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2023年4月13日更新
[沖縄]専門家に聞く 今どきの相続のこと
財産の多い少ないに関わらず家族が相続でもめるケースが少なくない。琉球銀行の資産承継担当上席調査役の稲嶺盛一郎さんは「財産を円滑に承継するにはどんな方法が自分に合っているのか、実際に相続が発生する前に考えて、家族と話し合ったほうがいい」と指摘。その選択肢の一つである家族信託について聞いた。
専門家に聞く
今どきの相続のこと
家族信託も一つの備え
相続でもめる原因としては、本人が遺言書などで財産をどう分けるか意思を明確にしていないことが挙げられる。琉球銀行の資産承継担当上席調査役、稲嶺盛一郎さんは「遺言書がない場合、相続人同士で財産をどう分けるか話し合う(遺産分割協議)必要がある。特に不動産は現金などと比べて分け方が難しく、なかなかお互いが納得のいくように分けられずもめるケースも少なくない」と説明する。一方、本人の意志が明確ならそれを尊重して話がまとまりやすいという。
稲嶺盛一郎さん
琉球銀行
営業統括部 資産承継チーム
資産承継担当 上席調査役
いなみね・せいいちろう/家族信託専門士。事業承継シニアエキスパート
柔軟に財産を管理
少子高齢化が進むなかで近年は「家族信託」の需要も高まっている。家族信託とは、自身の財産の一部を家族など信頼できる人に預けて管理してもらう制度。例えば、自身(委託者)が認知症になったり、施設に入所したり、要介護で移動が困難になっても、家族(受託者)が代わりに預金を下ろして自身(受益者)の生活費などにあてたり、自身が所有するアパートの賃貸契約を家族が代わりに結んだりできるなどあらかじめ取り決めたルールのもとで財産を管理できる。
稲嶺さんは「『この土地は先祖代々の土地だから売らないで』など、財産の管理の仕方を柔軟に決めることができます。自身が亡くなった時に、預けた財産を誰がどのように受け継ぐか決めておけることもこの制度の利点」と指摘する。
口座凍結にも対応
本人が亡くなった時に銀行口座は凍結される。遺言書があれば円滑に預金の解約や引き出しが可能だが、遺言書がない場合は遺産分割協議がまとまるまでの間、預金の引き出しが困難になる。そんな時でも家族信託で管理を任されている預金に関しては、家族が本人の代わりに葬儀代などを引き出すことができる。また、本人が亡くなった場合に次の受益者を配偶者に設定しておけば、その配偶者のために生活費などを引き出すこともできる。琉球銀行では、お金の管理に特化した家族信託のサービスも提供している。
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お金の信託」提供開始
琉球銀行はことし2月13日から「お金の信託」のサービスを開始した。これは、家族信託で扱う財産を金銭に限定して、自身(委託者)のお金の一部を、家族など信頼できる人(受託者)が専用口座で管理するもの。稲嶺盛一郎さんは「管理する財産をお金に限定することで、手続きにかかる時間や費用を通常よりも抑えることができるのがメリットです」と説明する。
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元気な時に備えを
家族信託を結ぶには、どの財産を誰がどう扱うか、家族でルールを決めたり、公証役場で調印したりと、手続きには時間と労力、費用がかかる。「元気な時に円滑に相続を行うためにどんな方法が自分には合っているのか、家族と話し合ったほうがいいでしょう」と稲嶺さんはアドバイス。
とはいえ、遺言書の作成や家族信託の手続きなど相続に関することは専門的な知識を要するので、誰に相談したらいいのか分からなかったり、自身の財産を整理してどう分けるべきか悩む人も多いだろう。
稲嶺さんは「当行では、相続のお悩みに関する相談を各支店の窓口で受け付けています。その方にあった相続の方法を一緒に考え、遺言書作成や家族信託、生前贈与などの実行もサポートいたします。地域の金融機関として県民の皆さまに貢献できればと思います」と呼び掛けた。
編集/池原拓
『週刊ほ〜むぷらざ』専門家に聞く 今どきの相続のこと
第1862号 2023年4月13日掲載