介護
2021年7月1日更新
ベッド上の「滑る介護用品」|介護の楽ワザ②
家族の介護をしている人が、経験から得た介護のこつや便利な道具、シェアしたい情報を紹介。今回はベッド上での介護に役立つ「スライディングシート」と「スライディンググローブ」です。
Aさんの経験談
体の移動、体圧分散がラクに
ベッド上での介護が増えた母と、腰痛に悩む私にとって便利な道具。もっと早く知りたかった!
母は左半身不随で、長年、車いす生活を送っています。高齢になるにつれ、どんどん筋力が衰えて介助する場面も増え、ベッドの上で横になる時間も長くなりました。
ベッドでは、体の位置がずれてしまうことも多々あります。それを直そうと、母が寝たままの状態で私が引き上げることが多かったのですが、そのたびに母は痛がり、私は腰痛がひどくなって病院に通うなど、お互いにつらかったんです。
そんな中、「スライディングシート」の存在を知りました。スルスル滑る素材でできた、二重になった布を介護される人の体の下に敷いて押せば、軽い力で体を移動することができます。似た素材のグローブは、体圧分散で褥瘡予防に役立ち、少し(10㌢程度)の移動もラクにできると聞いたので、もっと早く知りたかったと思いました。 スルスル滑る素材でできた、スライディングシート(上)。
同様の素材でできたグローブは、介護する側の人が両腕にはめて使う
専門家からひとこと! 「抱える介護は双方に負担
滑りやすい素材のシートやグローブを使えば、介護動作で起こる摩擦や圧力を取り除くことができます。「スライディングシート」も「スライディンググローブ」もスルスル滑る低摩擦素材でできた、ベッド上などの介護に便利な道具です。
シートは2枚重なるようにして介護される人の体とベッドの間に敷き込んで使います=左写真A参照。ベッド上でずれてしまった体の位置を動かすときやベッドから起こすときも、介護される人の体を軽い力で動かすことができるので、介護をする側にとってはとても楽です。
グローブは手袋のような形状をしており、両手にはめて使います。寝たきりなどで体の1点に体重が掛かると、その場所の血流が悪くなります。そうすると、皮膚が赤くただれるなど褥瘡が起こりやすくなりますが、介護される人とベッドの間に、グローブをはめた両手を差し込むと=左囲み写真B参照、両腕がスッと入って、体をなでるようにするとそのまま滑らせることができ、体圧を分散させ、褥瘡の予防になります。同じく褥瘡の原因となる洋服などのシワも、グローブを使い解消できます。
ベッド上で体位を変える際や、体を起こす際、おむつ交換のときなど、介護をする人が中腰の姿勢で介護される人を持ち上げると、腰痛を引き起こす原因になります。また、介護されている方も、皮膚の摩擦から褥瘡になったり、緊張から関節の動きが固まってしまう「拘縮」につながってしまうことがあります。
シートの使い方▲
シートを2枚重なるようにして要介護者の下に敷き、お尻のあたりに腕を入れて頭の方向に押すと、軽い力で移動できる。ベッドは介護する人の拳の下の高さまで上げておくのがポイント。シートを抜くときは、重なったシートの表(体側)ではなく、裏(ベッド側)から引っ張る
グローブの使い方▲
グローブをはめた両手のひらを上に向けて体の下に差し込み、左右半身ずつ体をなでるように背中からかかとへと滑らせる。圧力が分散され、力が抜けてリラックスできるので、眠りやすくなる効果も。足、腰、肩の部分に手を差し込み、体位のズレを修正することもできる
介護する人が正しい姿勢で「持ち上げない介護」をすることは、第一に介護が必要な人のためであり、介護をする人の体のためでもあります。今回紹介したどちらの道具も、双方にとって楽になる道具です。ぜひ取り入れてほしいと思います。
介護される側もする側も、福祉用具や介護サービスなどを活用し、負担軽減を図りながら、その人らしい生活が送れるといいと思います。
金城知子さん
きんじょう・ともこ/社会福祉法人おもと会本部おもと会から介護を変えていくプロジェクトリーダー、作業療法士
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「介護の楽ワザ」記事一覧
取材/赤嶺初美(ライター)
毎週木曜日発行・週刊ほ〜むぷらざ
「第1769号 2021年7月1日紙面から掲載」