介護
2023年9月7日更新
介護チームに訪問薬剤師を|つらくない介護を(3)
介護が必要な人も、介護をする人も「つらくない介護」を選択するために、当事者や介護を支える人々に話を聞く連載。今回は「訪問薬剤師」の役割とその支援を受けたときのメリットについて、薬剤師とケアマネジャーの2人が対談しました。
介護チームに訪問薬剤師を
薬を届け在宅介護を支援
介護が必要な人も、介護をする人も「つらくない介護」を選択するために、当事者や介護を支える人々に話を聞く連載。今回は「訪問薬剤師」の役割とその支援を受けたときのメリットについて、薬剤師とケアマネジャーの2人が対談しました。
訪問でしっかり把握
適切な薬で療養支援
與那覇友理華さん/薬剤師。いは薬局 在宅サポート室管理者。訪問薬剤師として30人ほどの患者を担当している
薬の専門家がいると
家族も心強いのでは
大城五月さん/(同)hareruya代表、おきなわ仕事と介護両立サポート協同組合代表理事、主任介護支援専門員
-高齢者の急増で在宅介護、在宅医療の関心が高まる中、「訪問薬剤師」の存在も注目されている。その役割とは?
與那覇 訪問薬剤師とは、患者さんの自宅に薬剤師が訪問し、適切な薬の説明や管理、アドバイスを行う専門家のことです。
薬について薬剤師がいくら丁寧に説明をしても、家でちゃんと飲めていなければ、療養はうまくいきません。患者さんの普段の生活を見れば、いろいろな困りごとに気付くことができます。その上で、薬をいかに安全に、かつ自然に生活に取り込めるか、そのためにどうしたらいいかを考え、アドバイスしています。
大城 認知機能の低下などで、薬に対する理解を得ることが難しく服薬を拒まれたり、飲み込む能力の低下から錠剤が飲めなかったりすると、さまざまな配慮や工夫が必要になることがあります。薬の専門家に訪問してもらいアドバイスがあると、ご本人もご家族も心強いですよね。
與那覇 担当する患者さんに、1人暮らしで認知機能の低下があり、血糖値をコントロールする必要がある87歳の男性がいます。「服薬がうまくできていない」と訪問介護士から相談を受けた人でした。担当のケアマネジャーに確認して訪問すると、目が悪く、指先の感覚が鈍くなっているため、水に10~15滴を入れて服用する薬剤の扱いに苦労していることが分かりました。まずは、その薬を錠剤に変えるなど薬剤整理を行い、服薬回数を減らしました。同時に介護士や薬剤師が日替わりで訪問して、服薬をサポートするようにしたんです。
また、別の薬の副作用で、口の中に苦みを感じる症状の影響から食欲が低下していることが分かりました。私からは食事の前に牛乳や黒糖を口にすることで苦みを和らげるようアドバイスし、介護士のアイデアで苦みのあるゴーヤー料理を取り入れるようにしたら「口の中の苦みが気にならなくなった」と食欲が改善されました。そのときは、ご本人と一緒に喜びました。
大城 ケアマネジャーとして、食欲低下の相談を受けることがありますが、薬による影響だと判断することは難しいです。このような事例を聞くと、薬の専門家が介護に加わることの必要性を改めて感じます。
與那覇 薬剤師は、複数の病院から処方された薬が重複していないかや、薬やサプリメント、食品との組合わせなどにも注意を払っています。飲み忘れで残薬があるときも、次回分を減らすなどの調整ができるので、気兼ねせず薬剤師に相談してほしいと思います。
大城 高齢化が進む沖縄で、つらくない介護をしていくために訪問薬剤師のことを多くの人に知ってほしいと思いますが、つながるためにどうしたらいいのか分からないという人は多いと思います。
與那覇 訪問薬剤師の問い合わせや依頼は増えていると感じています。しかし、一般的にはまだまだ知られていません。必要な人に情報を届けるためにも、周知への取り組みが課題と感じます。
訪問サービスを受けるためには、薬の受け取りや管理が難しい事情があり、医師が訪問の必要性を認めた上で、本人や家族の同意が必要です。介護保険や医療保険も利用できます。訪問薬剤師のサービスを行う薬局は、沖縄県薬剤師会のホームページにある在宅支援薬局のリストで確認できます。薬局で問い合わせてもつなげてくれるので、気軽に相談してください。
「介護の楽ワザ」記事一覧
取材/赤嶺初美(ライター)
毎週木曜日発行・週刊ほ〜むぷらざ
「第1883号 2023年9月7日紙面から掲載」