2020年5月21日更新
テレワークから始める働き方改革
新型コロナウイルスの感染拡大で、テレワークを取り入れた企業は多いのではないだろうか。働き方改革に携わる比嘉華奈江さんは「テレワークの経験は強みになる。コロナの終息後も、テレワークを一過性で終わらせず、柔軟な働き方に変えるきっかけに!」と話す。テレワークを導入する、さらに進めるためのポイントを紹介する。
テレワーク ネックになりやすいのはコミュニケーション
時間や場所を問わない柔軟な働き方「テレワーク」。テレワークセミナーなどを開く比嘉華奈江さんは、「テレワークのネックになるのは、ハード面よりもソフト面。コミュニケーションを取りやすいよう社内の仕組みを整えることが大切です」と話す。テレワークのポイントを聞いた。
Q1 在宅だとコミュニケーションが難しい。
A 言いやすい雰囲気を作る。
そもそもテレワークではどのタイミングでどうコミュニケーションを取って良いか分かりにくいので、日ごろから意見や質問を言いやすい雰囲気を作っておくことが大事です。
チャットで進捗状況をアップ
今、どんなことをどの程度しているか、チャットなどにこまめに進捗状況をアップします。直接報告はお互い時間を取ってしまうので、それぞれにいいタイミングで見るといいでしょう。時には電話やオンラインで雑談も。
テキストは簡潔に箇条書き
伝わりやすいよう、メールなどのテキストは、簡潔に! 報告か相談か、連絡(情報共有)かを先に伝えます。例:相談1件です。〇〇の件、など。文章ではなく箇条書きにし、長くなりそうなら電話を。電話を先にしてメールなどで補足もOKです。
ウェブ会議は最初に一人ずつ話す
会議の冒頭に、テーマ(今の気持ちは? など)を決めて一人ずつ話すのはおすすめです。全員が話すことで発言しやすい空気を先に作れます。また、司会進行をする人を立て、「○○さんはどう思いますか?」「何か質問ありますか?」などまんべんなく意見を促すといいでしょう。
声が重なったり伝わりにくかったりするので、参加者は、大きくうなずく、ジェスチャーでオッケーサインを出すなど、非言語でもコミュニケーションを取ります。メモに集中せず、話し手の顔をしっかり見て「聴く」ことも大事です。
Q2 そもそもテレワークは必要?
A 会社の事業継続、働き手にゆとり
新型コロナウイルス感染症だけでなく、過去の東日本大震災や台風、水害…。未来に何が起こるかは分かりません。その時に事業が継続できる体制(オンライン、テレワークの環境)を整えておくことは、会社にとってリスクの分散になります。また、育児や介護と仕事の両立ができる体制は、人材の確保、「働き方の多様性の実現」につながります。
働き手にとっては、通勤時間がなくなり時間に余裕が生まれたり、在宅勤務の休憩時間に少し家事ができることで気持ちにゆとりが生まれたり、交通渋滞が緩和したり。今回、家族そろって食事ができる喜びを実感した人もいるかもしれません。
働き手が人間らしく生きること、組織として何があっても事業を継続させられる環境を整えておくこと。そのためには「時間と場所を問わない柔軟な働き方」が欠かせません。
今回、これまで進まなかったテレワークが一気に進み、銀行、エネルギー業界、運輸業界など多様な企業が取り入れ始めています。経験は強みです。テレワークを一過性の「代替」で終わらせず、経験を通して感じた利点や課題を出し合って、今後につなげていただければと思います。
Q3 在宅でメリハリをつけて仕事をするには?
A スケジュールを立てて、オンラインで顔合わせ
朝、各自が何時から何時までどの仕事をするのか1日のスケジュールを書き出し、チームメンバーに共有します。
チームごとに、朝はいったんオンラインで(5分でも良い)顔合わせをし、各自の1日の過ごし方を確認しましょう。ここで、仕事に偏りがあったり、優先順位の入れ替えが必要だったりする場合には、上司がマネジメントします。身だしなみを整えて顔を合わせることで、気持ちのスイッチを入れられます。
夕方は、予定に対して実績がどうだったか振り返りを。大事なのは、予定通りに進めることではなく、予定通りに行かなかった理由や明日の仕事の計画などを確認すること。振り返りもメンバーと共有します。
以下は、弊社の在宅勤務3年目のスタッフの声です。「スケジュールを立てると時間通りにできなくても、もう少し急ごう、次に移ろう、など区切りがつけやすい。集中し過ぎてあとでどっと疲れが出たりするので、意識的に休憩を取るようにしています。花や好きな写真を飾り、波の音のBGMを流して環境を整えています」。
テレワークでは、時間と環境をうまく活用して自己管理をすることが求められます。工夫をしてメリハリを付けられるといいですね。
Q4 テレワークを始めたいけれど、何から取り組むべき?
A セキュリティー対策、仕事の見える化
①セキュリティー対策やクラウド化(社外から会社の資料や情報にインターネットでアクセス可能にする)、制度の整備
②仕事の見える化
③チームでのコミュニケーションのあり方の構築
①のセキュリティー対策では、安全なWi-Fi環境や情報漏えいを防ぐルール作りが必要です。情報漏えいのリスクがあるフリーWi-Fiは禁止、パソコンにパスワードを設定する、などのルールを社内で決めるのも良いでしょう。まずは自社のシステム管理をしている会社へ相談を。
①で引っかかる企業は多いのですが、完璧に①を整えようとするといつまでたってもスタートできません。逆に、②と③ができている企業は、①が整うまでの間にできることから在宅勤務を始められます。①と並行して②と③に取り組むといいでしょう。
全員でのスタートが難しい場合は、「誰からできるか」「どんな業務だとできるか?」話し合いを。合わせて、①の自社に合ったセキュリティーや、クラウドツールを助成金も活用しながら整えていきます。②③を高めることで自律性と生産性の高い、柔軟なチームへと変化を遂げます。
テレワークを「一時的な代替」と考えるか「今後の経営戦略」と考えるかで、今後の組織のあり方や事業継続に大きく影響を与えます。まずは、自社のテレワークの意義を経営者が発信し、社員の方と共有することも大事です。
テレワークを導入することでどんな効果があるかに目を向けて、戦略に生かしましょう!
Q5 見えない部下の仕事をどう管理?
A 「見える化」する工夫を双方向で。
人事評価の項目は、大きく「定性」(プロセスや姿勢など、数字では表せないもの)と「定量」(売り上げなど数字で表せるもの)と「資格」に分かれます。テレワークでは、「定性」に悩むことが多いです。「定量」と比べて、「定性」は、普段の行動や立ち振る舞いから評価することが多く、テレワークでは見えないために評価できないと考えられがちです。そこを、「見える化」するのが工夫どころです。
上司が見て評価することに限界が出てくるので、部下による報告の徹底が求められます。今日の行動予定、仕事に対しての考え方、リスク対応、ルールや期限の順守、チームサポート(貢献度)など、目標を設定し、その過程を報告し、コミュニケーションを取ることで把握できることも多くなります。チームで取り組む際は、メンバー同士の評価も有効です。
基本的には、一人一人の自主性と自律性が育つと、管理が不必要になります。成長段階に応じた評価項目と関わり方が重要という点では、テレワークもリアルワークも同じです。
テレワーク導入に助成金
「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」は、テレワークに取り組む中小企業事業主への助成金。テレワークを新規で導入する、または、継続して活用する中小企業事業主が対象。テレワーク用の通信機器や規則の作成・変更、外部コンサルタントの相談費用などに使える。成果目標を達成すれば、補助率は3/4(1人あたりの上限40万円、1企業あたりの上限300万円)。問い合わせは、テレワーク相談センター電話0120(91)6479へ。
働き方改革の相談窓口
県内の働き方改革の相談窓口に、「沖縄働き方改革推進支援センター」がある。相談は無料。社会保険労務士などの専門家が、助成金の活用、有給休暇の取得の進め方、残業の見直しなどの相談に応じる。同センター電話0120(420)780、電話0120(420)781
ひが・かなえ ㈱Life is Love代表。日本教育推進財団認定コミュニケーション・トレーナー。経営戦略や働き方改革・チームビルディング、人事評価制度、賃金制度構築までコンサルティング。
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