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2022年10月6日更新
[沖縄]10月は乳がん月間|治療とキャリアの両立
10月は乳がん月間。国内では9人に1人が罹患(りかん)するとされている。女性の活躍推進が叫ばれる昨今、キャリアアップをあきらめることなく、乳がん治療と仕事を両立させるためにはどうすればいいか、体験者や医師、保険などの専門家に聞いた。
収入確保が選択肢広げ
40歳と46歳で2度、乳がんに罹患。治療と仕事を両立し、現在は支店長と責任あるポストを担う㈱沖縄銀行田原支店長の伊敷稚子さん(48)。「職場や家族の理解、信頼できる医師との出会いで働き方や治療法が選べたこと、保険で経済的負担を軽くできたことが大きい」と話す。伊敷稚子さん
おきなわフィナンシャルグループ
(株)沖縄銀行田原支店 支店長
いしき・わかこ/1996年沖縄銀行入行。40歳と46歳のとき、乳がんに罹患。休職や短時間勤務など職場の制度を使いながら治療と仕事を両立。現在はホルモン療法を受けながら、支店長として活躍。プライベートでは3人の母。
「2回とも自覚症状は全くなかった」と伊敷さん。最初の乳がんは8年前。職場で受ける人間ドックに追加したマンモグラフィー検査で見つかった。超早期がんで、放射線治療と部分切除、ホルモン剤治療を受けた。
その6年後、定期検診で同じ場所に違う種類のがんが見つかった。「増殖スピードの速いタイプで、主治医が早期発見し、すぐ治療できて良かった」と話す。2回目は抗がん剤治療の後、最新の投薬治療も受け、乳房全摘手術を行い、治癒。ホルモン剤治療は現在も続けている。
「最初はなぜ私がとショックだった。当時は人事部にいて仕事にもやりがいを感じていたし、キャリアアップも目指していた。家には幼い3人の子どももいて、治療しながらやっていけるのか心配だった」と伊敷さん。それでも乗り越えられたのは「職場の制度で働き方を選べたことや上司や仲間、家族の理解や励ましがあったこと、信頼できる医師と治療法を選べたこと、その治療費や生活費の経済的な心配や負担を保険が軽くしてくれたことが大きい」と語る。
働き方を選ぶ
伊敷さんは、最初の乳がん治療で3カ月間、2回目には2カ月余り休職。復職後も勤務時間を短くし、体を少しずつ慣らしていくようにした。特にコロナ禍のときは、自宅での時短勤務を会社がサポート。「治療と仕事の両立をこのように頑張れたのは職場の環境も大きかった」と感謝する。
「職場の理解を得るためにコミュニケーションは大事」と伊敷さん。病気を隠したことで余計な心配を掛けた反省からカミングアウトしたところ、周囲からいろいろな情報や意見を聞くようになった。「一人で悩むより、いろいろなアドバイスを聞いて価値観と選択肢を広げ、最善な方法を選べばいいんだなと思った」と話す。ある上司から、「仕事の代わりはいても母親の代わりはいない。制度があるんだから、しっかり休んだ方がいい」と言われ、休職の決断ができた。
保険による経済的な負担軽減も大きな支えとなった。乳がん治療は通院治療が一般的で長期にわたることが多い。伊敷さんは30代のころ加入したがん保険で、「治療費だけでなく、がん診断時に一時金としてまとまったお金が給付されたので、当面の生活費の工面ができ治療に向き合うことができた」と話す。2回目の治療では、最新の投薬治療も選択した。「1回8万円の18回と高額だったが、保険で毎月5万円分を補填できたので、その治療を選択できた」と話す。
納得した道を
闘病や家族の介護などでキャリアを中断する女性は多い。「状況や考え方は人それぞれだが、大事なのは自分がどうしたいかだと思う。選択肢は一つじゃない。どれも間違いではない。その人らしく、納得した道を選んでほしい」と伊敷さん。
「最初は私もつらかったし、職場で私が居る意味があるのか悩むこともあった。私は仕事を続けたことで物事をポジティブに捉えることができた。収入やお金のゆとりが心のゆとりにつながった。いろいろなサポートを受けながら仕事が続けられて本当に良かった。今後も後輩たちの励みになれるような存在でありたい」と笑顔を見せた。
伊敷さんの「コレがあったから仕事を続けられた!」
①働き方が選べた/休職、時短勤務、在宅勤務など治療や体調により働き方が選べた
②保険の保障/がん保険の女性特約で、乳がんの長期にわたる通院治療、自由診療の選択、収入の減少など経済的な心配を軽減
③ウィッグや補正下着/毛髪の抜け始めは軽くて伸縮性のある帽子を、復職後はウィッグ(約5万円)を利用。乳房全摘後は補正下着(約1~2万円)を利用。治療で肌が敏感になるので肌に優しい素材を選んだ。試着は大事
④専門家に相談/信頼できる乳腺外科の主治医に、治療の選択やスケジュールを相談。職場の保健師や産業医にも働き方や気になることを相談できた
⑤家族の存在/自分の存在意義があるか悩んだ時、当時小学4年だった娘に「足りないところはみんなに埋めてもらって、お母さんができることを頑張ったらいいんじゃない?」と言われ、頑張ろうと思えた。近所に住む義母も家事をサポートしてくれる。家族は心の支え
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取材:赤嶺初美(ライター)
第1835号 2022年10月6日掲載