健康
2024年9月26日更新
胃もたれ・食欲不振など 胃が弱い!|胃の未病の改善にも鍼灸|鈴木先生が解説 なるほど鍼灸⑥
体を各パーツに分けて診る西洋医学と異なり、全身を診る東洋医学の鍼灸は、西洋医学だけでは改善しない症状の最後の砦ともいわれます。このコーナーでは、鍼灸の治療法や特徴、その魅力について、沖縄統合医療学院の鈴木信司先生が分かりやすく紹介します。
鈴木信司(沖縄統合医療学院 学校長)
琉球大学大学院医学研究科博士課程修了、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修了。医学博士。県内初の鍼灸学科を開講した沖縄統合医療学院学校長。はり師・きゅう師等の国家資格と養成教員資格を持つ。全日本鍼灸学会、日本伝統鍼灸学会等に所属。
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厳 しい暑さが続いた今年の夏。つい冷たい物をとり過ぎて、胃の調子を崩した方も多かったのではないでしょうか。胃が痛むというわけではなく、病院へ行くほどではないけれど、胃もたれや食欲不振といった胃の不調を感じるのなら、それは胃の病気になる一歩手前の未病のサインかもしれません。胃の不調は東洋医学では五臓六腑の脾胃の不調と考えます。冷たい物をとり過ぎるとおなかが冷え、気(エネルギー)、血(血液)、津液(リンパ液などの体液)の循環が悪くなって、消化吸収が悪くなるのです。特に体幹が冷えやすい人はなりやすいといえます。消化の悪い油っこい物のとり過ぎ、体を冷やす原因とされる白い砂糖のとり過ぎ、飲酒や喫煙などの生活習慣、自律神経の乱れやストレス、加齢なども胃の不調の引き金となります。
胃の症状に有効な
胃の六つ灸のツボ
胃の未病を鍼灸で改善する際は、東洋医学に基づき、顔、舌、腹部、脈を診る四診で証を立て、体質や症状の原因を見極め、胃の不調に有効な「中脘」、「胃の六つ灸」、「足三里」などの経穴(以下ツボ)を刺激します。「中脘」は腹部の胃の位置にあり、胃腸の調子を整え、自律神経の乱れを整える効果もあるツボです。「胃の六つ灸」は、胃の裏側の背中にある「膈兪」、「肝兪」、「脾兪」の三つのツボの左右合わせた六カ所で、その名の通り胃の調子を整える効果があり、はり師・きゅう師の国家試験にも出るほど有名です。「足三里」は膝の痛みに有効なツボとして以前に紹介しましたが、消化促進や食欲増進などにも効果があることで知られています。
鍼灸の施術では、これらのツボに、灸で温熱刺激を、鍼で機械的刺激を与え、人が本来持つ自然治癒力をサポートして回復へと導きます。数ある鍼灸の手法の中でも、鍼の柄に球状に固めたもぐさを付けて燃焼させ、鍼と灸の刺激を同時に与える合わせ技「灸頭鍼」は、胃の不調の施術にも適しています。
こうした鍼灸の施術は、胃の症状の緩和にはもちろん、継続することで胃が弱い体質そのものを改善する効果が期待できます。ただし、頻繁に食後または空腹時に胃痛があったり、キリキリと胃に強い痛みを感じたりする場合は、ぜひ医療機関を受診してください。
ツボ刺激でセルフケア
胃の調子がよくない時
胃もたれや食欲不振などが気になるときは、「中脘(ちゅうかん)」と「足三里」を、押しやすい指で、気持ちいい程度の強さで10秒ほど、くり返し押してみてください。胃の調子がよくないときは、胃の裏側の背中の筋肉も張りがちなので、「胃の六つ灸」を気持ちいい程度の強さで10秒ほど誰かに押してもらうか、ゴルフボールなどを床に置き、その上にあおむけになって、自分の体重を利用して圧迫してみましょう。「中脘(ちゅうかん)」と「胃の六つ灸」は肌着の上から使い捨てカイロなどで温めるのも効果的です。
鍼灸ひとくちメモ
鍼灸の施術前後の注意点は?
鍼灸の施術を受ける前は特に注意点はありませんが、飲酒は避けてください。鍼灸の効果を最大限にするためには、施術後は基本的に安静にし、施術当日は飲酒や運動を避け、ぬるめの湯でサッと入浴し、しっかりと睡眠をとりましょう。ぐっすりと眠った翌朝には体が軽く感じることと思います。他にも気になることがあれば、鍼灸師に相談し、その指示に従ってください。
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取材/堀基子(ライター)
『週刊ほ〜むぷらざ』鈴木先生が解説!なるほど鍼灸⑥
第1938号 2024年9月26日掲載