ヘルスケア
2023年4月20日更新
大人の発達凸凹は何が大変?|こんな時どうする?大人の発達凸凹(でこぼこ)①
文・金武育子
(株)沖縄発達支援研究センター代表(株)おきなわedu取締役
失敗の影響 よりシビアに
この春から「こんな時どうする? 大人の発達凸凹」のコーナーを担当させていただきます。発達臨床の中核ともいえる「発達凸凹」。その課題とじっくり向き合う機会に感謝しつつ、読んでくださる皆さま、一緒にページを作ってくださる方々と、発達凸凹の世界を見つめて行けたらいいな、と思っています。
今回のテーマである、「大人の発達凸凹」は、発達臨床の中核的なテーマとなりました。大人になったからこそ、表面化してくる大変さもたくさんあるでしょう。一方で、大人になったからこそ自分自身を客観的に見つめることもできます。発達凸凹に思い当たる方も、身近にいて支える方にも、正しい知識を持っていただくことで、発達凸凹との付き合い方を考えてみていただけたら幸いです。
こんなこと思い当たりませんか?
大人の発達凸凹の特徴を表1にまとめました。表の上から4項目は、「ASD=自閉症スペクトラム症」、その下の4項目は、「ADHD=注意欠陥多動症」の特徴です。思い当たること、ありましたか? 発達凸凹の特性は、どなたも多少は持っているものですが、特性が強くなり過ぎると、本人も周囲の人も困難を感じます。
発達凸凹とは?
ASDとADHDが代表的な発達凸凹です。この二つを比べてみると、ADHDの代表的な特性と言われている「多動」、「不注意」、「衝動性」のうち、多動(落ち着かない)と衝動性(待てない)は必ずみられるとは限らず、ASDにもみられることがあります。ADHDでみられる「不注意」は、気が散りやすく一つのことに集中する時間が短いことから「トラブルになりがち」ですが、ASDでは、好きなことには熱中するが、興味のないものに対しては集中できない、という偏りとして現れます。その他の特性では、話し方・対人関係・こだわり・感覚があげられます。ADHDではおおむね問題はありませんが、ASDでは、おおむねトラブルを引き起こしやすくなります。発達凸凹とは、脳の機能(働き)の偏り、と言われていますが、ASDでは、その影響が出やすいようです。
子どもとの違いは?
次に、大人と子どもの違いについて考えてみましょう。
子ども時代は、トラブルに対して指示を出されたり、励まされたりと学校や家庭で支えられ守られるのに対して、大人の場合は、全て「自己責任」となるため、自身でさまざまな事をコントロールし、責任を持たなくてはなりません。また、子どもの頃に比べてさまざまな力が大きくなることで失敗の影響も大きく、シビアになります。そのことが、問題をより深刻にしていると言えるでしょう。
これらの観点からも、大人の発達凸凹は多くの課題を含み、事態が深刻化しやすい難しいテーマです。そして同時に、「大人の発達凸凹」は、誰もがその傾向や行動特性を持っているものなのです。このコーナーでは毎回、発達の凸凹に根差した困りごとを取り上げ、考えていきたいと思っておりますので、ご自身または身近な人に照らし合わせて考えていただきたいと思います。
文・金武育子
(株)沖縄発達支援研究センター代表
(株)おきなわedu取締役
きん・いくこ/1970年、那覇市首里生まれ。
10代の2人の息子を通して人生と向き合う中年期クライシス体感中。
臨床心理士・国際交流分析士。大学講師、office育子を経て、現職。
好きな言葉は「人は必ず発達する」「人間、この未知なるもの」。
これまでの記事はこちらから。
『週刊ほ〜むぷらざ』 こんな時どうする?大人の発達凸凹(1)
第1863号 2023年4月20日掲載