ヘルスケア
2025年9月4日更新
広まる人工関節手術支援ロボット|身近な病気もっと知ろう 家族の医学手帳(135)
家族の健康が気がかりな「ほーむさん」が専門のドクターを訪ね、気になる病気について聞くこのコーナー。今回から3回にわたり、整形外科治療の新たな選択肢について、医療法人八重瀬会理事長で同仁病院院長の山内裕樹先生に話を聞きます。
整形外科治療の新たな選択肢①
広まる人工関節手術支援ロボット
中高年女性に多い変形性股関節症や変形性膝関節症は、進行すると最終的には人工関節に置き換える手術が必要になります。近年、活躍しているのが、整形外科治療の新たな選択肢の一つである手術支援ロボットです。当院が主に使用しているのは、日本で初めて認可された整形外科専用の人工関節に特化したロボットです。2020年に沖縄では初めて当院が導入しましたが、日本全国ですでに100台以上が導入されており、3万7千件を超える症例で使用されています。世界では2500台以上導入され、180万件の症例実績があります。
どんなに熟練した医師の手術でも多少のズレは生じるものですが、このロボットの利用により非常に正確な手術を行うことができます。実際に私が担当した手術での精度は、自分の手で行っていた際のズレは95%が3度以内、1ミリ以内でしたが、ロボットでは99%が1度以内、0.5ミリ以内にまで小さくなりました。手術部位の組織への刺激や負担も最小限となるため、術後の回復も早くなるというメリットがあります。
手術時の入院は約2週間、術後のリハビリは約3カ月かけて行います。手術前は歩行や立ったままの家事、身をかがめての足の爪切りや靴下をはく動作などができなかった方のほとんどが、股関節の可動域の制限なく日常生活を送れるようになり、痛みも改善します。
次回は、手術支援ロボットでの人工膝関節置換術について聞きます。
広まる人工関節手術支援ロボット
人工股関節置換術にも
ズレを最小限に
患者負担を軽減
Q1 手術支援ロボットでの人工関節手術とは?
中高年女性に多い変形性股関節症や変形性膝関節症は、進行すると最終的には人工関節に置き換える手術が必要になります。近年、活躍しているのが、整形外科治療の新たな選択肢の一つである手術支援ロボットです。当院が主に使用しているのは、日本で初めて認可された整形外科専用の人工関節に特化したロボットです。2020年に沖縄では初めて当院が導入しましたが、日本全国ですでに100台以上が導入されており、3万7千件を超える症例で使用されています。世界では2500台以上導入され、180万件の症例実績があります。どんなに熟練した医師の手術でも多少のズレは生じるものですが、このロボットの利用により非常に正確な手術を行うことができます。実際に私が担当した手術での精度は、自分の手で行っていた際のズレは95%が3度以内、1ミリ以内でしたが、ロボットでは99%が1度以内、0.5ミリ以内にまで小さくなりました。手術部位の組織への刺激や負担も最小限となるため、術後の回復も早くなるというメリットがあります。
Q2 変形性股関節症の手術にも?
アジア人の女性は生まれつき股関節の骨盤側の受け皿が浅いため軟骨がすり減りやすい人が少なくありません。さらに加齢や肥満などによって軟骨のすり減りが進むと、変形性股関節症になることがあります。進行すれば日常的な活動が困難になり、最終的には人工関節に置き換える手術が必要となります。患者のおよそ8割は女性で、多くは60代から70代ですが、当院では人工股関節に置き換える手術のうち半数を超える年間約50例の手術で手術支援ロボットを利用しており、すでに300人ほどの方がこの手術を受けています。人工股関節置換術の流れ
人工股関節置換術では、すり減った股関節の傷んだ部分を取り除き、人工関節に置き換えます。その際、削る部分を最小限にとどめ、人工関節を設置する角度を理想的な状態にするナビゲーションを担うのが、手術支援ロボットの役割です。
Q3 手術前後のスケジュールは?
手術支援ロボットによる人工股関節置換術では、手術の約1カ月前にCT画像を撮影し、そのデータをもとに患部の3Dモデルを作成して、ロボットが理想的な位置に人工関節を設置するナビゲーションを行えるようにプランニングして手術に臨みます。CTには映らない軟部組織の状態によって手術中に軌道修正をする際も、ロボットがその場で対応します。手術時の入院は約2週間、術後のリハビリは約3カ月かけて行います。手術前は歩行や立ったままの家事、身をかがめての足の爪切りや靴下をはく動作などができなかった方のほとんどが、股関節の可動域の制限なく日常生活を送れるようになり、痛みも改善します。
◆ ◆ ◆
次回は、手術支援ロボットでの人工膝関節置換術について聞きます。

山内裕樹さん/医療法人八重瀬会理事長、同仁病院院長
やまうち ゆうき/医療法人八重瀬会理事長、同仁病院院長
医師、医学博士。東京科学大学臨床教授。日本股関節学会、日本人工関節学会の評議員。日本整形外科学会、日本リハビリテーション学会、日本リウマチ学会、日本脊椎髄病学会の指導医。日本骨粗鬆(しょう)症学会認定医など。モットーは「正確な診断、適切な治療、良質な対応」。
医療法人八重瀬会 同仁病院
電話=098-876-2212
沖縄県浦添市城間1丁目37番12号
文・堀基子(ライター)
『週刊ほ〜むぷらざ』 家族の医学手帳<135>
第1986号 2025年09月04日掲載