[沖縄・輝く女性を紹介]彩職賢美|探究学習施設「Qラボ」共同代表兼プロデューサーの岸信 朋さん|好きと自信育む 子どもの居場所|fun okinawa~ほーむぷらざ~

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2022年2月17日更新

[沖縄・輝く女性を紹介]彩職賢美|探究学習施設「Qラボ」共同代表兼プロデューサーの岸信 朋さん|好きと自信育む 子どもの居場所

「毎日が自由研究!」をコンセプトに、科学実験をはじめ、子どもたちのやりたいこと、知りたいことを、自由に探究できる施設を運営しています。学校とも、塾とも違う、自分の好奇心や好きを安心して発揮できる学びの場を通して、自ら学び、考える力と自信を育み、未来の技術者・科学者の可能性を広げていきたい。

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やりたい! を解放する伴走者

探究学習施設「Qラボ」
共同代表兼プロデューサー
岸信 朋さん


失敗さえも発見や面白みに
未来の技術者の卵を育てる


探究学習とは、自分で課題を設定し、調べ、考えをまとめる学習のこと。社会で求められている「自ら学び、自ら考える力」を育てる新しい学び方として、注目されている。「子どもたち自身が疑問に思ったこと、好きなことに安心して没頭し、自由に研究できる秘密基地のような居場所を目指しています」

Qラボは小学3年生~中学生を中心に展開。生花を色水に浸け、花びらの色の変化を観察する子。科学実験から移行して、段ボール工作にハマる子など、探究するテーマはさまざま。岸信さんは子どもたちが研究を楽しめるよう予備実験をしたり、大学の先生や企業の技術者など、専門家を招いた体験型講座も企画する。

「科学は失敗してなんぼの世界。失敗すら、発見や面白みに変わります。私にとっては、ペットボトル一つとっても疑問がいっぱい。当たり前と思っていることに、なぜ? という視点を向けることで、新しい技術やアイディアが生まれてきます」

やりたいこと、知りたいことが見つからない子には、メンタリングを行い、やりたいことを一緒に探すことから始める。「私たちは先生ではなく伴走者。だからこそ、担当する子が自分の考えや意見を言える、対等な関係づくりを大切にしています。好きなことをやっている自分を認めてくれる大人の存在は、“自分はこれでいいんだ”という自己肯定感や自信につながります」


子どものころから実験や、もの作りが大好きなリケジョ。でも、活字が苦手で本もマンガも読めなかった自分に、自信が持てずにいた。小学4年生のとき、自由研究で入賞した経験が、探究心と自信の根っこになった。「野菜の水分量を測って比べる実験。担任の先生が面白いと言って市の作品展に出してくれて。家族以外の大人に、好きでやったことを認めてもらえたのが、うれしかった」

アウトドア好きの両親の影響で、子どものころから自然が身近。特に海への関心は深く「なぜ、潮の満ち干きがあるのか、地域で海の色が違うのかなど、疑問だらけでした」。海洋学を学ぶため琉球大学へ。教授や研究室の仲間と流体力学や気象、地震について語り合い、考え、学びを深められる環境に、「自分の興味を解放していいんだ」という安心感を得た。

大学卒業後は座間味漁協に就職。2年半、漁師や島の暮らしを支える業務に携わった。「漁師さんは、私が大学で学んだ専門知識を、経験値としてみんな知ってて。これが現場力だ! と感動しました」

学校の勉強だけではない学びを、子どもたちに伝えたいと転職。学童保育支援や県公衆衛生協会で、環境教育に携わった。体験講座や出前授業などを企画し、離島にも足を運んだ。「普段は無口で覇気のない子、発達障がいのある子などが、実験では目を輝かせて楽しそうにしてて。学校では窮屈そうにしている子たちの突出した興味や個性を磨き、伸ばすお手伝いができればと考えました」

独立し、子どもたちの支援環境づくりを模索する中、大学時代の友人を通して出会った堀井大輔共同代表の後押しで、昨年10月、那覇市にQラボを開設。「私一人なら、実現するのは10年後と思っていた場づくりが、思いに共感してくれる仲間との出会いで、1年で実現できました」

琉球大学理学部島田助教と共同で、小学生向けのグローバル型探究学習プログラムの開発にも取り組む。大学のネットワークを活用し、海外の子どもたちともつながりながら、環境に特化した理系教育を行う。「生まれ育った地域や家庭の環境に関わらず、子どもたちの視野と可能性を広げ、将来の科学者、技術者の芽を育んでいきたい」と、未来を見据える。



 岸信さんに聞いた! 親子で楽しめる科学実験 

科学というと、なんだか遠い世界のように感じる人も多いのでは? 家庭で、親子で楽しめるオススメの科学実験を教えてもらった。「一番のオススメはお料理。お掃除やお洗濯で、汚れの成分に応じて落とすのに必要な洗剤を選んで使うことも、中和の科学実験です。お母さんたちって実は、すごい科学者なんです」と岸信さん。

毎日、当たり前のように行っている家事も、「視点を変えれば、日常生活が違って見えてきます」。お母さんの得意分野を生かして、子どもと一緒に実験を楽しんでみて。

【料理で科学実験】
料理をレシピ通りに作らない

料理はレシピ通りに作れば、失敗することはありません。そこをあえて、材料の分量を変えて作ってみてください。

〈お団子作り〉
レシピの分量より、粉や水を増やしてみる。
①粉を増やしてみる→カチカチの塊ができる
②水を増やしてみる→ドロドロで丸めることができない。
※失敗によって、おいしいお団子を作るにはどんなことが必要か、材料の役割などを考える機会になります。

〈パン作り〉
パンを膨らませるために使うイースト菌は生きています。活動に適した温度にするために、ぬるま湯を使い、栄養分となる砂糖を加えることで発酵が起こり、パンは膨らみます。

では、パンを作る時、砂糖を入れなかったらどうなると思いますか? ぬるま湯ではなく、お水や熱湯を使ったらどうなるでしょう?

※私はパンを作る時、うっかり熱湯を入れてしまい、ぺったんこのパンを焼いたことがあります。熱湯により、イースト菌が死んでしまったことが原因だと考えられます。
 




【洗剤で科学実験】
お掃除洗剤クイズ

お掃除やお洗濯の時、汚れの種類に応じて「酸性」「アルカリ性」「中性」の洗剤を使っていると思います。汚れは中和することで分解されます。お掃除やお洗濯のとき、お子さんにクイズを出してみてください。

例えば、「せっけんカスを落とすのにピッタリな洗剤は、酸性でしょうか? アルカリ性でしょうか?」という感じです。答えは、酸性です。クイズで皿洗いやトイレ掃除も楽しくなって、お子さんがお手伝い好きになるかもしれませんよ。
 



探究学習施設「Qラボ」 電話098・943・8773



岸信さんのハッピーの種

Q.日々の楽しみ、エネルギーチャージは?

コロナ前は、よく海に出かけていました。仕事に行き詰まったり、眉間にシワが寄ってるなーと感じたときは、とにかく海に行って、泳がずとも足を漬からせていましたね。あとは、くだらないことを話せる仲間と飲みに行くことも楽しみでした(笑)。

もうすぐ2歳になる長女が生まれてからは、娘と遊んでいる時間が楽しみに加わりました。
 


プロフィル
きしのぶ・とも
1983年生まれ、鳥取県出身。琉球大学理学部物質地球科学科卒業。座間味村漁協、沖縄県学童・保育支援センター、沖縄県公衆衛生協会職員を経て、2019年に合同会社MIRAIME.Labを設立。人材育成のための教育事業や子どもたちの環境教育などに携わる。21年10月、探究学習施設Qラボをオープン、共同代表兼プロデューサーに就任。同11月、一般社団法人Qラボ(堀井大輔代表理事)を設立する。キャリア教育コーディネーター。

今までの彩職賢美 一覧


撮影/比嘉秀明 文/比嘉千賀子(ライター)
『週刊ほ〜むぷらざ』彩職賢美<1397>
第1802号 2022年2月17日掲載

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この記事のキュレーター

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比嘉千賀子

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編集者
住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。

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