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2025年8月21日更新

(株)かりゆし 経営企画室 DX推進グループ・マネージャーの上地杏奈さん|人、地域、観光 DXで幸せに[彩職賢美]

ITエンジニアや経営者としての経験を生かし、現在は(株)かりゆし 経営企画室DX推進グループ・マネージャーとして活躍する上地杏奈さん(39)。「現場目線の改革」を合言葉にホテル業界のDXを推進。取り組みは県内外から注目を集める。原動力は「人を大切にする」という思い。「誰もが自分らしく生きていける社会をつくりたい」と語る。

DX推進でゆとりと成長を

(株)かりゆし
経営企画室 DX推進グループ・マネージャー
上地杏奈さん

 

人生観を変えた大病
自分に正直に生きる

 場 を和ませる明るい笑顔と、さりげない会話にもにじむ聡明(そうめい)さ。ハイヒールで颯爽(さっそう)と歩く姿には自然な優雅さが漂う。そんな上地杏奈さんは、ホテル業を営む(株)かりゆしでDX(デジタルトランスフォーメーション※)を推進する中心人物だ。沖縄の未来を真摯(しんし)に見据えるまなざしには力強さが宿る。(※デジタル技術を活用し、企業や社会の変革を促す)

子どものころからコンピューターに興味があった。小学5年生のとき「親のパソコンでゲームをしていたら故障しちゃって、慌てて分厚い取扱説明書を見ながら、無事、初期化に成功した体験が私の原点」と笑う。また、米国のSFドラマ「スタートレック」の影響で、「多様性を認め合う社会をつくる人になりたい思った」と幼少期を振り返る。

県外大学を中退後、派遣社員で大手IT企業に勤務。システムエンジニアとして実務経験を積んだ。国や金融機関、医療機関向けのインフラ整備、大規模な通信機器更新、防災システム、那覇空港道路の通信設計などに携わった。

2010年に地銀系IT企業に転職。26歳で市役所のネットワーク全面更新の提案を一人で担い、100ページ以上に及ぶ提案書で受注を勝ち取った経験はキャリアアップにつながった。しかし多忙を極める中、30歳で心筋梗塞を発症。死を意識したことで人生観は大きく変わった。
 
          

「自分に正直に生きたい」とさまざまなことに挑戦した。経営もその一つだった。事業継承のため35歳で建設業に転職。IT化にも取り組んだが、激務とストレスで適応障害に。経営から外れ、「自分が得意なことで沖縄の役に立ちたい」と次のステージに選んだのが現在の会社だった。求人サイトで「経営企画室DX推進マネージャー」というDXを経営戦略として位置付けた部署に魅力を感じ、数々のオファーの中から選択した。

入社後は、自らホテルの厨房(ちゅうぼう)や清掃業務など現場を回った。社員食堂での会話やフロントスタッフとの雑談を通じて、部署間の連携不足や人員配置のひずみを肌で感じた。机上の改革ではなく現場の声に耳を傾けることが、一貫したスタンスだ。

その成果が現れたのが、ホテル業界で全国初となる「Jtas × NEHOPS」システム連携による清掃業務のデジタル化だった。タブレットでリアルタイムに業務指示と完了報告をやりとりし、指示書作成時間は従来の1時間から5分に短縮。電話のやりとりも75%削減した。忘れ物もデータで管理できるようになり、問い合わせに即対応できるようになった。DXでスタッフの心身のゆとりにもつながり、取り組みは県内外から注目を集めた。

上地さんは「技術だけで現場は変わらない。対話を繰り返し、小さな成功体験を積むことがDXの定着には欠かせない」と語り、DXを「経営変革の一部」と位置づける。単なるシステム導入で終わらせず、人事評価制度との連動、サービスロボットの活用から地域教育の底上げまで視野に入れる。その根底には「沖縄の子どもたちが、自分の力で生き抜ける社会を作りたい」という思いがある。

「沖縄は助け合いの文化がある一方で、“稼ぐこと”に対する意識が弱い。私はそこに仕組みを導入して、誰もが対等にチャンスを得られる環境を作りたい。人、地域、観光をDXを通し幸せにしたい」と語る。今後は「タッチポイントDX」と名付けた物理空間とデジタル空間をシームレスにつなぐ仕組みづくりにも取り組みたいと意気込む。

現場主義と先見性、そして何より優しさに裏打ちされた改革志向。そのまなざしの先に、誰もが輝く多様で幸せな未来がある。


 DXは経営改革の一部 

(グラフは上地さん提供)

「経営課題を乗り越え、企業を成長させるためにはDXは必要不可欠」と力強く語る上地さん。しかし「DX推進の予算はない、うちには必要ない、という思考の経営者がまだ多い」と指摘する。

上地さんがそんな経営層へDX推進を説明するために作ったのが上の表だ。DX推進の目的は「経営課題の解決」と「付加価値の創造」だが、経営環境は、環境プレッシャー(政治、経済、社会、技術)の影響を受けて常に変化する。つまり、「課題の解決ばかりを繰り返していると、いつまでもプラスにすることができない。まずはスタッフの目の前にある雑多なルーティンワークをDXで解決し、ゆとりをつくることが、経営課題の解決と付加価値の創造につながる」と説明する。


「Mrs of the Year」全国大会へ 

Mrs of the Year沖縄大会で特別賞を受賞した上地さん
(写真は上地さん提供)


上地さんはことし7月、「Mrs of the Year」沖縄大会で二つの特別賞を受賞し、11月に開催される全国大会への出場を決めた。

同大会は見た目の美しさでなく、チャレンジし続ける行動の美を発信することを目的とする。そこに共感し挑んだ上地さん。見た目を整えることは誰かのためでなく、自分を信じる行為。「外見は内面の一番外側」と語る。

上地さんは心身のバランスを崩し、自らを見失いかけた時期に「心と体の健康を整えること」を学び、自分を大切にすることで家族の幸せを支える力が育まれていくことを実感。美容やファッションを通して自分を見つめ、自信を取り戻していった。LGBTQ+当事者としてのアイデンティティーと向き合いながら、多様な生き方を肯定するメッセージも発信している。「年齢や肩書ではなく、挑戦し続けることそのものが美」と上地さん。その挑戦が誰かの勇気となり、「悩みながらも前を向こうとする背中をそっと押せる存在になりたい」と語る。

現在、上地さんは大会参加にかかる資金造成に取り組んでおり、協力を呼び掛けている。

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プロフィル/うえち・あんな
1985年、那覇市出身。沖縄尚学高等学校卒業。県外大学を中退。大手IT企業、県内銀行系列の企業でシステムエンジニアとして勤務。2016年、心筋梗塞を発症。17年、県内建設業で経営に携わる。23年、過労とストレスで適応障害に。24年、(株)かりゆし入社。経営企画室DX推進グループ・マネージャー就任。25年、「Mrs of the Year沖縄大会」で二つの特別賞を受賞。11月に東京で開催される全国大会に出場。



今までの彩職賢美 一覧
撮影/比嘉秀明 取材/赤嶺初美(ライター)
『週刊ほ〜むぷらざ』彩職賢美<1449>
第1984号 2025年08月21日掲載

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