彩職賢美
2015年1月15日更新
[彩職賢美]那覇市市民防災室(那覇市消防局出向)永島加奈子さん|多くの命救うため防災地域に広める
那覇市初、県外出身の女性消防士であり、救急救命士の永島加奈子さん。現在は那覇市役所市民防災室に出向し、地域の防災計画作りや講話、災害時の避難所の開設や情報収集など、防災全般に関わる仕事を担う。看護師の母の影響から「人を助ける道」を志し、救急救命、消防の現場で多くの人命救助に携わってきた。命を守るため、防災を広めるため、日々奔走する。
地域の備えに体験生かす
那覇市初県外出身の女性消防士
那覇市市民防災室(那覇市消防局出向)
永島 加奈子さん
看護師の母親の背中を見て育ったこともあり、「人を助ける道に進みたいと思うようになった」と医療を志すきっかけを語る。中でも興味を持ったのが、救急救命の仕事だ。
救急救命の仕事はほぼ消防署での業務のため消防職員となる必要があった。しかし、女性隊員の採用は限られており、「現場に出たい」その思いから女性を採用している自治体を探し、那覇市消防局にたどり着いた。
県外出身初の女性隊員として採用、消防学校を卒業後、警防隊勤務を経て救急隊に配属。念願の救急救命士の仕事は、一日の大半を救急車の中で過ごすような日々でも「いち早く現場に急行し、患者さんを助けたり、役に立てることがやりがい」とほほ笑む。体力面など、男性隊員と比べるとかなわないこともあるが「救助を待つ女性の患者さんが同性の隊員であることで安心してもらえるのも私ならでは」と話す。
しかし、1分1秒を争う過酷な仕事、悲惨な現場に心のバランスを崩す隊員も少なくない。永島さんが心掛けるのは「現場ごとに気持ちを切り替える」こと。「心残りは数え切れない。同じことを繰り返さないよう次に生かす。でないと助けられるはずの命が助けられなかったり、仲間を失ってしまう」。
「辞めたいと思ったことはない」ときっぱり。「目指してきた仕事なのだから、ふがいないと思ってもこの仕事が嫌になることはない」と前を向く。
心が折れそうなときの支えは家族や仲間たちだ。「一人ひとり顔が浮かぶたび、頑張らなきゃ」と自身を奮い立たせる。
那覇市市民防災室で業務にあたる永島さん=中央。地域の防災計画や自主防災組織など防災に関わる業務で那覇市内を飛び回る
13年4月消防、救急の現場を離れ那覇市の市民防災室に出向。地域の防災計画作りや防災講話、災害時の避難所の開設や安全確保のための情報収集など防災全般に関わる。
沖縄は台風以外の災害が少ないこともあり、「他県と比べると防災意識が低い。私もかつてそうだった」と永島さん。奈良県の実家で阪神大震災に遭い、震度4の揺れを体験。被害は免れたが初めて体感する大きな揺れの恐怖は「忘れられない」。
防災への思いをあらたにさせたのは、進学先の専門学校での生活だ。更地のままの住居跡や復興半ばの町。「友達の被災状況や近い人が亡くなった話など、身近な人から聞くのは初めて。直接被災していない私でも想像するだけで恐ろしく、悲しかった」。
また、「燃えている町を前に消火ができない、助けを求めていても助けられない、そんな話をいくつも聞き、大きな災害では消防だけでは間に合わないことを知った。だから個人、地域の備えが必要」と訴える。
永島さんは震災の話や消防の現場で目の当たりにしてきた光景を交えながら防災の講和や地域の整備などに臨む。「災害経験のある職員は少ない。私の話が役に立てば」と願う。
そして「災害への不安は誰しも持っている。安心して生活できるよう、もっと地域に出て行って防災を考えたり、自助、共助の意識が高まるよう一緒に備えていきたい」。一人でも多くの命を救うため、挑戦は続く。
永島さんのハッピーの種
Q.休みの日は何をしていますか?
消防のときは24時間勤務をして2日休みというローテーションだったので、仕事明けに運動して飲みに行っていました。学生時代、バスケやソフトボールなどの部活に入っており、体を動かすことが好きなので気分転換にもなります。現場が過酷な分、切り替えをすることが大切なんです。運動はランニングがメーンですが2~3時間走りますよ。
Q.沖縄での生活はどうですか?
あまりせかせかしていないところは私にあっているなと感じます。食べ物も大丈夫ですが、特に驚いたのが沖縄の結婚式です。規模も時間も余興の数も私の地元とまったく異なりびっくりしました。
それと離島にもっと行ってみたいです。八重山は友人が住んでいることもあり、たまに行くのですが、宮古島は無いので、次は宮古かな~と思っています。ただ、仕事がら予定が組みにくいので実現が難しいですね。
那覇市役所 市民防災室
098-861-1102
PROFILE
永島加奈子(ながしま・かなこ)1979年、奈良県生まれ。2002年、神戸医療福祉専門学校卒業(兵庫県三田市)、姫路市消防局非常勤勤務を経て、03年、那覇市消防局に採用。警防課や救急隊などで消防活動、救急救命などに携わる。2013年より那覇市役所総務部市民防災室に出向。市民に向けた防災の講和や地域防災計画の策定などにあたる。
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撮影/比嘉秀明・編集/相馬直子
『週刊ほーむぷらざ』彩職賢美<1153>
第1435号 2015年1月15日掲載
この記事のキュレーター
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- 相馬直子
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編集者
横浜市出身、沖縄で好きな場所は那覇市平和通り商店街周辺と名護から東村に向かう途中のやんばる。ブロッコリーのもこもこした森にはいつも癒されています。「週刊ほ〜むぷらざ」元担当。時々、防災の記事なども書かせていただいております。被災した人に寄り添い現状を伝えること、沖縄の防災力UPにつながること、その2点を記事で書いていければいいです!