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2024年12月19日更新

大多数に良い経験も嫌悪に|こんな時どうする?大人の発達凸凹(でこぼこ)㉑

文・金武育子
(株)沖縄発達支援研究センター代表(株)おきなわedu取締役



職場の困り事あるある
  感覚のシビアな特徴  
 

これまで、発達に凸凹がある方の認知の特徴について取り上げてきました。彼らは脳の機能に特徴があり、さまざまな刺激に対して特徴的な反応を示す、とお話をしてきました。

刺激とは、われわれの皮膚の外側(外界)にある物や出来事のことで、それを皮膚の内側(内界)に取り入れて処理をすると、なんらかの反応が起こるわけです。外側の刺激を内側に取り入れるのには五感と呼ばれる「感覚」を使います。感覚とは「見る=視覚」「聞く=聴覚」「嗅ぐ=嗅覚」「味わう=味覚」「触れる=触覚」のこと。認知に特徴があるということは、刺激に対して独特な処理が行われた結果、「反応」に特徴があるということですから、外界の刺激を受ける感覚に特性がある、ということになります。

認知機能に特徴があることで、自分では気が付かずに周りと全く違う理解や反応をしてしまい、周囲を困らせ驚かせてしまうようなことが起こります。自分のこと、周囲の人のことを考えてみましょう。もしかすると、その認知のズレは感覚の特徴によるものかもしれません。感覚に特徴があるという現象を抱えることが「周囲に迷惑をかけている」としたら、それはとても残念なことですよね。
 


どんなことが起こる?

例えば「見る=視覚」では違うものが見えるというよりも注目するところが違うため、後で確認すると肝心なことが抜けてしまっていて、見ていなかったことを「無かった」と認識するかもしれません。これが業務で「見ること」を依頼されていたとしたら、重大なミスにつながってしまうかもしれません。同じく業務上の「聞く=聴覚」は大変重要な感覚で、「聞くこと」にまつわるミスは、すべての引き金になってしまう可能性もあります。

「嗅ぐ=嗅覚」「味わう=味覚」「触れる=触覚」といった感覚は、個人の趣向なのですが、好き嫌いによる反応が激しく出てしまうことがあり、においや味、感触への嫌悪は、ある種の業務には弊害になりかねません。そのうえ発達の凸凹がある方には自覚がないので、急にその場から立ち去ったり、顔をしかめたり、嫌悪を強い反応として表現してしまうことがあり、周囲は困惑してしまうかもしれません。

嫌いなにおいや味、苦手な肌触りは誰にでもあるものかもしれませんが、発達に凸凹がある方にとっては、通常の範囲を超えた嫌悪感につながることも少なくありません。五感を使って感じる多くのことが、どのような経験になるのかは、個々人の特性で変化します。つまり、大多数の人にとって良い経験だとしても、特定の人にとってプラスの経験とはならないばかりか嫌悪刺激となることもあり、私たちが理解しておくことで、仕事の場面での困難を回避したり、嫌な体験を軽減したりできるかもしれないのです。
 

    大多数に良い経験も嫌悪に   

困ったへの対処法

発達に凸凹がある方にとって、自身の感覚の特徴が他の人とは違うことや、反応が周囲に誤解されるほど大きなものであることは、自覚できないことなのです。周囲の人は、事情をわきまえた隣人として、職場では教育の一環として、強過ぎる反応について何が起こっているのか、当人の経験を聞き、周囲の人がどのように感じているかを共有して、互いの経験の違いや感覚の問題に関する対処法について「話し合い」の機会を持っていただきたいと思います。

発達の凸凹は、ある人当人にとって長く付き合っていく自身の一部であり、工夫なくしては事態の悪化は避けられない課題です。話し合いによって対処法を発見できますし、当人のみの問題として扱うのではなく、親身になってかかわることで孤立を防ぐこともできます。職場ではチームメートとして助け合える環境作りを大切にしていただきたいと思います。



文・金武育子
(株)沖縄発達支援研究センター代表
(株)おきなわedu取締役

きん・いくこ/1970年、那覇市首里生まれ。10代の2人の息子を通して人生と向き合う中年期クライシス体感中。臨床心理士・国際交流分析士。大学講師、office育子を経て、現職。好きな言葉は「人は必ず発達する」「人間、この未知なるもの」

記事に関する問い合わせは、odssc.okinawa@gmail.com

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『週刊ほ〜むぷらざ』 こんな時どうする?大人の発達凸凹⑳
第1950号 2024年12月19日掲載

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