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2023年8月31日更新

有限会社 育陶園 代表の高江洲若菜さん|残したい壺屋の景色[彩職賢美]

私の原点は、生まれ育った壺屋です。古い建物が取り壊され、木々が伐採されて新しい建物が建つのは仕方のないことですが、景色が変わり、寂しさを感じます。焼き物作りを中心とした私たちの事業を通して、この景色を残す方法をこれからも探し続けます。


撮影/比嘉秀明


経営基盤整え伝統工芸に新風

有限会社 育陶園 代表
高江洲若菜さん



古い建物も積極的に活用
コロナ禍に釉薬の研究も


焼き物の産地として歴史がある那覇市壺屋。時代と共に変わりゆく街の景色を残そうと奮闘する高江洲若菜さん(41)は「ここは私の原点。子どもたちにも同じ景色を見せたい」とその理由を説明する。

300年続く壺屋焼窯元の代表に就いて3年目。日々の業務は、焼き物を販売する店舗の売り上げ管理や販売戦略の計画、従業員の労務管理、SNS発信と、多岐にわたる。モダンなデザインの焼き物ブランドの開発や、店舗に飲食スペースを設けるなど、新たな目線を加えてこの数年で事業は拡大。「事業を大きくしたいわけではなく、『この景色を残すために、私たちはどんなことができるか』を考えるうちに自然と事業の幅が広がった。焼き物作りを中心とした事業を通して景色を残し、新たな景色を作れることがありがたい」

やちむん通りから1本中に入った小道は緑のツタが絡む古い石垣が多く、ゆったりとした時間が流れる。「この雰囲気が魅力。私にとってはパワーをもらえる場所」と紹介。古い瓦屋根の民家を指し、「戦前からあるそうです。すごいですよね」。表情からは壺屋への愛着が見て取れる。

今年オープンした新店舗は、国内外から選んだ「上質で長持ちする」民具や雑貨のセレクトショップにカフェを併設した。取り壊し予定だった築50年以上のコンクリートの建物を改装して活用。「県内各地で古い建物が取り壊され、木々が伐採されてコインパーキングやアパートが建つことは仕方ないことかもしれない。だけど、寂しい。失った景色は戻らない」と感じているからこその決断だった。

窯元の長女として生まれ、家業に携わり10年で売り上げを2倍にしたが順風満帆だったわけではない。「斬新な発想を生かした独自の焼き物作りができる」と一目置く窯元7代目の弟とは、経営方針の違いで激しくぶつかった過去がある。「何日も話し合い、互いのやりたいことに向き合った。すると、私が本当にやりたいのは経営だと改めて気づいた。弟は得意な焼き物作りに集中してもらい、役割分担ができた」。今では互いに理解し合う、頼もしい存在だ。
 

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ここ数年は以前にも増して経営に力を入れた。「経営基盤が整わないと、職人の雇用が守れない。伝統工芸の継承も難しくなる」と重要性を説く。「手仕事は生産性が悪く、どう利益を確保し、職人や販売スタッフに還元するかが難しい」と吐露するが、その課題もデザイナーや税理士、コンサルティングなど外部の力を借りながら克服しつつある。

「育陶園を知ってもらう重要なツール」と位置づけるSNSの発信にも余念がない。「私たちが伝えたいことと、お客さまがイメージするものを限りなく近づけたいんです」

コロナ禍は、売り上げが厳しく、当初は「耐えるしかない」と思っていたが「普段できないことをやろう」と発想を転換。「原価計算を徹底し、SNSを駆使して通販の強化などに取り組みました。結果を細かく分析して改善を繰り返すうちに利益を確保しやすくなった」という。また、焼き物に色を付ける釉薬の研究も実施。これまで目分量で受け継がれていた材料の割合を分析してデータを蓄積。より安定した色の商品を提供できるようになった。

父から代表を継いだとき第一子は1歳。それでも迷わなかった。「仕事が好き。下の子を産んだ日も店舗の売り上げをスマホで確認していました。便利な時代です」とあっさり話す姿から感じるのは日々の充実感。

経営者として、生まれ育った地域を愛する一人として、これからも沖縄の景色の残し方を探し続ける。



 働きやすい環境作りも 

「私個人の力は限られています。従業員のみんながいるから、新しい事業もできる。家族だと思っています」と話す高江洲さん。

子育てなど従業員個々の事情を考慮して勤務時間を調整するなど、「従業員みんなが幸せでいてほしいから、働きやすい環境を整えたい」と奮闘する。

職人として焼き物を制作した経験もあるが「同時期に入社した、今の工房長のほうがすごく成長していったんですよ」と笑う。工房長の砂川良美さん=写真中央=や総務部長の小禄千尋さん=写真右=は会社が大変な時期を共に乗り越えた戦友のような存在だ。



 子どもと遊ぶときは全力 

2人の息子がおり、休日は家族と海やキャンプに出かけることが楽しみ=写真。「仕事のことを考え過ぎて、母としてこれでいいのか」と葛藤することもあるが、「子どもと遊ぶときは仕事のことを気にせずに全力で遊ぶ!」と割り切っている。

夫も家業に携わり、子育てにも協力的。「夫や母など、家族にもたくさん支えてもらえるから仕事ができます」と感謝の思いを口にする。



 使い心地を日々の食卓で 

「もし壺屋焼が西洋の文化の影響を受けていたら」という妄想の世界をコンセプトにしたものなど、同社には五つのブランドがあり、器や皿などのデザインはそれぞれ違う。「実際に使ってみないと分からないことがある」と、日々の食卓には自社の商品に盛り付けた料理を並べる=写真。

接客を行う際には、使い心地など自身が感じたことを来店者に紹介。また、飲食スペースを併設する店舗では、実際に商品の使い心地を試してもらえるよう、同社の器や皿を使って食事を提供している。「手作りの焼き物は、小さなゆがみや色むらがあり、一つ一つ違う。その点も含めて、めでてもらえたらうれしい」と話す。

■有限会社 育陶園 電話098(866)1635




プロフィル/たかえす・わかな
1982年那覇市壺屋出身。沖縄女子短期大学卒業後、2003年に家業である育陶園(06年に法人化)に入社。社内の生産販売の仕組み作りに注力し、入社から10年で売り上げを2倍に伸ばした。18年に同社の取締役に就任。20年、父から代表を引き継ぎ代表取締役に就任。4歳と2歳の2児の母。


 


今までの彩職賢美 一覧


文・比嘉知可乃
『週刊ほ〜むぷらざ』彩職賢美<1427>
第1862号 2023年8月31日掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
比嘉知可乃

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新人プランナー(企画・編集)
1990年生まれ、うるま市出身。365日ダイエット中。
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