彩職賢美リターンズ
2020年1月23日更新
[彩職賢美リターンズ]上地流「アゲダ女性道場」師範の町田初子さん|夫の事業支え女性に空手指導
彩職賢美に出た人が再登場する「彩職賢美リターンズ」。5回目は、県内で唯一、市販も門弟も女性だけの上地流アゲダ空手道場を開設し、昨年、20周年を迎えた師範の町田初子さん(70)。夫が創業したアゲダ空調食品設備(株)で監査役を務めながら、週2回、同社4階にある道場で指導に汗を流す。今後は「女性道場の支部をつくり、女性が伝統空手を学べる場所を増やしたい」とさらなる飛躍を目指す。
上地流「アゲダ女性道場」師範
町田初子 さん
道場主宰し20年
女性の空手普及に意欲
彩職賢美に取り上げてもらった2007年は、記事の反響で入門希望者が増えました。当時、空手は男性がやるものというイメージが強くて、女性が興味を持っても、道場の門をたたくには敷居が高かったんです。当道場は県内では唯一、師範も門弟も女性だけなので、安心して始められるきっかけになったと思います。
入門希望者には「まず体験してから入門を決めてください」とお話ししています。ここは道場でカルチャースクールやサークルとは違う。沖縄伝統空手上地流の修行の場です。年齢も運動能力も性別も問いませんが、心身の鍛錬と礼節を重んじ、やり始めたら途中で投げ出さないことが求められます。厳しい稽古であざができることもあるし、精神的にきつい時もある。続けることで身体も心も鍛えられ強くなった自分に出会える。そのときに大きな喜びと自信が得られます。そこが空手のすばらしいところ。
当道場でも、仕事や家事、育児と忙しい日々を送りながら、長年修行を続ける門弟が多くいます。彼女たちにみなぎる自信と強さ、内面から出る美しさは後輩たちの憧れなんです。さまざまな職種や立場の人が集う道場で、私は指導する立場ではありますが、門弟からたくさんの学びと刺激を受けています。
家族に支えられ 迎えた20周年
1967年、夫の宗啓が沖縄市でアゲダ空調食品設備を創業し夫婦で頑張ってきました。少しずつ社員も増えて、今では80人に。北中城村に自社ビルを建て、4階にアゲダ社員道場を開設し、私が4段に昇進したとき、師の高宮城繁先生や夫の後押しがあり、アゲダ女性道場を開設したんです。
ある日、夫が「俺はついてる。会社の経営、社員に恵まれ、女房にも恵まれた」と言ってくれて、何よりの褒美をいただいたと思っています。
昨年は女性道場が20周年、夫の開いた社員道場も30周年を迎え、12月8日には門弟のご家族や会社の取引先など、応援してくださる皆さんを招いて記念演武会を開催することができました。
その演武会では、伝統的な上地流の型を披露しようと、四つの型については門弟に指揮を任せました。本番までの練習では、自主的にグループで話し合い、アドバイスし合いながら、よりよい演武にしようとする気概が表情から感じられ、道場の連帯感が高まりました。これまではどちらかと言うと私が仕切ることが多かったのですが、信じて任せることの大事さに気付かされました。とても意義深い演武会となりました。
世界から注目される空手 神髄を伝承していきたい
これまで海外での演武会も行ってきましたが、女性が空手をすること、その力強さ、迫力などに人々は感動し、喜んでくれます。
ハワイでは、県系の女性たちが涙を流して喜び握手を求められ、ニュージーランドではサインをせがまれ驚きました(笑)。セルビアでは「東洋から来た勇気ある女性」と評され(笑)、歓待を受けました。セルビアの人々にはオーバーパフォーマンスのない、すばらしい空手の型を見せてもらい、空手に対する純粋で真摯な思い、姿勢に感動させられました。
ことし開催される東京オリンピックの種目になったことで空手は世界中から注目を集めています。そのこと自体はとても良いことだと思っていますが、空手の神髄は心身の鍛錬、礼節を重んじる心だと思っています。
今後は、沖縄伝統空手である上地流の神髄を崩さず、伝承していけるよう、空手指導者の育成にも力を注いでいきたいと思っています。
大病を患い感じた 空手ができる喜び
空手を始めて30年。私も肉体的、精神的につらいときがありました。6年前は両親の介護をきっかけに体調を崩し、大病を患ってしまったんです。そのとき、健康であることの大切さを痛感し、空手ができる大切さを学びました。そして空手があったからこそ、体も早く回復できました。
人生では常に前向き、振り返らないことが信条。70代に入り、まだ活発に動ける今後の10年で与えられたことに真摯に取り組み、意義のある年月にしていきたい。
道場には他にも空手指導員の免状を持ち、指導者を目指す門弟がいます。今春から、沖縄市で子どもたちを対象に指導を始める門弟も。10年以内にアゲダ女性道場の支部をつくり、女性が伝統の空手を学ぶ場所を増やしていきたいと思っています。
記念の演武会 人の縁を再認識
2019年12月8日、沖縄市民小劇場あしびなーで上地流アゲダ女性道場20周年、アゲダ社員道場30周年の記念演武会を開催。会場には門弟の家族や会社の取引先など、約350人が会場に集い迫力ある演武に大きな拍手を送った。
演武会には道場を休んだり中断している門弟も町田さんの声掛けに快く応え裏方スタッフとして活躍。「たくさんの人々のおかげで今がある。人の縁は大事にしたい。道場を離れると敷居が高くなりがちですが、また再開するきっかけになれば」と心を寄せる。
◆上地流アゲダ女性道場
098‐935‐3600
プロフィル
まちだ・はつこ
1949年、沖縄市出身。アゲダ空調食品設備(株)監査役。89年より空手を始め、99年、「アゲダ女性道場」を開設。100人余の女性に空手を指導してきた。海外での演武会も多数。
初登場の紙面(2007年3月21日掲載)
撮影/比嘉秀明 文/赤嶺初美(ライター)
『週刊ほ〜むぷらざ』彩職賢美リターンズ<5>
第1695号 2020年1月23日掲載