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2025年2月13日更新

さくらの樹 佐々木麻美さん|要介護者の旅 安心サポート[彩職賢美]

看護師として回復期病棟での経験を通し、「生きていくための看護」に自分の人生の意義を見い出した佐々木麻美さん。介護が必要でも、旅行や外出ができるようサポートしたいと、旅行介助士®の資格を取得。「介護が必要な人もその家族も、好きなこと、やりたいことをあきらめないでいい社会をつくりたい」と要介護者と介護者の支援に取り組む。

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旅行介助士が紡ぐ外出支援の輪

さくらの樹 代表
旅行介助士
佐々木 麻美 さん


介護旅行の専門知識であきらめない人生支える

「寒くないですか?」。女性の車いすを押しながら、佐々木麻美さん(42)が気遣う。女性は手を振り、「やっぱり外の空気は気持ちいい」と久しぶりの外出に表情を輝かせた。

佐々木さんは、「外に出られる喜び、自然を感じられる楽しみ、そんな日常のささやかな幸せを一人でも多くの方に届けたい」と、旅行介助士として活動している。

旅行介助士は、一般社団法人日本介護旅行サポーターズ協会の登録認定資格。看護師や介護福祉士などの医療系資格を持つ人が取得できる。介護の専門知識と旅行の添乗員としての知識を併せ持つプロフェッショナルだ。

看護師として、20年以上働いてきた佐々木さん。小学生のころに読んだ本がきっかけで小児科看護師を目指し、北海道の病院でさまざまな経験を重ね、移住した沖縄で大きな転機を迎えた。「母と姉を早くに亡くし、担当していた3歳の子が亡くなったことで、病院は人が亡くなるところで、患者が安らかであるよう看護するのが仕事だと思っていました。でも、沖縄の回復期病棟で働きはじめ、生きていくための看護を体験できて、涙が出るほどうれしかったんです。その喜びに取り付かれたように、回復期医療を勉強しました」

しかし、病院の中だけでは見えない世界があることに気づく。「病院はバリアフリーが整っていますが、実際の生活の場はどうなのか」。訪問看護の現場に入り、学びを深めた佐々木さんは、外出支援や介護保険外サービスの活用による可能性の広がりと旅行介助士の活躍を知り、2023年、旅行介助士の資格を取得。翌年には個人事業を立ち上げた。

提供するサービスは多岐にわたる。介護が必要な人に対し、旅先での入浴や着替え、食事の介助など、普段は施設や家族が行っているケアを提供したり、地元で買い物や外食、墓参り、結婚式への参列など、外出支援や病院への付き添いも行う。「特に沖縄は家族の絆が強く、外部のサポートを利用することにためらう人が多いんです。でも、介護している家族にも自分の時間は必要。私たちが支援することで、介護する方もされる方も、より豊かな生活を送れるはずです」と語る。

実際、佐々木さんのサポートを受けて生活が変化した人が多くいる。ある女性は病気になってあきらめていた買い物に行けるようになった。「自分で選んで買った服を着て、次の買い物へ。毎回とても楽しみにしてくれています」と佐々木さんもうれしそう。他にも、法事で家族が留守の間、高齢女性を見守ったときは全員から「安心できた」と感謝された。誠実な対応に、喜びの連鎖が広がり続けている。
          

特に注目しているのは、要介護度が軽度の人への支援だ。「つえ歩行や少し支えが必要な人は、使える介護サービスが限られています。でも、この段階で外出の機会を増やすことができれば、心身の機能低下を防ぎ、重度化を防ぐことにもつながるんです」。将来的には、保険外サービスの重要性が広く認識され、行政からの支援が増えることを期待している。「例えば、外出支援の補助券があれば、より多くの方が気軽に利用できるようになるはず。それは、介護予防にもつながる」と語る。

「誰もが、やりたいことをあきらめなくていい。介護が必要になっても旅行に行ける、大切な人の結婚式に参列できる、そんな当たり前の願いをかなえるお手伝いができることが私の喜び。これからも、一人一人に寄り添っていきたい」

看護師として、また一人の支援者として、語る言葉に力がこもる。

 旅行中の介護ケアを支援 

※写真は佐々木さん提供

もともと看護師である佐々木さんは、旅行介助士として提供できるサービスが広範にわたる。介護が必要な人に対するさまざまな介助のほか、たんの吸引などの医療的なケアが必要な場合にも医師の指示のもと対応。オプション料金は発生するが、看護師としての専門性を生かしたサポートが可能だ。

「介護の必要な人がいる家族旅行では、移動は介護タクシー事業所が、ホテル内でのサポートを私が担うなど、連携することも多い」と佐々木さん。

東京からダイビングをするために1人で沖縄に来た車いすの男性を、佐々木さんが介護タクシー事業者と連携して旅行を支援=写真。佐々木さんは宿泊先で食事や入浴、着替えの介助などをした。男性から「朝早くからサポートしてもらえ、無事にダイビングを楽しめました。来年もお願いしたいです」と喜ばれた。

 沖縄で仲間を増やしたい 

岡山県で開催された旅行介助士の研修を受ける佐々木さん(前列右端)※写真は佐々木さん提供

現在、県内で認定されている旅行介助士は2人。佐々木さんは、沖縄で仲間を増やすことを目標の一つに掲げている。「資格取得の研修は県外でしか開催されていませんが、10人以上希望者が集まれば沖縄でも開催できます」と佐々木さん。その認知や周知にも力を注ぐ。「仲間が増えれば、より多くの人の願いをかなえられる」と期待している。

佐々木さんは、「独立前は、自分がどういう看護師でいたいか、どういう看護がしたいか、たくさん悩んだのですが、今は独立して良かったと思っています。収入の安定した病院勤めを辞めるのは勇気がいりましたが、外の世界に出て、こんなに違うんだとショックを受けた一方で、いろんな働き方があることを知れてうれしかった」と振り返る。




プロフィル/ささき・まみ
1983年、北海道出身。看護師として、北海道で小児科・NICU・産婦人科・眼科の混合病棟、消化器外科病棟を勤務。沖縄移住後、回復期ハビリテーション病棟を経て、退院後の生活を支援していきたいと、訪問看護の研修や住宅型有料老人ホームで勤務。2023年、旅行介助士の資格を取得。24年、付き添い介護サービス・介護旅行「さくらの樹」を創業。プライベートでは大学生の娘を持つ母。



今までの彩職賢美 一覧
撮影/比嘉秀明 取材/赤嶺初美(ライター)
『週刊ほ〜むぷらざ』彩職賢美<1443>
第1957号 2025年02月13日掲載

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