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2022年9月29日更新

[沖縄]10月は臓器移植普及推進月間|考えよう「意思表示」

病気や事故で亡くなった人から提供されて成り立つ臓器移植。多くの人があらかじめ意思表示をしておくことで、救われる命が増える可能性がある。臓器移植法が施行されて今年で25年。普段は話しづらいテーマを、この機会に家族と話してみませんか。        


家族に伝えたいわたしの「選択」

移植による健康回復に望みを持ち、日本臓器移植ネットワークに登録し待機している人は、全国に約1万5000人いるが、臓器提供によって移植を受ける人は、年間約400人程度。長年移植医療に携わる那覇市立病院の理事・副院長の豊見山直樹さんに県内の臓器提供の現状や意思表示の意義を。看護師長として臓器提供に関わった古謝真紀さん、仲本雪美さん、玉城秀雄さんの3人に担当したケースについて聞いた。


移植医療に携わる豊見山医師に聞く
県内の現状と意思表示の意義


豊見山直樹さん
那覇市立病院 理事・副院長
脳神経外科 


県内は年に1〜2例/善意をくみ取るために
県内での臓器提供は年に1〜2例、多くて3例。臓器移植を待つ人の数からすると絶対的に不足している。いろいろ理由はあるが、県民の認知不足に加えて、医療者側の認知も十分ではないことが挙げられる。臓器提供は、患者を助けるための医療をしっかり行った上で、それでも助けられないと判断した時に、その後の選択肢として家族に提示される。医療者側は段階ごとに入念にやっていくことが求められる。

その地域で臓器提供の経験が豊富な病院が中心となり、ノウハウをほかの病院に伝えていく事業が全国的に展開されている。県内でも本年度から那覇市立病院が拠点となって事業をスタートした。県内で臓器提供が可能な病院のスキルアップを進めていきたい。

私が移植医療に関わったきっかけは、医師になりたての頃、腎臓病で亡くなった患者の家族から「お父さんは病気で苦労したから、腎臓を提供したい。役立ててほしい」と言われたこと。その方の腎臓は実際に移植できるわけではなかったが、こんな考えの人たちが世の中にはいるのかと感銘を受けた。

ドナーの家族の中には、提供した臓器がどこかで人の役に立っているという思いから家族を失った悲しみが少し緩和されている人たちがいる。臓器移植した人が元気で暮らしていると聞いて喜んでいるドナー家族の話を聞くと涙が出そうになる。医療者側は、そうした人たちの善意をくみ取る努力が必要。

臓器提供を「する」「しない」は、どちらを選んでも正解。最終的に家族の承諾が必要だが、アンケート調査では「本人の意思を尊重したい」という人は9割というデータもある。急な病気やけがで患者が救命困難となり、家族は気持ちの整理がつかない中で臓器提供の選択肢を提示される場合も多い。そんな家族の心的負担を減らすためにも、普段から自分はどうしたいのかフランクに話しておいてほしい。


 3人の看護管理者に聞く 意思表示の重要性 

急な病気やけがで救命困難となり、本人の意思表示を確認できず、家族が気持ちの整理のつかない中で、臓器提供の選択肢を提示されるケースも少なくない。そうした家族に寄り添った看護師長の皆さんに、意思表示の重要性についてどう思うか語ってもらった。

写真左から、玉城秀雄さん/仲本雪美さん/古謝真紀さん

—これまで関わった臓器提供のケースは?


古謝さん 私が関わったのは、脳死下で臓器提供されたAさんのケース。当初は書面などによる本人の意思表示は見つからず、ご家族は「人のために尽くしたい」という本人の人柄から、意思を推定して「臓器提供する」選択を念頭に相談されていました。


そんな中、本人が意思表示を記載したカードが見つかり、「臓器提供する」選択をご家族による推定意思ではなく、本人の意思として尊重することにつながりました。

臓器提供する権利・提供しない権利がある中、本人の意思表示によって「臓器提供する」選択をご家族が決断する後押しになったのではと思います。
仲本さん 私が担当した脳死下で臓器提供をしたBさんのケースは、本人の意思表示はありませんでした。家族は本当に迷いながらも提供を希望されました。

「そういえば以前こんなことを言っていた」と、普段の会話から推定された本人の意思を尊重したいという思いが家族を突き動かしたのではないかと思います。


玉城さん 私が経験したのは脳死下で本人の意思表示のないCさんのケース。人の役に立つならという家族の思いが強かったよう。家族は、Cさんの臓器がヘリコプターで搬送されるのを見送ったのですが、「見送りしてよかった」と聞いて、命のバトンってこういうふうにしてつながっていくんだなと感じました。

強く印象に残っているのは、一度は承諾したけれど、途中で家族の気持ちが変わってやめたDさんのケース。こちらも本人の意思表示はなく、以前、Dさんが医療系のドラマを見た際、「何かあったら提供する」と家族に話していたのを思い出して、一度は承諾しました。

しかし、やはり推定意思ということでためらいがあったのか。家族の死を受け入れられなかったのかもしれません。ご家族につらい思いを二重にさせたのではと今でも心残り。



仲本さん 私のBさんのケースも推定意思での選択ということもあってか、家族が迷いに迷ってすごく心が揺れ動いている様子が見え、決めた後もそれが感じられました。本人の意思表示があれば家族の心の負担も少しは軽減されたかもしれません。


—ご自身は意思表示はしている?


古謝さん 私は「提供する」と意思表示しています。家族とも臓器移植について、それぞれがどのような気持ちで向き合っているか話しています。主人は「提供する」の意思表示をしていて、自分がもしそうなったら、家族も迷うことなく承諾してほしいと話しています。姉は意思表示を記載していません。その時の家族の悲しみの度合いを考慮して、最終的には妹である私に決めてほしいと話しています。「提供する」「提供しない」だけでなく、臓器移植についての思いみたいなことを話し合うことも大事だと思います。



玉城さん もともと提供の意思はありましたが、この座談会に参加するにあたって改めて臓器提供意思表示カードに記入しました。家族会議を開き、自分は提供したいと家族に伝えました。妻(看護師)には、その時にならないと承諾するか判断できないと言われました。看護学校に通っている長女もお母さんに同意。家族の気持ちはよく分かります。私も妻や子どもたちの臓器を提供するか、その時にならないと決められないかも。

臓器を「提供する」「提供しない」は、どちらの考えも尊重されます。家族と今のお互いの気持ちを確認できてよかったです。

仲本さん 私は、意思表示はしていません。今、家族と臓器提供について話し合っているところ。まずはそこからスタートして、だんだんと意思表示カードにいきついてもいいと思います。

意思表示は、成人して、親になって、年をとって、その時々の考えで変わっていくだろうし、それでいいと思います。

古謝さん 海外に比べると、日本では「死」ついて考えるような教育は少ないように思います。臓器移植に限らず、命について普段から家族と話をすることも大切では。といっても、普段はなかなか話題にしないテーマなので、こうした普及月間などをきっかけに、ご家族で話し合う機会を持つことが大事だと思います。





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■問い合わせ先 ☎︎098(879)6311

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※10月は「臓器移植普及推進月間」にちなみ、4週にわたって「臓器移植」について考えるコーナーを掲載します
 

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『週刊ほ〜むぷらざ』(池原 拓)
第1834号 2022年9月29日掲載

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