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2016年9月8日更新

[彩職賢美]ル・ココン代表・桃原章子さん|紙パックで小物をデザインする

雑貨ブランド「le cocon(ル・ココン)」を主宰するデザイナーの桃原章子さん(43)は、牛乳など紙の飲料パックを再利用してかばんや小物を作る。桃原さんとともに製作に当たるのは心身にハンディのある人々。商品開発を通してリハビリや自立支援の輪を広げている。そこには「メードイン沖縄の商品を島外に」との思いも込められている。

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商品通し、自立支援にも

ル・ココン代表・デザイナー
桃原 章子さん


那覇市牧志のセレクトショップ「RENEMIA」の一角に桃原さん主宰の「ル・ココン」のかばんがディスプレーされていた。レザーにも帆布にも見える質感だが手触りはツルツル。しかも持つと軽い。手に取った客が中を開き、驚いた表情を見せた。「牛乳パックなんですね!」。

桃原さんは「興味を持ち、驚いてくれてうれしい」とにっこり。
「ル・ココン」では牛乳などの紙の飲料パックを再利用し、かばんや名刺入れなどの小物類を製作。商品はすべて手作業で同じものは二つとない。

2014年の販売以来、400個以上を売り上げ、デザイン的にも面白いアイテムを好む人や一点ものの商品を求める人など、幅広い年齢層が支持、県外から買いにくる人もいる。

桃原さんとその製作を担うのは、心身に障がいがある人たちだ。「セレクトショップで販売することで福祉に関心がない人の目にも留まり、商品を通して製作にあたる障がい者のことを知るきっかけにもなる。そして彼らの社会参加にもつなげたい」。商品にはそんな思いが込められていた。



高校卒業後、上京。ジュエリーデザイナーや障がいのある子どもへのアート教室の講師などを経て、11年に帰沖。親子アート教室などを企画する傍ら、福祉事業所で指導員を務めた。

そのとき気になったのが作業が少なく、利用者が手持ち無沙汰を感じているようだったこと。「ほかにも作業を」と考え、思い出したのがインターネットで見つけた紙パックを再利用したかばん作りだった。作業の一環として取り入れようと提案するとほかのスタッフも関心を示した。

牛乳パックをもみ、生地を作るところからスタート。一つ一つ作業を進めるうちにできることが増え、作業も細分化できるようになった。その成果に商品化に向けた手ごたえを感じた。

試行錯誤を重ねること3カ月、第1号の商品が完成。使い勝手のいい形を考え、壊れにくく、不具合が出た場合も手直しができるよう工夫し、簡単に作れる方法を取り入れた。初めて披露した福祉まつりでは来場者の目を引き、用意した商品は完売した。

次第に県外での催事や取り扱い店が増え、注文も相次ぐと利用者にも変化が表れだした。「身体能力が回復の兆しを見せた人、日々のモチベーション向上につながった人、誰もが生き生きしだした」とリハビリ効果が上がったことを実感した。

昨年「ル・ココン」を立ち上げ、ことし1月に独立。製作や商品開発を続けるとともに、事業所を増やすなど精力的に事業を展開。「一つの産業として確立させたい。ただし、独占するのではなく仲間を増やしたい」と願う。いずれは、高齢者やシングルマザーたちも仲間に加え、ハンディがあっても担える仕組みを作り、自立のツールとしてつなげていくつもりだ。

桃原さんには目標がある「メードイン沖縄」の商品をコンテナにたくさん詰めて県外、海外へと出荷すること。「新たなアイテムを生み出し、みんなが力を合わせて作った成果を沖縄から発信していきたい」と意気込む。

紙パックの真っ白なかばんには明るい未来が描かれている。




 

 

作業のお供は愛用アイテム

「カッターマットとクロッキー用のペン(上写真)は20年以上使っているなくてはならないもの」と桃原さん。自分の体の一部のような使い心地。長年使い込んできたため作業も早い、という。
 

アートが社会を動かす

尊敬する人はアーティストの照屋勇賢さん。特に宜野湾市の佐喜眞美術館で展示されていた紅型で染められた戦闘機などのモチーフ、沖縄が抱える社会問題を訴えた作品には感銘を受けたそう。桃原さんは「アートが社会を動かす、それを改めて教えられた」と話す。


できたばかりの商品を届ける桃原さん。那覇市のセレクトショップ「RENEMIA」にて(編集部撮影)
 

県内7カ所で販売中

商品は県内で7カ所、東京でも1カ所で販売する。使用する紙パックは県内メーカーから使用の許可をもらい、商標使用許諾契約を結んだもの。「パッケージのかわいいデザインは持つ方はうれしいし、メーカーは広告になる。双方にとってのメリットがある」と桃原さん。
また、容量が946ml(4分の1ガロン)と表示されたパッケージを使うこともこだわりの一つ。「かつてアメリカの統治下にあったということの名残。そのことを紙パックを通して改めて伝えたい」との思いも込める。
さらに夢は「47都道府県すべてのご当地紙パック」でかばんをつくることだ。

 

桃原さんのハッピーの種

Q.落ち込んだときの気分転換は?

海、川、湧き水、とにかく水辺にホッとします。ダイビングも大好きで、海に潜るとトゲトゲした気持ちが丸くなって優しくなれる気がします。
キャンプも好きで、一人でも行ったりも。最近は海もキャンプもなかなか行けないですが、少し時間ができたら湧き水に触れ、深呼吸、リフレッシュしています。
宜野湾市大山のヒージャーガーが特にお気に入りです。

Q.うれしいことは?

かばんやアイテムを使っているお客さんから商品の話を聞くことです。私自身のモチベーションにもつながるし、本当にうれしい。
うちの商品は直せば何度でも使える。一度は役割を終えた牛乳パックがよみがえるんです。


■ワークショップのお知らせ。10月8日(土)15時から浦添市の宮良そば(沖縄県浦添市当山1-7-17)にて、牛乳パックを使った小物入れ作りを実施。2000円(宮良そば特製ジューシー付き)、要予約。

■問い合わせ(桃原)
090-1799-4208
lecocon.okinawa@gmail.com
 




PROFILE
桃原章子(とうばる・しょうこ)1973年、宜野湾市生まれ。高校卒業後上京、赤坂宝石彫金学院(東京都)でジュエリーメイキングを学ぶ。ジュエリーデザイナーとして働いたのち、2011年帰沖、イベントや美術館スタッフ、親子アート教室を企画、運営を経て福祉事業所職員に。2015年に「le cocon(ル・ココン)」を立ち上げ、ことし1月に独立。現在、A型事業所Hope(那覇市)の一角を借りて商品開発などをおこなう。



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撮影/矢嶋健吾
編集/相馬直子
『週刊ほーむぷらざ』彩職賢美<1227>
第1521号 2016年9月8日掲載

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相馬直子

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編集者
横浜市出身、沖縄で好きな場所は那覇市平和通り商店街周辺と名護から東村に向かう途中のやんばる。ブロッコリーのもこもこした森にはいつも癒されています。「週刊ほ〜むぷらざ」元担当。時々、防災の記事なども書かせていただいております。被災した人に寄り添い現状を伝えること、沖縄の防災力UPにつながること、その2点を記事で書いていければいいです!

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