出産・子育て
2018年7月26日更新
[イマドキ子育て]どう関わる? 思春期の性
県のまとめによると、沖縄の10代の妊婦・出産率は、全国平均の倍。思春期の子どもに彼氏・彼女ができたら、うれしい半面、心配も出てくる。スマホ・ネットにより出会いや情報量が増えている今、親は思春期の性にどう関わればいいのだろう。
イラスト/東川平綱木
まめに会話し情報伝えて
「妊娠したかも」という女子中学生、「SNSで知り合った人に会った」と話す女子高校生。思春期の性教育に関わる助産師の百名奈保さんは、「ごく普通の子どもたち」と話す。気のゆるみがちな夏休み、子どもたちを取り巻く環境や、親はどう接したらいいかを、百名さんに聞いた。
子どもたちの現状
ネットで出会い増え知識偏る
Q.どんな相談がある?
「妊娠したかも」と相談に来た中学生は、「友達が経験していて、遅れるのが嫌だった」と話した。「中学生でも妊娠するとは思わなかった。コンドームは高くて買えなかった」とも。SNSでつながった人に県外に会いに行った女子高校生は、レイプされそうになったが何とか逃げ帰った。日帰りだったこともあり、親はまったく気付いていなかった。 ごく普通の子で、パッと見、全然気付かない。
Q.ネットでどう変化
スマホやアプリで出会いが増え、情報は偏っている。例えば、「妊娠したら生理が止まる」ということを知らなかったり、「コンドームで100%避妊ができる」と思っていたり。「SNSでつながった人に会った」という子に、SNSで事件に巻き込まれたニュースを伝えると、知らなかった。
性に関する情報を友だちやネットから得ていて、テレビや新聞を見ていないため、知りたい情報しか入ってきてない。
Q.男女交際は悪?
そもそも思春期は、心と体が揺れ動く時期。男子は声変わりや精通、女子は初潮が始まり、体が変化し、大人になる準備が始まる。自分の体や性、異性に関心を持つのは自然な感情だ。
思春期向けの性教育講座を学校で行っているが、男女交際は否定しない。子どもたちに、「人を好きになるのは素晴らしいこと。セックスはコミュニケーションの最たるものだけれど、今じゃない」と伝える。
Q.伝えるべきことは
講座で強調するのは、1回の性交渉でも、妊娠したり性感染症になる可能性があることと、何かあれば大人に相談してほしい、ということ。「妊娠すると、お金が必要で、友達と遊べない。進学もかなわなくなるかも。性感染症は症状が出ないことが多いけれど、男子は膿が出たり、女子は不妊症につながることがある。知らない間に人にうつすことがある」とリスクを伝える。
受講後、生徒たちからは「赤ちゃんは、望まれて生まれてきてほしい」「性交渉は今じゃない」という感想が寄せられる。
また、万一性被害に遭ったら、望まない妊娠を避ける手法として、高い確率で妊娠を阻止できる緊急ピルがある。使える時間が限られていて、病院での処方が必要だ。
子どもたちの声
- 彼女が部屋に入れてくれたら、キスや性交渉はOKってことなんだよね(中学生男子)
- 求められたら応じるのは、彼女の役目でしょ(中学生女子)
- 性交渉を彼氏から求められているけれど、嫌なので逃げ回っている。でも彼氏のことは好き(中学生女子)
- コンドームをすれば、妊娠は100%避けられる(高校生男子)
- 中学生でも妊娠すると思わなかった。初めての性交渉は妊娠しないって聞いた(中学生女子)
親ができることは
投げ出さず関わり続ける
接し方が難しい思春期。特に、性のことはデリケートだ。親は、どう関わればいいのだろう。
親が心がけたいこと
- 子どもとまめに会話する。
- 「あなたのことが大切」と伝える。
- SNSをやってみる。
- 情報は、本などで間接的に伝える。
- 子どもを信頼し、その子に合うアドバイスを!
Q.親にできることは
普段から、まめに接して子どもの様子を知っておくこと。何かあったら相談できるよう、「あなたのことが大切だよ」と伝えて、話しやすい雰囲気を作っておくこと。
昔は家に固定電話があり、子どもの様子が把握できたけれど、今は違う。食事や送り迎えの時など、意識して時間を作って、おしゃべりをして。できれば反抗期が始まる前から、子どもと会話を積み重ねておく。普段の様子が分かっていれば、変化に気付きやすい。
Q.ネットのリスクって
「ツイッター」は一般的だけど、連絡先を交換して県外の人とも気軽に出会える。「スナップチャット」や「ミックスチャンネル」などの動画サイトに、遊び半分できわどい動画を投稿する子もいる。使い方次第で、ネットはリスクが生じる。
まずは、親もSNSをしてみてほしい。何も知らないことが一番危険。
強制的に制限するのは難しいと思うので、SNSによる事件などを話題にして、リスクを意識づけて。
Q.反抗期で難しい
思春期は、親に関わられるとうっとうしいけれど、無関心だと寂しくなる難しい時期。「うるせー」と言われて親が引いちゃうこともあるけれど、ここが踏ん張り時! 伝えるべきことは伝えて、投げ出さずに関わり続けることが大事。
口が立つ子に口論では負けるかもしれないけれど、気持ちを伝える。外泊したいと言われてダメな理由を説明できなければ、「うまく言えないけど、お母さんは嫌」と言う。すると、子どもが考え直す時間が出てくる。直接でなく、ドア越しでもメールやラインでもいい。
Q.どこまで言うべき?
性の情報は親から聞くと嫌な子も多いので、間接的に伝えるといい。医師が書いた本(参照)を勧めたり、相談先を貼っておくのも手。うちは、さりげなく息子の本棚に本を置いていたら位置が変わっていて、読んだんだと分かった。
思春期に人を好きになったり、手をつなぎたい、と思うのは自然なこと。中学生が、親に頭ごなしに交際を否定されてすごく悲しかった、と言っていた。子どもたちから、もっと信用してほしいという声をよく聞く。子どもを信頼して、その子に合うアドバイスを。
Q.子どもが同性愛者かも
一定数LGBT(同性愛者、トランスジェンダーなど)の子どもたちがいる。私が相談を受けた時は、今慌てずに性を決めなくても、就職時までに揺れながら決めていいんじゃないかと伝える。親も動揺すると思うけれど、疎外感を感じて最悪の場合は自殺してしまう子もいるので、その子を否定せずに見守ってほしい。
百名さんお勧めの本
女の子にオススメ
- 「女の子、はじめます。ココロとカラダの成長ログ」北村邦夫著・監 小学館
- 「ポップコーン天使(エンジェル) 知ってる?女の子のカラダ」手丸かのこ/マンガ、山本直英/監修・解説 子どもの未来社
男の子にオススメ
- 「マンガでわかるオトコの子の『性』 思春期男子へ13のレッスン」村瀬幸浩/監修、染矢明日香/著、みすこそ/マンガ 合同出版
- マンガおれたちロケット少年(ボーイズ) 知ってる?おちんちんのフシギ 手丸かのこ/マンガ、金子由美子/解説・Q&A 子どもの未来社
どちらにもオススメ
- 「ティーンズ・ボディーブック」北村邦夫/著、junie編集部/著 扶桑社
親が読みたい
- 「イマドキ男子をタフに育てる本」岩室紳也/著 日本評論社
- 「性のこと、わが子と話せますか?」村瀬幸浩/著 集英社
知っておきたい相談先
沖縄県女性健康支援センター
妊娠・子育てSOS
098-989-1181
毎週月、火、木、金、土(祝日・年末年始を除く)午前9時~午後5時。県助産師会が、思春期や妊娠、子育てなどの悩みを受け付ける。面接相談も受け付け(要予約)
百名奈保(ひゃくな・なお)
那覇市嘱託助産師・保健師として母子保健に携わる。那覇市首里で、「助産院*きらきら」を開業
same-moon@comet.ocn.ne.jp
『週刊ほーむぷらざ』イマドキ子育て どう関わる? 思春期の性
第1618号 2018年7月26日掲載