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2022年8月4日更新
[沖縄]後悔しない終活③
在宅医療・介護の連携を進める中部地区医師会在宅ゆい丸センター(北谷町)の末永正機副会長(医学博士)は「いざという時、どんな医療や介護を受けたいか、希望を家族に伝えていてほしい」と話す。その手段として、エンディングノートを勧める。
後悔しない「終活」
希望伝えるエンディングノート
いざという時頼れる情報
同センターはエンディングノートを無料配布し、セミナーも開催してきた。社会福祉士の津嘉山愛律子さんは「希望を伝えることは、自分らしく生きることにつながる」と説明する。
エンディングノートには、資産や葬儀・お墓のことなど、さまざまな項目がある。同センターでは突然自分の意思が伝えられなくなった場合に備えて、医療や介護の項目から書き始めることを勧めている。同センターのエンディングノートから、簡易版エンディングノートを掲載=紙面中央の表。関心がある人は、参考にして書いてみてはどうだろう。
末永さんは患者に向き合う中で、本人の意思を確認することの大切さを感じてきた。「意思の表出が困難な状態にある高齢者は、治療や介護に関して自己決定できないことが多い。事前に家族や親しい人と話し合って、自分の意思を伝えておくことが大切」と話す。
認知症で意識がはっきりしなくなった、突然倒れたなど、本人の意思を確認することが難しい場合、残された人が決めることになる。現場で「昔こう言っていた」「いや、私はこう聞いた」など、意見が割れることが多々あるという。「ただでさえストレスがかかる状況の中で、人の生死に関することを決めるのは家族の負担が大きい。本人の意思がはっきりしていると、医療者も支援しやすいし、家族にとっては納得できる材料になり、負担が減るのではないか」。
書くのが大変な場合は、話して意思を確認するだけでもOKだという。看護師の荒川裕紀子さんは「いきなり話題にするのは難しいけれど、近い人がそういう状況になったり、新聞やテレビで見たり、何かきっかけがあると話しやすい。記事がきっかけになるとうれしい」と話した。家族や親戚に会うことが増えるお盆や夏休み。先々について考え、話してみてはどうだろう。
右から、中部地区医師会在宅ゆい丸センターの荒川裕紀子課長、
末永正機副会長、津嘉山愛律子コーディネーター
エンディングノート
エンディングノート書いてみたら
気持ちも家もスッキリ
9年前にエンディングノートを書いたあけみさん(仮名・70歳)に、書いてみて感じたことを聞いた。
退職した後、子どもからエンディングノートというものがあると聞いて、「それはいい。すぐに書こう」と考え、ノートを買ってきてもらいました。項目に沿って書けばいいので、1日で書き終わりました。
「亡くなった後、残された人が手続きなどで大変な思いをした」と聞くことがあり、残される人にとってぜひ必要だなと思ったんです。書いた後は、やるべきことをやったとスッキリした気持ちに。エンディングノートを書き終えて今後の人生を充実させよう、と思うようになりました。また、断捨離の意識が高まって家の整理が進みました。何年も使っていなかった家具や物を手放すことができて家の中もスッキリ。気持ち良く過ごせています。
年を重ねてだんだんと身近で突然亡くなる人が増えてきて、明日が必ず来るとは思えないようになりました。できることは明日に持ち越さず、家事や菜園の手入れ、地域でのボランティア活動といった日々の生活を丁寧に送ることを心がけています。
いったんエンディングノートを書き終えた後に、病歴や子どもの結婚といった変化を書き加えることで、より安心感は増しています。
無料で配布、ダウンロード
中部地区医師会在宅ゆい丸センターでは、中部地区の各市町村でエンディングノートを無料配布している。また、同センターのホームページから無料でダウンロードすることができる。
https://zaitaku.chubu-ishikai.or.jp/wp_root/wp-content/uploads/2019/05/endingnote-a.pdf
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『週刊ほ〜むぷらざ』後悔しない「終活」
第1826号 2022年8月4日掲載