職場の困り事あるある
  予定と違う行動に戸惑い  

同じ話を聞いていたのに、同じものを見ていたはずなのに、まったく予想外の反応をする人がいませんか？ 学生時代なら、面白い人だと思って笑えたことも大人になって責任のある仕事をする仲間としては、「困った人」になってしまいます。困るのは何故か、考えてみたことはありますか？ 当人はどう感じているか想像してみたことはありますか？ 身近に起こるこんな現象、少し深堀りしてみるとどうすればいいか、自分たちなりのやり方が見えてくるかもしれません。

 

「困った人」というレッテル

「困る」、という状況は一体どういう状態なのでしょうか？　「勘違い」「取り違え」「忘れっぽい」、という特性がもたらす「困る」状況とは、すなわち「予定と違う」行動に戸惑う、ということなのではないでしょうか？　私たちは、相手の行動を予想し、期待して今後を計画します。同じ情報を共有した相手なら自分の予想通りの行動をするだろうと考えるため、違う反応をされると驚いてしまいます。この時、困っているのは期待した自分の側なのですが、相手に対して「困る！」と考えるようになり、何度か予定と違う反応が続くと相手のせいで「困っている」のだ、との思いから「困った人」というレッテルを張り付けてしまうのです。

人は、不安になるとその感情を「怒り」として表現してしまいます。「困る人」に対して怒りを感じていることに気づいたら、相手のせいにするのをいったんやめて「私は何に困っているのだろう？　何が不安なのだろう？」と、ご自分に聞いてみてほしいのです。そうすると、今起こっている問題が、相手のせいばかりではなく、自分の期待が影響していることを見つけることができるかもしれません。

生きる上で大切な自信

私は、人が生きる上で「自信」がとても大切な要素であると考えています。「難しい、困る」と感じるわが子と問題について話す際には、「双方が機嫌よく居られるとき」に、相手の気持ちを「理解したい」と思って、「ポジティブ」な言葉を使って、相手の話をたくさん聴くことを心掛けて話し合うことを勧めています。わかってもらう、認めてもらう、というのは「褒められる」とは違う体験であり、成長を促すものです。「自身と向き合う」ことを見守り認められることで「自信」を得ていくのです。
 

 

この話し合いのプロセスを、職場でも同じように行うことで、レッテル貼りから脱却し、その人自身に近づくことができるのではないでしょうか？　分からない不安や、期待と違うという戸惑いが、「知ろうとする働きかけ」で、お互いの自信につながり、より良い結果につながっていくと思うのです。
 

「勘違い」「取り違え」「忘れっぽい」という特性は、発達の凸凹のある方にとって、日常的で「自覚が難しい」特性です。見ているようで見ていない、聞いているようで聞いていない。これは、見えておらず聞こえていないわけですから、脳の特性だといえます。つまり、悪気なく行われるのであり、当人だけでは解決が難しいことを意味します。

不測の事態に直面した時、感情が動くのが人情というものですが、繰り返し起こる問題ならば、「知ること」を目指していただきたいのです。この先、どうしていくのがいいか、一緒に考えていただきたいのです。気持ち良い交流のできる職場環境を目指して話し合い、認め合ってはいかがでしょうか。



文・金武育子
（株）沖縄発達支援研究センター代表
（株）おきなわedu取締役

きん・いくこ／1970年、那覇市首里生まれ。10代の2人の息子を通して人生と向き合う中年期クライシス体感中。臨床心理士・国際交流分析士。大学講師、office育子を経て、現職。好きな言葉は「人は必ず発達する」「人間、この未知なるもの」

記事に関する問い合わせは、odssc.okinawa＠gmail.com

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