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2016年9月22日更新

[彩職賢美]株式会社おきなわedu 代表取締役 比嘉佳代さん|生きる力育む学び

「健常の子だけでなく、発達障がいや学習障がいなどがある子どもたちも安心して過ごせる場を」と学童保育や児童デイサービスなどを展開する株式会社おきなわedu(エデュ)。代表取締役の比嘉佳代さん(47)は障がいがある長男の出産を機に事業をスタート。子どもたちの居場所作りと同じ境遇の親たちのケアを実践。目指すのは「共に生きる力を育む『共育』」だ。

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多様性を受け入れる場に

株式会社おきなわedu
代表取締役
比嘉 佳代さん


那覇市石嶺の学童保育「あんじな」。「佳代、学校でね!」「聞いて!」。下校してきた子どもたちが、いの一番に飛び込むのが比嘉さんのところだ。われ先にと話しかけると比嘉さんは仕事の手を止め耳を傾け、声をかける。「今日は何があったの?」。

忙しいときには「忙しい」と伝えるし、叱るときは「なぜいけないのか」ちゃんと考えさせ、叱る。「子どもと大人との間を信頼関係でつなぐことも私たちの仕事の一つ」と言う。

子どもたちの中には学習障がいや発達障がいなど困難を持つ子もいる。障がいが理解されないことによる誤解や偏見など、社会の中での生きにくさを感じていた子どもがほとんどだ。そんな環境で子どもたちは「特に大人への不信感を抱いていた」という。

比嘉さんらは子どもたちを施設の中で伸び伸びと過ごさせる。「大きな声を出してもいい、思いっきり動いてもいい、自由にさせ過ぎと言われることもあるが、このような行動にも理由がある。子どもたちと向き合いその根本を探り、社会に出ても自立できる生きる力を育む」と話す。通う子どもたちは個別でケアをし、一人ひとりと目線を合わせ接することで絆を育む。

「大切なのは子どもたちの多様性を受け入れること。私たちが目指すのは一緒に育つ『共育』」と語る。


県内の経済団体に18年以上勤務。事務局次長も務めたキャリアウーマンだった。転機は41歳のときの出産。長男は妊娠5カ月の時、ダウン症と診断された。産まない選択肢はなかったが、「妊娠の喜びから悲しみの底に突き落とされるようだった」。

周囲からは「障がいがある子どもを育てながらの仕事は無理」との声も。しかし、「障がいを理由に人生を諦めるような生き方はしない」と、両立させる方法を模索。そんな時、知人から「起業しては?」とアドバイスされた。

「当事者の私が起業をすることで同じ境遇の親たちの希望になりたかった。それに子どもたちが自分の足で歩きだせる力と将来の自立に向けた支援ができる場を作りたい」と決意した。

2011年、株式会社おきなわeduを立ち上げた。これまでやってきた経営指導の知識と実際現場で体験する状況とは全く違った。銀行から融資を受けるのも一苦労。「女性の起業は大変」と身をもって知った。なにより「障がいに対して、より専門的な知識が必要」と痛感。パニックを起こした子どもの対応方法もわからなかった。業務の傍ら、必死で勉強をした。

代表である前に当事者でもある比嘉さん。教室前を憩いの場として開放。迎えの保護者と話し込むことも少なくない。「ここに預けると安心して働ける」「話すことで子育てに悩まなくなった」との声を聴いた。

「私たちが実践するのは子育てのゆいまーる。私も私の息子には指導をしない。それはほかの職員に任せ、自分の子どもには愛情だけをかける」。見守り合うのも特徴の一つ。そしてけんかやトラブル、挫折もしっかり経験させる。「解決する術を学び、巣立ってほしい。どう生きるかを長いスパンで教えるのもここの役割」という。

順風満帆、とはいかないが決して歩みは止めない。子どもたちの笑顔が比嘉さんを後押しする。




 

 

スタッフのスキル向上も

那覇市首里石嶺にある学童保育「あんじな」。あんじな、とは沖縄の方言で「安心な場所」という意味がある。午後4時ごろから、学校を終えた子どもたちが下校してくる。宿題をしたり、遊んだり、個々に合わせたプログラムを実施、ケアする。ほかにも「ビジョン・トレーニング」という、学習障がいのある子どもの身体感覚を改善させるプログラムも行っている。
スタッフの中には発達障がいのある子どもを持つ親もいる。当初は福祉の知識に乏しかったが、研修を重ね、知識を深めた。現在も県内外の研修などに積極的への参加、勉強会なども開催もする=上写真(写真は提供)。



 

宝物は子どもたちからの「言葉」

比嘉さんの宝物は通ってくる子どもたちが作ってくれたビーズなどのアクセサリーや似顔絵など=写真(提供)。そして子どもたちがかける「言葉」という。「ぶつかることも多いけど奮い立たされます」と比嘉さんは満面の笑みを浮かべた。

 

家族のサポートが欠かせない

常に第一線で働き続ける比嘉さんに対し、家族は協力的だ。「言い出したらやり続ける私の性格を知っているから」と苦笑い。夫や両親も家事や育児を積極的にサポートしてくれる。
また、長男を「産む」「産まない」の会議の場で比嘉さんの背中を押したのは当時小学生だった長女だった。弟の障がいや両親の背中を見て育った彼女は、医師を志し勉強に励んでいるそう。

 

比嘉さんのハッピーの種

Q.落ち込んだときにすることは?

Dreams Come Trueの「何度でも」という曲を聞き、自分を奮い立たせます。この曲の歌詞からとても元気をもらいます。

Q.家ではどんなお母さん?

怖くは無いと思います(笑)。せっかちな私ですが、子育てはじっくり、「待てる親」を心掛けています。
特に子どもたちからの話を聞くことを大切にしています。何時間でも話し合い、向き合います。特に長女とはささいなことから難しい話でもなんでも話しますね。
子どもたちが考えていることに対し、夫や私が決めつけることはしません。本人のモチベーションを下げないようにしっかり話を聞き、やる気を引き出します。
息子はまだ小さいのですが、掃除や洗濯など、家事が好きなので一緒に遊びながら取り組んでいます。


■問い合わせ先
(株)おきなわedu
沖縄県那覇市石嶺4-366-1
098-943-2845




PROFILE
比嘉佳代(ひが・かよ)1969年、那覇市出身。短大卒業後、航空会社勤務などを経て、県中小企業家同友会に勤務。事務局次長まで務める。2010年、息子の出産を機に退職、11年(株)おきなわeduを立ち上げる。学童保育のほか保育園や放課後デイサービスなどを展開。年齢は4歳~中学3年生まで現在80人前後の子どもたちが通う。1男1女の母。



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撮影/比嘉秀明
編集/相馬直子
『週刊ほーむぷらざ』彩職賢美<1228>
第1523号 2016年9月22日掲載

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相馬直子

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編集者
横浜市出身、沖縄で好きな場所は那覇市平和通り商店街周辺と名護から東村に向かう途中のやんばる。ブロッコリーのもこもこした森にはいつも癒されています。「週刊ほ〜むぷらざ」元担当。時々、防災の記事なども書かせていただいております。被災した人に寄り添い現状を伝えること、沖縄の防災力UPにつながること、その2点を記事で書いていければいいです!

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