彩職賢美
2018年12月20日更新
もっと知りたい!伊是名夏子さんのこと➀|学生のころ―時間を過ぎるのを待つ事が、生活の知恵
私は、今いる場所で頑張れているだろうか。どうでもいいことに、とらわれていないか。そんなことを考えた、伊是名夏子さんのインタビュー。身長1メートルの伊是名さんの第一印象は、可愛い!インタビュー中は笑いが絶えず、明るい雰囲気に満ちていました。「彩職賢美」に入れられなかったインタビューを3回に分けてお届けします。第1回は、学生のころについてです。(聞き手・栄野川里奈子)
ーーー 障がいのことは、小さなころから受け入れられましたか。
伊是名夏子さん そうですね。親も歩いて骨折するなら歩かなくていいって言ってくれてたし。
骨が折れるのはすごい嫌なんだけど。
ーーー やっぱり、相当痛いですか
伊是名さん 痛い痛い。ヨイショッて何かを取ろうとしたら折れたとか、家族旅行の前日に
折れて、私と母だけ行かない、っていうのもいっぱいあって。
ただ、この痛みは1週間くらいで治る、これなら一か月、とか自分でわかるん
だよね。だから、1週間の辛抱だなと。1週間は仕方ないから、テレビ見て、
お菓子食べて。時が過ぎるのを待つしかない。
ーーー 強いですねぇ
伊是名さん 生き抜く方法だと思う
ーーー 「助け合う」ことは、どういう風に意識してきましたか。
伊是名さん 姉が二人いるのですが、二番目の姉が家庭科の宿題とか、バレンタインのラッ
ピングとか、超頼ってくるんですよ。
だから、うらやましいと思ったことがなくて。姉も姉で大変そうだなって。
姉も私を抱っこしてくれるし、どこか連れてってくれるし、お互いさま。で、
特別支援学校では、私ができない子のお手伝いをしたり、逆に物をとってもらっ
たり、車いすを押してもらったり。高校になっても、友達に抱っこして階段上
がったりしてもらって、私は勉強教えたり、相談に乗ったり、とか。そういう
のは、普通だった。
ーーー 子どものころ、いじめられていたことがあったとか。
伊是名さん 支援学校にいた小学校のころ、いじめられたことがありました。
ーーー よく耐えられましたね。
伊是名さん 学校は狭い。世界はここだけじゃないって思っていたんです。
父は英語の先生で、家の近くにJICA(ジャイカ・国際交流センター)があ
って、そこから2、3カ月に1回、海外のお客さんが来てて。豚肉を食べない
イスラム教のエジプトの人や、真っ黒い顔の人、布巻いている女の人とか。9
歳離れた姉が、小4のときに東京の大学に行って、毎年東京に遊びに行ってい
たし。学校以外の楽しい世界があったから、学校の時間を乗り切ればいいと思
っていました。
ーーー 高校から普通校へ行くのは、怖くなかったですか。
伊是名さん とっても行きたかったんです。友達がほしくて。5年生から地域の塾に通って
いたんですけど、そこの友達と、一緒に高校行こうよっていう話をしていて。
首里高校は5階建て。それぞれの階に車椅子をおいて、移動は私を抱っこして
もらって友達に上がってもらう。その時は、私を抱っこする人と、荷物を持っ
てくれる人、二人にお願いして。
高校は、合っていた。修学旅行も、冬の北海道で先生たちは心配してたけど、
友だちが、「おかしいじゃん、一緒に行こうよ」って言ってくれて。雪道の移
動は抱っこすればいい、とか、考えてくれた。
ーーー 東京の大学に行ったのは、なぜですか。
伊是名さん 姉2人とも東京の大学で、私も行くものだと思っていた。
1人暮らしは、むっちゃ楽しかった。本当にいろんなことしました。びっくり
したのは、親に電話をした後、夜9時から飲み会に行ったんです。その帰り、
マンションのオートロックのドアに車いすをぶつけて、ピリピリピリーってガ
ラスが割れた。
ーーー えぇぇ!
伊是名さん 夜の12時半。固まるよね。私今どうすればいいんだろうって。あー、お父さ
んに電話しなきゃ…って。
しかもそれを2回もやっちゃったんだよ。1回しか保険きかないって言われて
たのに。
ーーー あはははははは!
伊是名さん 学校から歩いて10分のところに家を借りていたので、みんながパーティーを
する家で。ちょっと帰りに寄る? と、よく友達を誘っていました。
【もっと知りたい!伊是名夏子さんのこと②】日々の暮らしと留学
【もっと知りたい!伊是名夏子さんのこと③】子育て
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撮影/比嘉秀明 編集/栄野川里奈子