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2012年12月13日更新

海のゆりかご「豊かさ育む貴重な場所」

海んちゅ写真家 古谷千佳子のフォトエッセー「潮だまり」vol.21



海のゆりかご

豊かさ育む貴重な場所


潮の干満で全く異なる景色にさえ見える沖縄の海辺の景観。満潮時には海水で満たされた沿岸も、潮が引くとサンゴが積み重なって出来た岩盤が水面上に顔を出し、まるで陸の延長のように広がる。ワタンジと呼ばれるその「道」が出来上がると、泳げない人でも深い海との境目まで、歩いて渡ることができる。

その所々に現れる「潮だまり」を覗きこむ。そこでは、コバルトブルーや黄色、白黒模様のパンダのような魚たちが迎えてくれる。まるで海中に咲く花のようなオレンジや赤色のケヤリ、人間の脳のような不思議な模様や面白い形のサンゴたちが太陽の光に照らされ、キラキラと輝きを放つ。

「こんな素晴らしい海が、こんな近くにあったんだ」。沖縄の海を知って約25年。ダイビングから始まり写真家となった私は、海人とともに漁場を巡って、いつしか浜からどんどん沖へと向かっていた。

11月17、18日に開催された「全国豊かな海づくり大会」に合わせた写真展示のため沿岸の海を潜ることになり、忘れかけていた初心を思い出すことができた。

沖縄のイノー(礁池)や干潟は、多くの生き物が多種多彩に生息しているので、生物観察にもってこいの場所。水族館も面白いが、波音や潮風にさらされながら、海辺に立つその情報量の多さは計り知れない。その身を海辺に置くと、匂い、音、皮膚への響きなど五感を刺激される。リーフに下り一歩足を踏み込むと、鳥たちがばさばさっと飛び立つ。海の生き物を餌とし、冬を過ごす鳥たちの存在に気が付く。海辺のさまざな生き物の存在を知り、海と陸の繋がりを体感できる。

こんなイノーや干潟が、卵を孵化(ふか)させ稚魚を育てる大切な場所。森の養分が川を伝って干潟やイノーに流れ込み、それらの栄養分が新しい命を育み、やがて大海原へ出ていくのだ。沖で捕っている魚も、沿岸域が守られないと子孫を残せない。

サンゴ礁が作り出すリーフやイノーなどの地形は、日本では琉球列島あるいは南西諸島と呼ばれている島々だけに見られる貴重な海だ。こんな素晴らしい海と、その繋がりを守ることが「豊かな海づくり」だと強く感じながら撮影し続けた。

この海の魅力をもっともっと知ってほしい。そんな願いを胸に、来年も撮影に挑みたいと思っている。




[文・写真]
古谷千佳子(ふるや・ちかこ)
那覇市在住。海の仕事に従事、スタジオで写真を学んだ後、海人写真家となる。海・自然と調和する人々の暮らしや伝統漁業を主に撮影する。TBS「情熱大陸」などに出演。著書に 写真集「たからのうみの、たからもの」、「脳を学ぶ2」(共著)ほか
http://chikakofuruya.com/​

 
古谷千佳子のフォトエッセー『潮だまり』
週刊ほーむぷらざ 第1329号・2012年12月13日に掲載

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