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2024年2月1日更新
自筆証書遺言の書き方|ルールを守り曖昧な表現避ける|やってみよう、終活⑪
所有の不動産がある場合、相続後の遺産分割において家族間でトラブルに発展することも。その際に有効なのが「遺言書」。費用がかからず始めやすい「自筆証書遺言」の書き方や作成の際の注意点などを染矢合同事務所の染矢弘芳さんに教えてもらった。
相続人が全員そろって相続財産の分け方を決める遺産分割で最優先されるのは、亡くなった人が残した「遺言」。染矢さんは「遺言書がない場合は、相続人全員で話し合い「遺産分割協議書」を作成することになる。全員の意思の確認が求められ、全員の印鑑証明などそろわないと手続きが進められない。相続人の人数が多かったり、疎遠だったりすると苦労します」と説明する。
沖縄では相続人が県外や移民として海外に住みついていたりと遺産分割がなかなか進まないことも多いという。また、不動産が担保になっていて、相続人の支払い能力に問題があり相続が難しいケースや、5人の相続人で共有財産として話し合ったものの、その中の1人が「結婚したので譲ってほしい」と主張をしたため、足並みがそろわなくなりきょうだい間に亀裂が入ったというケースも。
「遺言書は自分の財産を誰にどのように残したいか、自分の意思や思いを確実に伝えるための大切な手段。残される家族のためにも早めに準備しておくことを勧めます」と力を込める。
保管制度の利用者増え
遺言書には主に公証人と相談して作成する公正証書遺言と遺言者が自分で本文・氏名・日付などを書いて作成する自筆証書遺言がある。「特に自筆証書遺言は、書き方のルールを守り、曖昧な表現は避けるのがポイント。無効になってしまうことのないよう不備なく作成しなくてはならない=左囲み参照」と染矢さん。
また、遺言書を自宅に保管していると、紛失や盗難、偽造や改ざんの恐れがあったり、せっかく書いても発見されなかったりすることがあるので注意が必要。しかし、2020年7月から、法務局で自筆証書遺言書保管制度が開始された。保管料(3900円)で法務局の保管により、改ざん・紛失・隠匿のリスクもなくなり、近年は利用者も増えているという。「書き方など疑問が出た場合は気軽に専門家に相談してほしい」と話した。
自筆証書遺言の書き方例と注意点
〈まずはここをチェック!〉
①必ず本人の手書きでなくてはならない(一部除く)
自筆で作成した遺言書のため、パソコンや代筆で作成したものは無効となる。ただし、財産目録を別紙に分けて記載する場合は、パソコンで内容を作成してもいいが、末尾に署名・押印をすることが必要(下記のように1枚の紙で、財産部分だけをパソコン作成や代筆することは不可)。筆記具やインクの色、紙質などは自由だが、破れにくい紙に黒や紺など読みやすい色で書く方が望ましい。
②誰に何を残すのかをしっかり明記する
土地や建物、預金など分けて記し、「任せる」というように曖昧な表現は避けしっかり明記する。
③遺言書を書いた日付をしっかり明記する
遺言書を作成した日付は、具体的に。「○月吉日」という書き方はしない。
④署名・押印をする
使用する印鑑は認め印でも構わないが、スタンプ印は使えない。
⑤内容の変更や追記は適正な方法で
内容の変更や追記がある場合は、該当箇所が分かるように明示して、変更・追加の内容を書き入れて押印する必要がある。適切な方法で訂正できていない場合は、その変更や追記が無効となる恐れもあるので、状況に応じて書き直しの検討を。
そめや・ひろよし さん/染矢合同事務所。司法書士、行政書士。 電話=098(836)3799
『週刊ほ〜むぷらざ』やってみよう、終活
第1904号・2024年2月1日掲載
この記事のキュレーター
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- 安里則哉
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編集者
日々、課題ばかりですが、取材ではできる限り、対象者の人間性が引き出せたらと思い、仕事に努めています。食べることが大好き。そのためダイエットにも力を入れたところですが、いまだ実現せず(笑)。