉が動き、血液の循環が良くなります=下図参照。また、ストレッチも血流改善に効果的。特に太ももなどの大きな筋肉をほぐすことで、手足の末梢(まっしょう)血管まで血流が良くなります。


心 筋梗塞によって心筋の一部が壊死して機能が衰えると、正常な心筋もそれに合わせて収縮力が弱くなる「リモデリング」という現象が起き、全体的に心臓が弱くなってしまいます。再発や再入院をしないようにするために薬物療法とともに重要なのが心臓リハビリです。心臓病の患者に食事指導や運動指導などをトータルで行い、適切な運動で心臓の機能回復を図ります。
運動療法にあたっては、心肺運動負荷試験(CPX)という検査で患者の心臓の機能に合わせた適切な運動の量と強度を調べます。
心不全の患者には体重管理も大切です。心不全になると体内に水分がたまりやすくなり、体重の増加は悪化のサインになります。退院時の体重を基準にして、増えた体重によっては塩分制限を強化するほか、かかりつけ医に相談してもらうようにしています。
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取材/池原拓
毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」人生100年!!ココカラ健康長寿⑤
第1983号 2025年08月14日紙面から掲載