負担が少ない放射線治療｜身近な病気もっと知ろう家族の医学手帳（123）

家族の健康が気がかりな「ほーむさん」が専門のドクターを訪ね、気になる病気について聞くこのコーナー。前立腺がんにスポットを当て、その最新の治療法などについて紹介します。３回目は南部徳洲会病院の放射線治療科医長、眞鍋良彦先生に放射線治療について話を聞きます。

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前立腺がん③

治療効果は手術に匹敵

尿漏れやＥＤのリスクが少ない

Ｑ１放射線治療のメリットは？

前立腺がんの放射線治療は、外科的治療、ホルモン治療と並ぶ３大治療法のひとつで、当院では主にサイバーナイフという特殊な放射線治療装置を使用しています。

放射線治療というと副作用で髪の毛が抜ける、ぐったりしてしまう、吐き気がして食べられなくなるというイメージを持っている方が多いのですが、前立腺がん、特に早期がんに対する放射線治療では髪の毛は抜けませんし、食事もいつも通りです。ゴルフに通いながら治療する方もいるくらいです。

早期の前立腺がんであれば、手術でも、放射線治療でも、いずれも８～９割の方が完治します。放射線治療では外科的手術後に起こることがある尿漏れやＥＤ（勃起障害）といった後遺症のリスクが少ないのが利点です。

一方では再発してしまった場合に対する再照射や手術は難しい場合があり、６０代以下の方は外科的手術と放射線治療、双方のメリット・デメリットを考えて治療を選択されると良いと思います。

Ｑ２どんな治療をするの？

サイバーナイフはピンポイントに前立腺を狙い撃ちすることができ、周囲の正常な組織へのダメージを最小限にとどめます。また、前立腺がんに対する放射線治療はこれまで３０～４０回程度の治療を１カ月半から２カ月かけて行っていたのですが、サイバーナイフになって、たったの５回を２週間の間にできるようになりました。１回の治療時間も２０分ほどなので、通院での治療が可能ですし、北部や離島の方が入院して治療を受ける場合にも入院期間が格段に短くなりました。

なお、サイバーナイフ治療前の準備として、下半身だけの麻酔をかけて前立腺内に照射の目印となる金マーカーを針で挿入し、前立腺と直腸の間に副作用を軽減するための吸収性ゲルを注射する処置を行うため、事前に１～２泊だけ入院する必要があります。

サイバーナイフで放射線を前立腺にピンポイント照射

Ｑ３ホルモン療法を併用することもある？

前立腺がんは、病巣が小さく悪性度が高くない低リスク、病巣がある程度大きく悪性度や前立腺がんの指標となるＰＳＡ値が高い高リスク、その中間にあたる中リスクに分類されます。

当院では中リスクから高リスクの方には治療効果をさらに上げるため、放射線治療する前に半年ほどのホルモン治療をおすすめしています。高リスクの方には放射線治療後も一定期間のホルモン治療を継続することが多いです。

次回は、さらに放射線治療について聞きます。

眞鍋良彦さん／南部徳洲会病院放射線治療科
　　　　　　　医長医学博士

まなべ・よしひこ／名古屋市立大学医学部医学科卒、同大学院医学研究科博士課程修了。２０１７年から南部徳洲会病院放射線治療科に勤務、１９年に同科医長に。日本医学放射線学会／日本放射線腫瘍学会放射線治療専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。モットーは「離島の方にも全国レベルの治療を提供する」。

南部徳洲会病院
電話＝098-998-3221（代）
八重瀬町字外間171-1

文・堀基子（ライター）
『週刊ほ〜むぷらざ』　家族の医学手帳＜123＞
第1930号　2024年08月01日掲載