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2024年11月10日更新

「いつ、どこで?」と冷静に事実確認から|こんな時どうする?大人の発達凸凹(でこぼこ)⑲

文・金武育子
(株)沖縄発達支援研究センター代表(株)おきなわedu取締役



発達凸凹の困りごとあるある
  時間や空間の認知のズレ  
 

トラブルが起こりやすい発達の凸凹について、脳の機能を考えた時、発達凸凹の「認知」がとても特徴的なケースを思い出しました。大人の発達凸凹の認知理解に役立ちますのでご紹介します。


自覚なく記憶が再生

お子さんの発達支援を中心に活動していたころに出会ったY君のケースです。Y君の発達凸凹は、時間や空間の認知のズレと被害者意識が特徴的でした。具体的に言うと、意地悪な友だちにひどい目に遭わされた過去の出来事を、ついさっき体験したかのように、臨場感を持って訴えてきたのです。もちろん本人には全く悪気はありません。

このY君のように、お子さんに「僕、いじめられてるんだ」と言われると、周囲の大人は「誰に?」を聞き出すことに夢中になって、「いつ? どこで? どのように?」という客観的な事実をないがしろにしてしまうことはありませんか? 発達凸凹の特性があるお子さんの場合、「再生である」との自覚なく、記憶が現実と区別がつかないほど生々しく再生されることがあります。その点を理解しておくと、接し方を考える際の助けになります。

私がこのケースにお会いする時、気を付けていたのは、「いじめられた」という出来事に飛びつかず、まずはもう一度客観的な質問から始めることです。「それはいつのことですか?」という客感的質問から始めるので、本人も客観的に捉えるようになり、「いじめられてるのかなぁ? という感じです」と答えてくれるようになって、何が起こったのか一緒に考えられるようになりました。
 
 

    「いつ、どこで?」と冷静に事実確認から    


大人は大ごとに
なりやすい


「○○○された」という問題に対して、われわれは事実確認の重要性を認識しつつも、「言ってくれた」からには「どうにかしなければ」と考えて、つい客観的な事実確認を怠ってしまいがちです。

では大人が同じように訴えて来た場合は、どうでしょうか? 同じく「〇〇〇された」という課題は、聞く側を慌てさせるのではないでしょうか。加えて大人なので、当然客観的事実だと思い込んでしまい、より大ごとになるわけです。


何が起こって
いるのか?


彼らに何が起こっているのでしょうか? 

Y君の事例で、丁寧に事実確認をしていくと、訴えが変化し、最終的には彼自身の思い込みであることが確認できました。

図1に示した認知の図をご覧ください。発達凸凹の特性のある人が外界からの刺激を受け取る際、受け取った刺激を処理する際に認知のズレが生じる様です。これは、大人であるほど記憶の影響を大きく受けます。そしてこの認知のズレは、それまでの経験から「〇〇なのではないか」というマイナスに偏った予想を持ちやすいことや、時間や空間の認知にゆがみが生じやすいことと関係していそうなのです。



どうすればいい?

認知とは、自分の外側にある事物、起こっている現象をどのように理解するかといった、外部からは見えない思考や感情、つまり内面で起こっている活動のことであり、全ての過程に「記憶」が大きく影響しています。

子ども時代なら「落ち着いて事実確認から」と心掛けて向き合えば、子ども自身も冷静に客観的に事実を確認していくことができますので、じっくり付き合いましょう。

大人の場合、ネガティブ思考が身についている可能性が高いので、頭ごなしに反応せず、よりじっくりと向き合う必要があるでしょう。周囲の人がじっくり事実確認を行い、本人も客観的事実を認識できる経験を積むことで、冷静な判断がしやすくなります。

「あれ?」と思ったら、まずは立ち止まってみることが大切です。



文・金武育子
(株)沖縄発達支援研究センター代表
(株)おきなわedu取締役

きん・いくこ/1970年、那覇市首里生まれ。10代の2人の息子を通して人生と向き合う中年期クライシス体感中。臨床心理士・国際交流分析士。大学講師、office育子を経て、現職。好きな言葉は「人は必ず発達する」「人間、この未知なるもの」

記事に関する問い合わせは、odssc.okinawa@gmail.com

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『週刊ほ〜むぷらざ』 こんな時どうする?大人の発達凸凹⑱
第1941号 2024年10月17日掲載

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