彩職賢美
2016年5月12日更新
[彩職賢美]化粧の力で心元気に【永井美知代さん・資生堂ジャパン(株)沖縄支社】
才色兼備『沖縄で働く女性は、強く、美しい』
地元目線でキレイ提案
美容統括部 美容部長・永井美知代さん【資生堂ジャパン(株)沖縄支社】
化粧品メーカー「資生堂」のグループ会社、資生堂ジャパン(株)沖縄支社(那覇市)。美容部長を務める永井美知代さん(48)は同社唯一の県出身女性管理職として県内の美容部員(ビューティーコンサルタント、以下BC)を統括、現場の育成などを担う。「お客さまと一緒にキレイになる方法を考える」をモットーに、ニーズに合わせたサービスを展開。美への探求や提案を続けている。
母親のメーク道具は宝箱だった。「色とりどりの化粧品に心が躍った」と永井さん。成長し、子どものころの化粧や美への憧れは、化粧品のメーカーで仕事へつながった。
1986年、資生堂販売沖縄支社(当時)に入社。店頭で化粧品の販売やメーキャップなどを行う、BC(ビューティー・コンサルタント)の業務を任された。「華やかな世界にワクワクした」と振り返る。電話帳ほど厚いマニュアルを読み込み、トレーニングの日々。「練習すればするほど自分の実になった」と努力は惜しまなかったが、重い荷物の運搬、常に立ち仕事で接客するなどの重労働と、想像と現実とのギャップに悩んだこともある。
そんな永井さんを支えたのは「顧客」の存在だ。話を聞き、寄り添い、一人ひとりに合ったスキンケアやメーキャップ方法を提案。「お客さまがうれしそうに帰って行くと私も元気になり、励みになった」と目を細める。さらに「仲間の存在も大きかった。励まし合えたからやってこれた。お客さま、仲間たちには感謝している」と話す。
だからこそ「地元第一の視点」は欠かせない。「例えば、沖縄は他県に比べると紫外線が強く、日焼け止めは必須。塗り方や乾燥の対策などスキンケアの提案や化粧品の選び方、メークの仕方など、BCは皆さんの声を聞き、ニーズに合わせたサービスを展開できるのも強み」という。「県外、国外へと視野を広く持つことは大切だけど、地元のお客さまを第一に丁寧に携わっていきたい」と意気込む。
2005年、美容統括企画部(当時)に異動。12年には美容統括部美容部長になった。県内のBCの統括や指導、お客さま相談など幅広い分野を担い、縁の下から現場を支える。
目指すのは「一人一人の強みを伸ばす教育」だ。多様性を生かし、ポテンシャルを最大限に発揮させ、活躍できるような指導を提案。積極的に現場と向き合い、アドバイスの時は「具体的に伸びた部分を伝え、励ます。そして次のステップも提案する」という。自信を持たせることで技術面もメンタル面も伸ばそうという方針だ。
永井さんは「私たちの仕事にはこれで終わりという到着点がない。だからこそ、やりがいもある。現場とも常に前向きで刺激し合い、人としても成長できる関係でありたい」と笑う。
「化粧品」は「物」ではないとキッパリ言う永井さん。そう強く実感したのは東日本大震災の被災地のボランティアとして活動した時だ。被災者へマッサージやメーキャップを支援するも、「震災の傷も癒えてなく、みんな表情が暗く、下をむいていた。どんな言葉を掛けていいか分からなかった」。
だが、続けるうちにポツポツと震災の記憶を語り始め、涙を流す人も。それを聞きながら手をさすり、共に涙した。「女性はキレイになるとうれしくなる。皆さん、生きていることや喜びを感じてくれ、自然と笑顔が湧き上がってきた。化粧の持つパワーを実感した瞬間。この仕事をしていて良かった」と声を詰まらせた。
「『化粧の力』でたくさんの幸せを増やし続けたい。この仕事は誇り。思いやスキルを後進に伝えていきたい」と、願い続ける。
メークやマッサージで被災地支援
被災地でボランティアする永井さん(写真中央)=2011年(永井さん提供)
東日本大震災から半年後、永井さんは全国から集まった同社のメンバーらと宮城県の仮設住宅でメーキャップやマッサージなどのボランティア活動を行った。「まずは水や食べ物と言われそうだけど、こんな時だからお化粧したいという声も聞いた」と永井さん。「赤い口紅をしっかり引いて元気を出したい」という被災地の女性たちの姿に化粧が心の支援になると実感した。
母としての視点からアドバイスも
家庭に戻れば3人の子の母でもある永井さん。家事や子育てだけでなく、仕事との両立など悩みを抱える部下にとっても心強い味方だ。「家族も大切だし、仕事も好き」。家族と話し合い、協力を得ながら両立を選んだ経験から、話を聞きアドバイスすることもある。
必需品は日焼け止め
永井さんが特に外せないと話すアイテムが「日焼け止め」だ。デスクワークが多くエアコンなどで乾燥しやすいため、潤い成分の高い物をチョイス。
永井さんのカバンの中身!
子どもたちの写真や手紙は手帳に挟み、常に持ち歩く宝物。乾燥対策のミストやハンドクリームも必需品。ミストはメークの上からひと吹きしてリフレッシュ!
永井さんのハッピーの種
Q.休みの日の過ごし方は?子どもたちがそれぞれ部活を頑張っているので、その応援や送迎がメーンです。特に土日は出発時間を細かく決めて、ムダがないように動くことも少なくありません。長女はこの春に運転免許を取得、自分で動けるようになったので、昨年度までのように時間に追われることは減りました。普段、一緒に過ごせる時間が少ないので、せめてこれだけでもできればと思っています。
Q.忘れられないお客さんとのエピソードは?
仕事を始めたばかりのころ、お客さまとして出会った母より年上の女性です。プライベートで、偶然に何度も会うことが重なり、親しくなりました。出会って20年以上ですが、家族ぐるみでも仲良く、もう一人の母のような存在です。
Q.メークをすると変わることって?
メークは仕事モードへのスイッチであり、体や心のバロメーターでもあります。疲れているときこそ、お手入れやメークを丁寧に。そこで自分を見つめ直し、気持ちにメリハリを付けるのも私流。
資生堂ジャパン(株)沖縄支社
電 話:098-857-9560
PROFILE
ながい・みちよ
1967年、宜野湾市生まれ。高校卒業後、資生堂販売(株)沖縄支社に入社。美容部員(BC=ビューティー・コンサルタント)として専門店や大型商業施設、デパートでの業務にあたる。2005年、企画部に異動。社員教育や社外セミナーを担当する。12年から美容統括部美容部長に。県内BCの統括や教育全般の指導を行う。現職。3児の母。
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撮 影/比嘉秀明
編 集/相馬直子
『週刊ほーむぷらざ』彩職賢美<1214>・第1504号 2016年5月12日掲載
この記事のキュレーター
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- 相馬直子
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編集者
横浜市出身、沖縄で好きな場所は那覇市平和通り商店街周辺と名護から東村に向かう途中のやんばる。ブロッコリーのもこもこした森にはいつも癒されています。「週刊ほ〜むぷらざ」元担当。時々、防災の記事なども書かせていただいております。被災した人に寄り添い現状を伝えること、沖縄の防災力UPにつながること、その2点を記事で書いていければいいです!