健康
2025年10月9日更新
「ロコモ」の原因と予防、専門医に聞く 進行すると転倒や寝たきりのリスクも|人生100年!!ココカラ健康長寿⑦
ロコモティブ症候群とは、骨や筋肉など体を動かすための器官に障がいが起こり、歩行が困難な状態のこと。進行すると転倒や寝たきりのリスクが高まります。専門家にその原因や予防について聞きました。

ロコモティブ症候群(以下、ロコモ)による移動能力の低下は加齢だけでなく、さまざまな原因で引き起こされる。内科的な病気が関わる場合もあるという。ロコモクリニック南城の院長、上原敏則医師は「歩きづらいと感じたら年のせいと放っておかず、病院で検査をして治療することがロコモ予防につながります。運動を習慣づけ、筋肉と骨を維持することも大事」と話す。
原因を早期発見 歩く力を維持
教えてくれたのは

ロコモクリニック南城
院長 上原敏則さん
日本整形外科学会認定 整形外科専門医。県立那覇病院や県立南部医療センター・こども医療センターに勤務。2015年に同院を開院

運 動器※の障がいのために移動能力が低下した状態をロコモといいます。これは加齢による筋肉や骨の衰えだけでなく、変形性関節症などの病気が原因で引き起こされる可能性があります。移動能力の低下に関わる疾患として多いのは整形外科で扱う運動器の疾患ですが、内科的な疾患(心臓病、脳卒中など)や精神疾患など、幅広い原因で引き起こされます。ほかにも、いわゆる「がんロコモ(がん自体やがんの治療によって運動器に障がいが起こり、移動機能が低下した状態)」といったケースもあります。
「最近動きにくくなった」「歩くのがつらい」と感じた時は、年のせいだと放っておかず、病気が潜んでいないか早めに病院で検査を受けて、原因を突き止めることが重要です。また、本人はロコモに気づいていないことも多いため、ご家族など周りの方も、歩く様子や動きに「いつもと違う」「おかしいな」と感じたら、ぜひ声をかけて受診を促しましょう。下はロコモの兆候を調べるチェックリストなので参考にしてみてくだい。ほかにも、台に座った状態から両足や片足で立ち上がれるかでロコモの進行度合いを測るテストなどがあります。

※運動器とは、人間が立つ、歩く、走る、座るといった運動のために必要な器官の総称。骨、筋肉、関節、軟骨、脊柱の椎間板、神経などで構成される。

転 倒や寝たきりのリスクが高まります。特に転倒は、大腿(だいたい)骨近位部骨折などの大きなけがにつながりやすく、寝たきりの原因になりかねません。転倒を防ぐためには、歩くことに困難を感じて転びそうになるなど自覚症状があるのなら、まずその原因を調べて治療することが第一です。もし転倒したとしても、骨折のリスクを抑えるために日頃の生活習慣によって骨を丈夫にしておくことも大切です。
骨を強くするためのポイントは、まず運動です。骨に刺激を与えることで、骨の代謝が活発になりカルシウムの蓄積を促します。日光浴もカルシウムの吸収を助けるビタミンDの分泌を促します。普段の食事でカルシウムをとることも大事ですが、それよりも摂取したカルシウムを骨にしっかり蓄積するために運動と日光浴を意識しましょう。手っ取り早いのは外に出で歩くことです。日差しの強い昼は避けて朝夕でも構いません。また、かかと落とし=下=も骨に刺激を与える運動として効果的です。車社会の沖縄では生活の中で歩くことが少なくなりがち。気付かないうちにロコモになっていたり、骨が弱っていたりする可能性があります。歩くことを生活の中で意識的に増やしてください。
かかと落とし
①足を肩幅に開いて立つ
②かかとを上げてつま先立ちになり、そのまま「ストン」とかかとを落とす


自 分の体力に合わせて毎日歩くこと、つまり運動を習慣づけることです。腰が曲がって歩きづらいという人も、痛みが伴わないのであれば無理をしない範囲で続けましょう。ただし、腰痛やひざ痛、足裏の痛みなどで歩行が困難な場合は、まず痛みの原因の治療をしましょう。痛みが原因で歩かなくなってしまうとロコモが進行する恐れがあります。扁平(へんぺい)足などで足裏が痛む場合は、医療用インソールを使って痛みの軽減を図るのも一つの方法です。
自宅でできる運動としてはスクワットが下肢の筋力維持として効果的ですが、骨も強くするという意味では、上記の「かかと落とし」もおすすめです。ふくらはぎの筋肉を鍛えつつ、背骨を含めた全身の骨に刺激を与えることができます。足もとに不安定さを感じる人はいすやテーブルに手をついてもいいです。
ストレッチは、筋肉をしなやかにして体の動きがスムーズになり、関節の可動域が広がります。足など一部の箇所だけでなく全身をまんべんなくストレッチするのがポイントです。右で紹介している体操は腰痛予防にもなります。合わせて腹筋や背筋を行うとより効果的です。



取材/池原拓
毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」人生100年!!ココカラ健康長寿⑦
第1991号 2025年10月9日紙面から掲載