小湾喜智
2018年7月30日更新
街のワイン屋さんからおいしい話「フランス研修旅行記 vol.01」
ワイン専門店Cote Dor(コートドール)の小湾喜智さんのコラム vol.03
おいしいワインとそれに関わる楽しいの話をご紹介。
日増しに日差しが強くなり、いよいよ夏本番を迎える今日この頃。皆さま、いかがお過ごしでしょうか。
実はわたくし、6月末にワインの生産大国フランスへ研修旅行に行って参りました。今回から数回に分けて、フランス研修旅行で私が見聞きしたことを本コラムにつづっていきたいと思いますので、どうぞお付き合いください。
今回の研修旅行の目的は、フランスのブルゴーニュ地方でワイン造りを行う「ジョゼフ・ドルーアン社」に訪問し、同社のワイン造りのこだわりや哲学をより深く学ぼうというもの。
まずはそもそもの「ブルゴーニュ」という地域、「ジョゼフ・ドルーアン」という生産者について、簡単にご説明いたしましょう。
いまや世界中のあらゆる国でワイン造りが行われていますが、その中でも別格の存在感を持つのがフランスです。
常に世界1位または2位のワイン生産量(※ワインは農作物のブドウを原料とするため、その年の気候条件によってブドウの生産量すなわちワインの生産量が変動します)を誇り、消費大国であることはもちろん、約6,000年もの間、綿々と受け継がれているワイン製造の歴史の中で、ワイン造りを洗練・発展させた国として、輝かしい功績があります。
そんなフランスの中でも、特に有名なワイン産地として名高いのが、今回私が訪問した「ブルゴーニュ(Bourgognge)」。
フランスが誇るワインの一大銘醸地で、かの地でのワイン造りの歴史はローマ時代にまでさかのぼることが出来ます。特に、今日あるブルゴーニュの名声を築く礎になったのは、12世紀当時のキリスト教の修道士の会派の1つであるシトー派の修道僧たちによって、ブドウ畑の開墾とワイン造りが行われたこと。
ワイン造りの歴史はキリスト教と切っても切り離せない関係にあります。「パンはキリストの肉であり、ワインはキリストの血である」と考えられ、ミサなどのキリスト教の宗教的儀礼にワインが必要であったため、修道院を中心にワイン造りが行わるようになったのです。なお、ブルゴーニュという土地の名前は、14~15世紀にかけて、当時のベルギーやオランダをも支配するに至ったブルゴーニュ大公国が治める土地だったことに由来しています。
ブルゴーニュは、夏に日照量が多く、冬は厳しい寒さを持つ大陸性気候で、ワイン用のブドウ栽培に最適なエリアとされ、この土地ならではの唯一無二のワインが生み出されています。世界で最も高価なワインとして知られる「ロマネ・コンティ」も、実はここブルゴーニュで造られるワインです。
さて、続きましては「ジョゼフ・ドルーアン」社のご紹介。
同社の歴史は古く、1880年に創業、以来130年以上もの間、ドルーアン家による家族経営にこだわり、創業当時から受け継がれる土地やブドウに対する哲学や信念を守り続ける、ブルゴーニュを代表するワイナリーの1つです。
1976年から、ブドウ畑に除草剤などの化学薬品を一切使用せず、1988年には本格的な有機栽培へ転換。さらに同社では、ワイン用ブドウ栽培の業界では非常に厳格な手法として知られる、天体の運行までを加味した有機栽培農法であるビオディナミを取り入れ、ワインを育む土地に最大の敬意を払い、ワイン造りを行っております。
それでは、前置きが長くなってしまいましたが、いよいよ本題のフランス研修旅行に入りましょう。
日付は6月24日。羽田空港の国際線から約13時間かけて、フランスはパリのシャルル・ド・ゴール空港に到着。旅にトラブルはつきもので、到着後すぐにブルゴーニュ地方に移動する予定が狂い、数時間空いたので空港内をブラブラしたのち、近隣のホテルのラウンジでのーんびり。
近くのスーパーをのぞいてみると、農業大国らしくおいしそうなカットフルーツが多数並んでいる他、なんと「ジャパニーズテイスト」と表して餃子(ぎょうざ)が販売されてました。失礼な言い方ですが、ちゃんとそれなりにおいしそうです(笑)。
その他、中華料理のチルド品もありました。
英文を見る限り、「広東風」のようです。フランスのスーパーでも気軽に日本料理(?)と中華料理が楽しめることに驚きつつ、その後数時間かけて、目的地のブルゴーニュに到着。
到着したのは夕方だったので、少しだけ休憩してジョゼフ・ドルーアン社の4代目社長のフレデリック・ドルーアン氏との会食を兼ねたディナーへ。
こちらのフランス人紳士がフレデリック・ドルーアン氏。
ディナー会場はなんと、先方のショップ兼ワインセラーの中に、この日のために特別にセッティングされた趣あるダイニングにて。
ワインショップなので、まわりには同社のワインが所狭しと並んでいます。
ちなみにこの建物は元をたどれば2000年近い歴史を持つそうで、かつては議会場として使われた場所だったそうな。ふぞろいな石造りの壁から、その歴史の重みが感じられます。
フレデリック社長から、ドルーアン家の歴史や今年のブドウの作柄状況などについてお話頂きながら、ディナーがスタート。
全ての料理がおいしかったのですが、特に印象的だったのがこちら。
ニンニクの風味が効いたスープ仕立てのエスカルゴ。スープの上には香ばしく焼かれたシュー生地のようなパンが乗っています。ブルゴーニュはエスカルゴを使用した料理が名物なのですが、スープ仕立てで頂くのは初めての経験。
この料理に合わせて提供してくれたドルーアン社の白ワインにぴったりの相性でした。
こちらはメイン料理の仔牛(こうし)のポアレにジロール茸の春巻き仕立てのようなお料理。こちらも、ものすごく美味。
フランスへ旅行されたご経験がある方はご存知だと思いますが、現地の料理はもちろんとても美味しいものの、1品1品がボリュームたっぷり。
社長の手前、提供されたお料理はすべて完食したのですが、コースの後半からおなかがパンパンに膨れ上がってギブアップ寸前……。
食後酒として提供されたドルーアン社特製の素晴らしい出来栄えのマール(※ブドウの搾りかすでつくる、フランス名産の粕取りブランデー)を胃に流し込み、強いアルコールで消化を助ける手筈(てはず)を整えて、ディナーが終わった後はすぐさまホテルに帰ってベッドにヘッドスライディング。爆睡でした。
次の日から本格的な「ジョゼフ・ドルーアン社」の視察へと入っていきます。
ということで、今回のコラムはここまで!
続きはまた次回にて。どうぞお楽しみに。
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(社)日本ソムリエ協会認定 SAKE DIPLOMA
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