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2019年12月31日更新
[平成から令和へ受け継ぐ]絵本で町の記憶、思いを残す|savaさん
絵本作家のsava(和田瑞希)さん(32)は、県内各地で聞き歩いた話をもとに、絵本を創作している(本紙で2015年から2年、あこなわ歩紀として連載)。savaさんは「地域はものがたりの宝庫。絵本で町の記憶、人の思いを残したい」と話す。
浦添市勢理客の十五夜祭の獅子舞。「あこなわ歩記」より抜粋
金武町並里の若水くみ。「あこなわ歩記」より抜粋
那覇市西の十六日。「あこなわ歩記」より抜粋
それぞれの地域はものがたりの宝庫
絵本作家のsava(和田瑞希)さん(32)は、県内各地で聞き歩いた話をもとに、絵本を創作している(本紙で2015年から2年、あこなわ歩紀として連載)。savaさんは「地域はものがたりの宝庫。絵本で町の記憶、人の思いを残したい」と話す。
「浦添市勢理客、旧暦8月15日の十五夜祭では、子どもたちも獅子舞を披露します」。savaさんが絵に合わせて文章を読み上げると、どんな話が続くんだろうとワクワクする。savaさんは、創作した絵本にオリジナルの歌を交えて読み聞かせをしている。
「子どもたちは普通に面白がって、大人は『うちの地域の話だ』と聞き入ってくれる」。新年の若水くみ、ユッカヌヒー(旧暦5月4日。各地でハーリーが催され特設の玩具市が立った)、石獅子、綱曳き…。テーマは多彩だ。「どの地域にも、いくつもものがたりの種がある。地元の人に話を聞くと、どんどん話が広がっていくんです」
映画みたいに楽しんで!
絵本作家のsavaさん
消えてしまう前に
savaさんは沖縄の歴史や文化に興味を持ち、大学進学で沖縄へ。沖縄市の銀天街で、地域の面白さにハマった。「店主のエピソードがすべて、お話の種に思えて。トタン屋根づたいに隣の家に行き来したとか、戦後コザがにぎわっていた話とか。人が生きていると感じた」
「子どもから大人まですぐ伝わる」と手段として選んだのは絵本。事実を調べ、人に話を聞いた上で創作する。「カラフルにものがたりにすることで、話を膨らませられる。歌と一緒に、映画のように楽しんでほしい」
十五夜祭が絵本になった浦添市勢理客の具志堅全輝自治会長(69)は「獅子舞は400年続くとされ、引っ越した人も見に来る心のふるさと。絵と文で残し、広めてもらえるのは、ありがたい」と話した。 savaさんにとって、残したいものとは。「人から人へ伝わる話は、気付かないところで消えていってしまう。私は物よりも人の思い、町の記憶を残したい。古いものから、新しいものも生まれると思うんです」。意外と身近に、受け継ぐべきものはあるのかもしれない。
映画みたいに楽しんで!
浦添市勢理客の獅子舞は、国選択無形民俗文化財。十五夜祭で使う獅子舞とともに、具志堅全輝さん
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編集/比嘉知可乃
『週刊ほ〜むぷらざ』平成から令和へ受け継ぐ
第1692号 2020年1月2日掲載