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2022年10月6日更新
[沖縄]もめない相続 準備がカギ|後悔しない終活⑤
「相続でもめる・もめないに財産の大小は関係ありません。スムーズな相続には、元気なうちの準備が大事です。まずは現状分析を」と勧める税理士の棚原博一さん。財産が相続税の課税対象になるか知る方法や、スムーズな相続のために準備しておきたいことを聞いた。
後悔しない「終活」
もめない相続 準備がカギ
まずは現状分析から
「相続で一番多い質問は『相続税を支払う必要はあるか』です。相続税の申告・納付期限は相続の開始から10カ月以内。相続税を支払う必要がある場合は、早めに専門家へ相談すると生前贈与や不動産の売買など対策方法が増える」と棚原さん。
自分の財産が相続税の対象になるか、まずはチェックを。相続税の対象になるのは財産すべて。現預金、有価証券、宝石、土地、建物などが含まれる。純財産額(財産から借入金などの債務を控除)が基礎控除額(課税対象とならない額)を超えると、相続税がかかる。基礎控除額は、3000万円+600万円×法定相続人の数で、相続人が増えるほど基礎控除額は増える。
不動産の価値を知る
財産の中で価値を把握しづらいのが、土地や建物といった不動産だ。「意外と知られていないのですが、土地や建物の評価額は固定資産税の通知書に添付されている課税明細書に書かれています。その評価額から価値の目安が分かります」と棚原さん。
建物は、固定資産税の課税明細書で「評価額」部分をチェックしてみよう。土地は「評価額」の1・1~1・3倍ほどが目安になる(より詳細な評価額は、路線価などで調べられる=下囲み)。注意したいのは、土地や建物の評価額は3年に1回(前回は2021年)変わること。建物は経年ごとに評価額が下がるが、土地の評価額は上がるケースもある。
全員で話し合いを
それでは、相続税を支払わない場合は何もしなくていいのか。「相続でもめる・もめないは、財産の大小は関係ない。例えば、財産が実家(不動産)のみで相続人が複数いる場合、分割しづらいですよね。他にも、相続人が多い、相続人同士の関係が希薄な場合はトラブルが起きやすい」と棚原さん。
相続には法律で決まっている割合(法定相続分)があるが、あくまで目安で義務ではない。そのため「親の面倒をみていた」「行事の時に手伝った」「他の兄弟姉妹は孫の教育費を生前にもらっていた」といった不満が相続時に爆発することが多いという。「どうにかなるさ、は禁物です」
話し合いで折り合いがつかない場合、家庭裁判所での調停となる。「そうなると関係の修復は難しい。相続が原因で、仲が良かった兄弟が疎遠になるケースも。親として最も避けたいことではないでしょうか」
スムーズな相続のために必要なのが「話し合い」だという。「できれば家族全員で集まって、『これはこう分けようと思っているけど、どう?』と確認をしながら、話し合いをしてほしい。後のトラブルを防ぐため、その内容を遺言書として残しておけると理想的です」
元気なうちが始めどき
「『元気なのに死後のことを話すなんて縁起でもない』という人もいるが、いつどうなるかは誰にも分からない。認知症になると、預金をおろしたり、不動産の売買などの法律行為ができなくなります。元気なうちに、余裕を持って準備しておくことが大事です」とアドバイスした。
土地の評価額は国税庁HPをチェック
土地の評価額を知るには、路線価または評価倍率を知る必要がある。どちらも国税庁のホームページに載っていて、どちらを使うかは住所により決まっている。路線価を使う場合は、「1平方メートルの路線価×敷地の面積」で求められる。評価倍率を使う際は、「土地の評価額(固定資産税の課税明細書に記載)×評価倍率」で求められる。
教えてくれた人
税理士法人エヌズの棚原博一さん。税理士 電話098(943)8575
編集/栄野川里奈子
『週刊ほ〜むぷらざ』後悔しない「終活」
第1835号 2022年10月6日掲載