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2019年4月4日更新

家庭料理をクスイムンに|琉球料理はぬちぐすい

琉球料理はぬちぐすい[1]|琉球料理の伝承に力を入れる松本嘉代子さん(松本料理学院院長)と薬膳料理研究家の宮國由紀江さん(薬膳琉花代表)がコラボレーション! この連載では、琉球料理の作り方と、「琉球料理がぬちぐすい」の理由を栄養学的、薬膳的にひもときます。
1回目はお二人が琉球料理と薬膳の魅力をたっぷり語ります。

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琉球料理は栄養学的に優れている。先人の知恵に驚かされます。


まつもと・かよこ/1969年松本料理学院設立、学院長。新聞やメディアで琉球料理の継承について広く発信。2017年から始まった県「琉球料理伝承人 琉球料理担い手育成事業」に携わる。​


お年寄りの一言が薬膳を学ぶきっかけに。沖縄には薬膳が根付いている


みやぐに・ゆきえ/栄養士。病院の栄養士を経て、薬膳研究家へ。国際中医薬膳士。琉球料理伝承人。薬膳の普及に努める。薬膳琉花代表。県内外、海外で講演。県栄養士会会員。



宮國 琉球料理でサギグスイと言われるイカ墨汁や、具合が悪くなったときなどに飲むチムシンジ。調べてみると、薬膳的にも現代栄養学的にも理にかなっているんです。やっぱり!と思って。


チムシンジ

松本 そうなのよね。栄養学的に優れている琉球料理は多い。例えばチムシンジにはレバーと肉が入っていて、鉄分はタンパク質と一緒に取ることで吸収率が高くなるんです。先人の知恵に驚かされます。

宮國 本当ですね。知るほどに、琉球料理はすごい!と思います。

―「クスイムン(食は薬)」という考え方は、以前からあったのでしょうか。

松本 そうですね。薬が手に入りにくい時代、沖縄の食事は健康維持だけでなく薬の役割も担っていました。お年寄りは、食べる前に「クスイナラチクミソーリ(薬になりますように)」、食べ終わったら「クスイナイビタン(薬になりました)」とあいさつをしていました。

宮國 私が薬膳を学ぶきっかけになったのも、お年寄りの言葉なんです。以前病院で栄養士をしていたときに、お年寄りから手術後、ゼェゼェしているときに田芋を出すなって言われたんです。栄養学的にはそういうことはないし、なぜだろうと思ったんです。他にも似たようなことを言われて。
薬膳を学び始めると、その時に聞いたことと一致したんですね。お年寄りは知っていたんだなぁと。沖縄には薬膳が根付いている。薬膳を勉強し始めた日に、沖縄の食医学書「御膳本草」(★1)を探しました。


松本 以前から御膳本草は知っていたのですが、読みづらくて理解しにくかった。宮國さんが分かりやすくまとめたものを見て、驚きました。

宮國 たまたま訳してくれる方と出会えたので、研究を始めました。御膳本草は沖縄の食材の効能や使い方がまとめられている素晴らしい本です。
調べたところ、御膳本草が広まる前から琉球料理はあり、生きるために料理を食べる中で「食べ物は滋養になる」と考えられていたようです。そこに御膳本草の教えが伝わって、さらに「食は薬」という考え方が深まったのではと思います。



アジクーターがいい

―そもそも琉球料理の特徴は何でしょうか。

松本 何といっても「だし」ですね。琉球料理は豚だしとかつおだしを合わせることで、相乗効果でうま味が倍増する。そのだしを他の食材に移すことで、複合的な味が混ざり合って「アジクーター」になり、減塩効果が高くなります。
誤解されることもあるけれど、アジクーターは塩辛いとは違います。アジクーターを維持できれば、子どもたちもおいしいって感じてくれるでしょうね。最近、生徒たちには先に試食をしてもらってから作るように勧めています。味さえ覚えていれば、いつでも作れて次の世代に継承できる。

宮國 私は薬膳から入ったのですが、琉球料理はおいしくて体にいい食材の組み合わせ、調理法になっているんですよね。

松本 若いころは和・洋・中を問わず料理を教えていたのですが、30代以降、琉球料理を教えることに重点を置くように。年を取るにつれて幼いころ食べていた琉球料理を好むようになりました。新島正子先生や翁長君代先生ら先輩方の「次はあなたたちの番よ」という言葉に背中を押されました。

宮國 薬膳は気候風土を重視し、土地の季節の食材を取ることが大切だと考えています。沖縄の人に琉球料理は合っているんです。

松本 食生活がファストフード化して琉球料理離れが進むほど、残さないといけない気持ちが強くなっています。琉球料理は県外と比べると異文化。貴重な食文化です。一度無くなると、復活させるには相当なエネルギーが必要になります。

―健康長寿を取り戻すために、何が必要でしょうか。

宮國 普段の食べ物が大切ということが家庭に広まっていけばと思います。誤解されやすいのですが、薬膳料理はクコの実やナツメなど特別な材料を使う必要はありません。組み合わせと調理法次第でスーパーで買える材料でできる。
薬膳というよりもクスイムンの方が身近でイメージしやすいかもしれません。

松本 沖縄県の健康長寿の順位が転落したのは、食生活の急速な変化による偏食や野菜の摂取不足、運動不足などと関連があると思います(★2)。
沖縄はもともとは長寿県。もう一度取り戻すには、何を食べていたかに、その答えがあると思います。


宮國 ゴーヤーンブシーやモーイ豆腐、ミヌダルなど、薬膳的にもぜひ食べていただきたい琉球料理はたくさんあります。


ゴーヤーンブシー

松本 沖縄全体で取り組むことが必要だと思います。昨年から県の事業で琉球料理を広める琉球料理伝承人の担い手育成がスタートしてホッとしています。

宮國 私も伝承人として学びましたが、きちんと作った琉球料理は本当においしい! 正しい調理法と意味を伝えることで、より琉球料理に興味を持ってもらえるのではと思っています。

松本 家庭で気軽に琉球料理を作っていただきたいですね。
 

 


『週刊ほーむぷらざ』紙面から掲載
琉球料理はぬちぐすい[1]
第1653号 2019年4月4日掲載

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スタッフ
栄野川里奈子

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編集者
おいしいものに目がないガチマヤー(くいしんぼう)。2016年に国際中医薬膳師の資格をとりました。おいしく健康に!が日々のテーマ。

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