街のワイン屋さんからおいしい話「フランス研修旅行記vol.04」|fun okinawa~ほーむぷらざ~

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COLUMN

小湾喜智

2019年2月19日更新

街のワイン屋さんからおいしい話「フランス研修旅行記vol.04」

ワイン専門店Cote Dor(コートドール)の小湾喜智さんのコラワイン専門店Cote Dor(コートドール)の小湾喜智さんのコラム vol.05
おいしいワインとそれに関わる楽しいの話をご紹介。 vol.06



前回に引き続き、2018年6月末に訪問したフランス・ブルゴーニュの研修旅行記をつづって参ります。どうぞお付き合いください。
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楽しい学びの研修旅行もあっという間に最終日。
最終日は再度、ジョゼフ・ドルーアン社の畑の見学に行きました。
この畑の見学に関連して、今回は旅行記の最終回なので、専門的になりますが少し踏み込んだ話をしたいと思います。



今回訪問したワイナリー、ジョゼフ・ドルーアン社を特徴づける点の一つが、ブドウ栽培の方法の中で、非常に厳格な有機農法として知られる「ビオディナミ」を採用していること。




このビオディナミは、人智学者のルドルフ・シュタイナーという人物によって提唱された有機・自然農法の一つで、農薬や化学肥料を使用しないことはもちろん、宇宙や天体の動きとの調和、動物や昆虫たちとの共生、独自の天然の調合剤の使用を特徴とします。



天体の動きを加味した農作業や、独自の天然調合剤を使用するという同農法の特徴が、他の有機栽培に比べて優れていることを実証する研究結果はいまだないものの、ビオディナミにより優れたワインを製造する生産者が多数存在します。



提唱者のルドルフ・シュタイナーによれば、人間の五感を超えた高次の感覚(霊的・超感覚的認識)により初めて物事は本質が把握できるとされ、彼は自身の思想を人智学として創始、物質文明に傾倒した近代を批判して人智学の啓蒙(けいもう)に励んだそうです。

そして晩年の1924年、有機栽培における人智学的な理論や基礎付けを求められたシュタイナーが、ドイツの地で8回に及ぶ講義、通称「コーバーヴィッツ農業講座」を実施。これがビオディナミ農法の礎となりました。

この農法の考え方が有志たちにより少しずつ広まったのち、シュタイナーの思想に親しんだマリア・トゥーン(1922~2012)という女性が、農業家が制作した種まきカレンダーを参考にしながら、植物の成長と天体運行の関連性を研究。約10年もの歳月をかけ、月の満ち欠けと種まきの時期、植物の成長度合いに関連性があると結論付け、農作業のタイミングを助言するカレンダーを発行、同農法の普及に寄与しました。

これが現在に続く、ビオディナミ農法発展の流れです。

そして、このビオディナミ農法の支持者を増やす流れをつくることになった大きな流れがもう一つあります。それは、人類の大量生産・大量消費型社会によって生まれた弊害です。

農業面において、人類は約1万年におよぶ歴史の中で、安定的に作物が得られるようにずっと試行錯誤を続けてきたとされていますが、大きな転換期となったのが、1940年代に起こった「緑の革命」でした。

「緑の革命」とは、品種改良による高収量作物の開発や、化学肥料の大量投入などにより、穀物の生産性が飛躍的に向上し、大量増産に成功した農業革命です。これにより人類は、不毛の地でも農作物の大量生産が可能になり、19世紀以降から続く人口爆発を下支えすることができました。

しかしながら、この大量生産による過剰な化学肥料の散布は生態系に悪影響を及ぼし、害虫や雑草の大量発生を引き起こすことになりました。これを解決するために開発されたのが、除草剤や殺菌・殺虫剤といった化学農薬。ご存じの通り、化学肥料や農薬は土壌に残留し、地下水・河川・海洋の水質悪化を始め、さらなる環境問題を引き起こしていくことになるのですが、残念ながら現在に続く農業の大部分では、これらの技術に依存せざるを得なくなっています。

これらの問題を背景に、昨今は「持続可能な開発」をキーワードに、さまざまな業界で環境に配慮した活動を行うのが当然の流れになっていますよね。

まさに、この流れと同じ文脈上にあるのが、ワイン業界におけるビオディナミ農法でもあると言えるのです。ワインも農産物。ビオディナミへの注目の高まりは、ある意味必然とも言えます。

さあ、またもや前置きが長くなりましたが、ジョゼフ・ドルーアン社では、1997年よりこのビオディナミ農法への切り替えを始め、10年の歳月をかけ、2007年にすべての自社管理の畑に同農法の導入を完了したそうです。未来を見据えた、素晴らしい取り組みですね。


ということでやってきました、ドルーアン社の自社畑。この日もまた雲一つない、よい天気!



この写真を見ると、海に囲まれた沖縄の空に、いかに雲が多いかがよく分かります。
雲一つない心地よい天気は、内陸部のブルゴーニュならでは。

畑を散策していると、ブドウ畑でさまざまな作業を行う小型トラクターを発見。よく見ると不思議な形をしています。



この形は、垣根のようなスタイルで植えられたブドウ畑のうねをうまく進みながら作業が出来るようになっているためです。よく考えられていますね。

その後、ブドウ栽培が専門なだけあって、日に焼けたがっちりとした体格が印象的なドルーアン社の栽培責任者の方のお話を拝聴。その中で、初めて生で見せてもらった機具がコチラ。



あらかじめためておいた雨水を使って、ビオディナミ農法に用いる調合剤をつくる器具です。造りは至ってシンプルで、電動で雨水と原料を攪拌(かくはん)する仕組み。
この器具を使って出来た調合剤入りの雨水を畑にまく様子がコチラ。



ホースの先で8の字を描くようにしながらうねを歩き、畑に調合剤入りの雨水をまきます。
しかし、これだけで本当に効果があるの??というほど、微量。
いまだはっきりとメカニズムが解明されていない、けれども、出来上がるワインは自然でおいしい。うん、なんだかとても神秘的。おいしいし地球に優しいのだから、良しとしとこう。

そんな感じで、自分で勝手に納得したところで、最終日の研修も無事に終了。
研修終了後は、研修に参加した皆そろって、ドルーアン社の敷地内のガーデンで会食。



これまでの旅程を振り返りながら、ドルーアン社のワインで何度も杯を重ね、夜が更けていきました。



そして例のごとく、二日酔いの頭痛で目が覚めた翌日。

付きっきりで案内してくれたジョゼフ・ドルーアン社のスタッフに感謝と惜別の言葉を伝えたのち、シャルル・ド・ゴール空港に到着。

せっかくなので、空港内のワイン売り場を散策。



ロゼワインのフェアが開催されてました。どれもおいしそう。




いよいよ所持金が底を尽きかけたため、オシャンティーなシャンパーニュとキャビアのペアリングが楽しめるお店に行くのを泣く泣く断念し、日本行の飛行機に搭乗。

13時間のフライトを経て、無事に日本到着!

夜20時頃に羽田空港に到着後、モノレールに揺られて30分。降車したのち、ごくわずかな所持金を持ちながら、ふらふらと吸い寄せられるかのように自然と足が向いたのは……



ラーメン屋さん!

久しぶりに味わう香ばしいしょうゆの風味と、サッ〇ロビールのキレのある味わいに感銘を受けながら、一人で打ち上げ。
こうして、実りある研修旅行は幕を閉じたのでした。

ということで、4回に渡りつづって参りましたフランス旅行記はここまで!
お付き合いいただき、ありがとうございました。
またフランスに行ける機会をたのしみに、ここ沖縄で一生懸命、造り手の思いが詰まったおいしいワインを販売して参ります!





 

<ワイン専門店Cote Dorの小湾喜智さんのコラム>


 

この記事のキュレーター

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小湾喜智

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ワイン専門店 コートドール勤務
(社)日本ソムリエ協会認定 ソムリエ
(社)日本ソムリエ協会認定 SAKE DIPLOMA
S.S.I(日本酒サービス研究会)認定 唎酒師
FCAJ(日本フードコーディネーター協会)認定 フードコーディネーター3級

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